大学進学を考える 日本と米国、二つの国で学び暮らす選択
コロナ禍を経験して社会は大きく変わった。日本社会も例外ではない。未来を見据えて、グローバルな大学進学の選択肢の一つとして、米国と日本で自分たちのルーツを生かす学びについて掘り下げる。
父親は板前。若かりし頃はアメリカに行くことを夢見ていたが叶わず、その夢を託した息子を「ジョージ」と名付けた。
「父に『お前はアメリカに行け』と言われ続け、洗脳された部分があるかもしれないですね(笑)。子供の頃から、いつか自分もアメリカに行くんだろうな、と思っていました」と、植松錠史さんは話す。
父親が手早くつまみを作り、うまそうに酒を飲む姿を見て育ったため、食への探究心が人一倍強い子供だった。同級生が少年漫画を読んでいるのを尻目に、植松さんは料理本を読み、テレビ番組「きょうの料理」を楽しみにしていたという。
父に後押しされる形で大学留学を決めたが、調理師は狭き道だろうと思い、ユタ大学でビジネスとマーケティングを学ぶことに。父の店を手伝っていた経験が認められた植松さんは、大学在学中から特別な就業ビザを取得し、「ベニハナ」でキッチンマネジャーを担当した。
ただ、卒業後に日本に帰ることも視野に入れ、日本で就職活動もしていたそうだ。そして大手自動車企業から内定を受けた時、植松さんは悩んだ。
「両親はそこに就職してほしかったようですが、僕は、やはり飲食関係に従事したいという思いが強かった。どうせなら大学で学んだことを生かし、経営の道に進もうと思いました」
ユタよりも大きな街で働こうと、卒業後は「牛角」に入社。副店長としてニューヨーク支店の立ち上げに携わった。そして10年後、「つるとんたん」のニューヨークデビューを任されることに。
「すでに『牛角』を成功させた実績があるので、この挑戦を『お前はスタートからフェラーリに乗っている状態だ』と、人から言われたことがあります。でも、やっぱり運転(経営)が大変なんですよね」
「日本から来た店」という物珍しさを押し出すスタンスでは、流行の移り変わりが激しいニューヨークでは、すぐに飽きられてしまう。ダシの味わいやうどんのコシを、日本と同じクオリティーにするのは当然として、さらに地元の人々のライフスタイルに合わせた方法で提供し、地域になじませることが重要だと考えた。
ダシを味わうのも初めてな、ローカルの従業員の教育に手塩をかけ、うどんの極意を理解してもらうことから始めた。多忙なニューヨーカーが仕事帰りに立ち寄りやすいようにと、少し遅めのハッピーアワーを展開し、ドリンクもアピール。この試みが功を奏し、現在「つるとんたん」は、つまみも酒も、そしてうどんもとりそろえた「ダイニング」として、ニューヨークに根付いた。この冬には、大学の街・ボストンにも店舗をオープン予定だ。
そんな植松さんだが、オフの時間も考えるのは食のこと。最近は、インスタグラムで市内のレストランを発掘しては足を運ぶ日々を送る。料理の味だけでなく、客層やメニュー選び、サービスの質など、店のあり方を経営の観点から「かみ砕く」ことが好きだという。時には世界の可能性を求めて、一人で海外にも飛び出す。
「食べるために仕事をしているんだな、と思います」と植松さんは笑った。
植松錠史(うえまつ・じょうじ)
神奈川県出身。日本の高校を卒業後、ユタ大学で経営学を専攻。
2004年に卒業し、「牛角」ニューヨーク支店の副店長に就任。
ダイニングイノベーションに入社後、16年に「つるとんたん」ユニオンスクエア店を、17年に2店舗目をミッドタウンにオープン。
tsurutontan.com
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