今年9月にアラ&
2019年は大活躍
今後の飛躍のカギは?
いよいよ年の瀬となりました。2019年は、日本ではラグビーW杯が大成功のうちに幕を閉じ、来年はいよいよ東京五輪です。
今年の振り返りですが、個人的に「女子プロサッカー」に興味を持っているので、今回はそれに関して触れたいと思います。
世界を代表するエース
今年の女子サッカーといえば、FIFA女子W杯フランス大会でした。メーガン・ラピノー選手がエースとしてアメリカチームをけん引し、優勝した様子は記憶に新しいことでしょう。ピッチ上での活躍と同時に、同性愛者であることや強烈なキャラも相まって、主役の座を独り占め。今年のさまざまな賞を総なめしました。「FIFA女子年間最優秀選手賞」を始め、スポーツ雑誌の権威、スポーツイラストレイテッド誌の「スポーツパーソン・オブ・ザイヤー」にも選出され、カバーを飾るなど、存在感は抜群です。
一方、長年話題に上るのが、「アメリカの女子サッカーは世界ナンバーワンにもかかわらず、なぜプロリーグは中々盛り上がらないのだろうか?」ということ。これはサッカーに限らず、プロの女子バッケットボール(WNBA)でも同様です。「男子と比較するとプレーが面白くない」など、さまざまな説が飛び交いますが、どれも今ひとつ説得力に欠けるものです。
ポイントは経営にあった
アメリカの現在のプロ女子サッカーリーグは、ナショナルウィメンズサッカーリーグ(NWSL)が存在し、7シーズン目を迎えています。平均観客動員数も7000人前後と、今まで存在した女子プロサッカーリーグの中では最も成功しているといわれています。
そんなNWSLの人気上昇を阻む障壁は、NWSLがアメリカサッカー協会、カナダサッカー協会、そして投資家グループで経営されている点。そしてアメリカサッカー協会がアメリカ代表選手たちの給与を支払っているという点です。
アメリカサッカー協会は自分たちが給料を代表選手に支払っているので、代表戦を優先します。となるとレギュラーシーズンのリーグ戦でも、代表試合がある度にスター選手が不在となる。ファンがガッカリしたり、メンバー編成が不安定になるという弊害があるのです。
しかし2020年からは、アメリカサッカー協会とカナダサッカー協会の関与が今までより低くなることが発表されました。代わりに、NWSLの投資家たちによる、NWSLのための経営に移行することが決まり、色々な面での躍進が期待されています。
MLSとの最大の違い
現在のNWSLの状況は、メジャーリーグサッカー(MLS)の創世記に酷似しているのです。周囲の反応は冷たく、潰れそうな不安定な経営で観客動員数も思ったほど伸びない。
しかし、1996年から投資家たちの中長期的な経営戦略にのっとり、効果的にビジネスに投資をしてきたことで、MLSは今や、クラブ資産価値が最高で500億円にまで上昇しました(96年当時は5億円)。
MLSと決定的に異なり、NWSLにあるアドバンテージは、国産のスター選手がすでに存在、かつ世界チャンピオンであり、国内の女性の社会進出の機運も非常に強いという追い風です。
その上、今のアメリカは未曾有(みぞう)のサッカービジネスのバブルともいえる、急上昇期。NWSLは2020年注目されるプロサッカーリーグになるのではないかといわれています。個人的に20年は、これに注目して見ていきたいと考えています。
19年も本コラムにお付き合いいただき、深く感謝申し上げます。また来年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
<今週の用語解説>
NWSL
正式名称は「National Women’s Soccer League」。2013年に8チームで開幕した。現在の所属チームはラピノー選手が所属するレインFC(ワシントン州)の他、シカゴ・レッドスターズ、ポーランド・ソーンズFC、スカイブルーFC(ニュージャージー州)、ワシントン・スピリッツ、ヒューストン・ダッシュ、オーランド・プライド、ノースカロライナ・カーレッジ、ユタ・ロイヤルズFCの9チーム。
今年は4〜10月に掛けてリーグ戦を行い、ノースカロライナ・カーレッジが優勝した。
中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。
08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。
09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。
ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。
リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。