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ブルックリンのガイドブックの著者、安部かすみが、本で書ききれなかったことやまだまだあるお気に入りスポットを紹介します。「大切な友人に紹介するとしたら?」という目線で選んだとっておき。今週は番外編として、アーティストの中山誠弥さんを紹介します。
「ブルックリンブルワリー」壁画作家
本コラム、50回目を迎えました。これを記念し、ブルックリンにゆかりのある話題の人物を紹介します。
生徒に誇れる生き方を
中山誠弥さんは大人気のブルワリー「Brooklyn Brewery」の壁画を描いた、ブルックリン在住の画家です。先日同店で飲んでいた時、日本のエッセンスが散りばめられ、かつ自由や愛、温かみを感じるすてきな作品が描かれていることに気付きました。作品は12月11日から公開されています。「ここのビールが好きでよく飲みに来るので光栄です」。
もとは地元大阪の芸大を卒業し、中学の美術教師でした。
「画家は憧れだったけど、日本では『落ち着けよ』といわれる、現実味のない職種として捉えられます。ある日、教師仲間の1人がニューヨーク留学することに。当時チェルシーがどこかも知らなかった自分に、『この街にはビジネスとしてのアートの市場がある』と教えてくれました」
担任として卒業生を送り出した後、「生徒に誇れるような生き方をしたい」と、移住の一大決心をして、8年前に来米しました。
日本橋の新旗艦店も
これまでは岩絵具などを使い、現代版の日本画を描いてきました。しかしマスキングテープをカッターでカットし、白線を残す作風に変えたところ、同ブルワリーの目に留まるなど、新たな風向きに。ブルワリーの作品は「差別のない世界、環境問題に取り組みたい先方と、自分のフィロソフィーを共有したものです」。
スタジオにも最新作がいくつか。「普段、何気に見ているものでも、意外ときちんと向き合っていないと考え直した。丁寧に生きることが今の自分のアートの原点です」。例えばスマイリーフェイスのプラスチック袋の絵は「環境に悪いのに、何で笑顔でのんきに『Have a nice day』か? と思ったのが創作の発端」。世の中に存在する滑稽なコントラディクション(矛盾)が題材のようです。
東京・日本橋に2月1日、同ブルワリーの国外初の旗艦店「B」がオープンし、そこでも絵を描くそうです。どんな作品がお目見えするのか楽しみです。
All Photos © Kasumi Abe