共感マーケティング

第230回 シンプルに考える

〝共感〟をキーワードに独自のマーケティング理論を展開するブランディングコンサルタント・阪本啓一の「マーケティング力アップ講座」。



現在、日本では消費税増税に伴い、社会がざわついています。

今朝も、カフェで「食べきれなかったから家族に持ち帰りたい」というお客さんに、「還元がどうの、税率がどうの」で、お店のスタッフがお断りしていました。お店の責任でもないし、得になることでもないのに、レジの手を止め、お客さんにも誰にとってもプラスにならないことに時間を費やしていて、気の毒でした。

本末転倒

これまでもよく耳にしていて、さらに大きな音量となってきたのが「クーポン」「ポイント還元」という言葉。みんな競って取り入れようとしています。

今朝来たメールもこんな文面です。

「***なら、本日中にエントリー&お買い物で、『PayPayボーナスライト』が4%戻ってくる!」

しかし、ちょっと待った。私はクーポンもポイント還元も反対です。

〈理由1〉 一度始めたらやめられない

〈理由2〉 クーポンも、ポイント還元も、実質的には店側の借金。つまり利益の先食い

〈理由3〉 みんながやっているので、「うちの店に来てくれる」動機にはならない

〈理由4〉 本業に全く関係ない

うどん屋さんで、「食後のコーヒーはサービス」というのも同じです。本業と関係ない。お客さんはうどんを食べに来るわけで、コーヒーなら他においしいお店がいっぱいある。

しかもそのお店のコーヒーはマシンが作るのであり、「うどんとコーヒー」の間に独自のストーリーがあるわけではないのです。後でカップを洗わなければならないし、マシンも定期メンテナンスやら何やらで、人手が取られます。ただでさえ人材確保が難しいこのご時世、「あのうどん屋さん、食後にコーヒー飲めるらしいよ」という来店動機で来る人は、まず、いません。

つまり、「本業の利益向上に何の役にも立っていない」のです。うどんの味を磨くことに利益を使うべきです。こういうのを本末転倒といいます。

他にも「キャッシュレス化」「キャッシュレス決済」が「時代の流れ」といわれます。私に言わせれば「だから何?」です。もちろん、お客さんの便宜を図ってキャッシュレス決済ができるようにするのは良いことです。

でも、商売の目的は「利益=現金を増やすこと」です。キャッシュレス化によって現金の重要性が失われたわけではないことは、決して忘れてはいけません。

現金が増えたのか
減ったのか

クーポンやポイント還元は店の借金です。得(う)べかりし利益を先食いしてしまう。経営者が常に目を光らせておきたいのは「現金が増えたのか、減ったのか」です。金融機関から融資、つまり借金していたら、その金額を減じた残りのキャッシュがいくらあるのか。

一般的には、月商の3倍あると安心です。「いざ」という時が来ても社員の給料や仕入れを支払えるし、3カ月あれば何か対策を打てます。大事なことは、売上ではなく利益。現金は利益の関数です。

本業を磨く。お客さんが喜ぶのは「店が存在し続けること」。だから変な気を起こして、プレゼントとかオマケとかに利益を使わず、うどんならうどんをおいしくする創意工夫に、利益やエネルギーを使いましょう。

 

今週の教訓
本業を磨きましょう

阪本啓一
ブランディングコンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。
2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。
06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役社長。
地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。
「ブランド・ジーン〜繁盛をもたらす遺伝子」(日経BP社)などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp


 

読めばわかるこの一冊

引っぱらないリーダーが強いチームをつくる
中村伸一ほか

「リーダーは、指示をしない」(本文より引用)

 

リーダーといえば、「みんなを引っ張っていかなきゃ」というイメージがあります。しかし、現在、それは有効ではないようです。

「地球探検隊」という、オリジナルの体験型旅行プロデュースを手掛ける中村伸一隊長と、元グローバルダイニング(ラ・ボエムなど)の腕利き店長で、現在はフリーのスタッフトレーナーとして活躍する三浦花子さんが、「現場で自ら触った体験」を基に、リーダーのあり方について語ってくれます。

隊長は「上」に立つのではなく、旅の参加者と同じ位置、横並びの目線で景色を見ています。三浦さんはメンバーの動きを「後ろの少し距離を置いた場所」から見守り、内面を探ろうとします。一対一の面談など、具体的に今日からすぐ取り入れられるノウハウが満載。

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