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ミッドタウンのビルの広い地下空間に、すし処「皐(さつき)」、居酒屋とコース料理「鈴木」、バー&ラウンジ「Three Pillars」の3店舗が集結している。2017年春に一斉オープンし、まとまりある一つの空間としてユニークな経営スタイルを展開するのは、「Suzuki Hospitality Group」社長の鈴木雄太さんだ。
ニューヨーク生まれのニューヨーク育ち。「20代はずっと大学に通いながら、父の店で皿洗いやウエーターのアルバイトをしていました」と話す。
父とは、かの「すし膳」(1984年開店、2016年閉店)のオーナーシェフだった鈴木俊雄さん。雄太さんは、子供の頃は「飲食業は嫌だ」と思っていた。週6日、早朝に出勤し夜遅く帰宅する父を見て育ったからだが、図らずも父の職場で働くことになり、子供の頃は知らなかった「働く父の姿」も見た。午前中は店で仕事、昼間は大学、夕方から夜までまた店で仕事という、父と同じような激務をこなす自分がいた。
大学の専攻は経営学。インベストメントバンカーになった友人のリッチなライフスタイルを見て、「自分も」と思ったからだが、その過程で、経営が苦しくなっていた父の店を立て直したことがあった。「あれが人生のターニングポイントでした」。2016年に「すし膳」を閉店するころには、副社長として父の右腕となっていた。
現在「皐」では、父・俊雄さんが自由にすしを握り、それを食べたいお客さんがやって来る。「銀座のすし屋」をイメージした内装は、上品でぜいたくな空間。
70代でまだまだ元気な父だが、雄太さんはどこまでも思いやる。カウンターのみの8席とし、予約制・ディナーのおまかせのみとしたのも、「父が納得する極上のネタを使い、自分のペースで握れるように」。「皐」は2018年以来連続で、ミシュランの星を獲得している。
居酒屋とコースメニューの「鈴木」は、プレシアターからコースメニュー、単品も受け付けるマルチコンセプトのダイニング空間。そしてバー&ラウンジ「Three Pillars」は、こぢんまりと落ち着いたシガーバー風。同じ場所で3店舗を展開しているのは、将来を見据えてのこと。「今後それぞれを、別々にブランチアウトさせる可能性を考慮しました」。
憧れのインベストメントバンカーには結局ならなかったが、「父と二人三脚で店を切り盛りするのは楽しい」。そして今ニューヨークは、雄太さんのような二代目が活躍する時代で、互いに交流し、支え合っているという。
「この二代目ネットワークがなければ、この店は開けなかった。彼らのアドバイスや、サポートあっての今なんです」
鈴木雄太(すずき・ゆうた)
■1980年ニューヨーク生まれ。
ニューヨーク市立大学バルーク校を経営学専攻で卒業。
父の店「すし膳」では在学時からの勤務を経て、副社長に就任。
2016年「すし膳」閉店。
17年から現在の3店舗を開店、社長を務める。
satsuki.nyc/suzukinyc.com
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