Page 16 - NY Japion
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第 回 スペイン訪問(前編)しまうほど、各国の取り組 み方やインパクトに違いが ありました。共通している のは、観客が「試合」そのも のを楽しみに来場するこ と。試合そのものが観客を エンターテインするのだとに代表に招集されたダビ であり、存在意義ですが、 ド・ビジャ選手のニュース グローバルに拡張するため も、多くの人が話題にして にアメリカ流のエンターテ いました。 インメントを多分に取り組サッカー発展の道 歴史と文化がカギ 2部リーグのADアルコ んでいくことを意識してい ロコンのゼネラルマネジャ る」と、エルチェなどとは真 ーを訪れた際、「ラ・リーガ 逆のことを話してくれまし では、FCバルセロナとレ た。 アル・マドリードの巨頭が グローバルにあそこまで 存在する中で、クラブとし 拡張すると、ビジネスの側 ての存在意義やモチベーシ 面への投資も可能となり、 ョンは何なのか」と言う議 コアとなる試合を損なわ 論になりましたが、彼らは ず、その上にエンターテイ シンプルに「地域のため」 ンメントなどを加えていく 出張でスペインに2週間 ほど行ってきました。ラ・コ ルーニャに始まり、エルチ勤めているのを知り驚いた いうことです。 りと、大変有意義な時間を かつてスペインリーグ1 過ごしました。 部にいたエルチェFCは不ェ、バルセロナ、マドリード と訪れた街は四つ、その間 訪れたプロクラブ、団体は 五つに上りました。運が重なり、現在は3部に スペインの国技サッカー 所属しています。チームと スポーツ・ヒューマン・キャ 今回のスペイン滞在で、 ピタルが共同で、卒業生の 一番強く感じたことは、「サ インターンプログラムを立 ッカーがスペインの国技で ち上げているので、その視 ある」ということです。これ 察とあいさつのために赴き までも、イングランドのマ ました。アメリカで、私が研 ンチェスター、イタリアのト 究をしてきたような試合 リノ、ドイツのケルン、スペ 以外のエンターテインメン インのバルセロナなど、いろ トも含めて観客を集めよ いろな国や街に赴き、各地 う、という気持ちは希薄 でサッカーを観てきまし で、「勝たないと皆来てくれ た。同じルールでプレーす ない」というクラブ関係者 るものでありながら、それ の一言に、その方向性が集 Jリーグとスポーツ・ヒ ューマン・キャピタルの海外 事業の一環として進めてい るコラボレーション事業の ために、私が卒業したスポ ーツ法科学院、ISDEを 訪れたり、かつて勤務した FCバルセロナでは旧友と の再会を喜び、また、レア ル・マドリードMBAで招 待講師を務めた際の卒業 生が、スペイン・プロサッカ ーリーグ、ラ・リーガ本部に「ファミリーのため」と答え ものなのだなと勉強になり ていたのが印象的でした。 ました。独自の歴史と文化 MLSやJリーグ、ある いはその他のまだ新しいリ ーグやクラブでも来場者を 日本に置き換えるため 楽しませたり、居心地良く に、うまい例えが浮かばな したり、また来たいと思わ いのですが、国技という意 せる考えを大事にしつつ、 味で相撲に近いかもしれま 自分たちの歴史と文化を せん。その起源が神話の時 大事に醸成していかないと 代までさかのぼるといわ いけないのだなと再確認で れ、日本人にとっては、歴史 きました。ぞれ違う競技をしているの 約されていました。ではないかと錯覚に陥って スペインの国王杯(コパ・ があるのはもちろん、文化 欧州の歴史と文化は、欧デル・レイ)の試合の観戦に の一つと捉えられています。 州のものであり、日本やア 赴いた際、3部リーグのク 相撲のワールドカップを開 メリカには自国の歴史と文 ラブが試合をしていました 催するために、世界各国で 化があり、それを伸ばすこ が、少人数ながら熱狂的な プロ化が始まったと仮定し と、それに沿ったものにし 応援をする観客がいまし ます。日本では相撲の升席 ていくことが日本らしいサ た。彼らにとって、クラブが がなぜ売れ切れるのかを、 ッカーというものの確立に ヒーローであり、われわれ 海外の相撲リーグ関係者 つながり、同じサッカーと が普段テレビで目の当たり が、視察に来て、日本のその いうスポーツでも、スペイ にするリオネル・メッシ選 ままのやり方を真似しても ン、ドイツ、イタリアのよう 手などのスーパースター うまくいかないでしょう。 に、日本らしいものができ は、もはや神に近い存在。 相撲の歴史と文化がある あがっていくのが理想的だ 歳にしてMLSニューヨー 日本と、それがない国が同 と確認できました。 クシティFCから3年ぶり じことをしても有効でないことは明白です。あるいは、 取組ごとの間に何か余興 を、と言われると、「相撲は そういうものではない」と 言ってしまいそうです。スペ インにとっての「国技である サッカー」はまさにそうし た感覚で捉えられていると 思いました。 逆に面白いのは、今度本 拠地であるカンプノウスタ ジアムを改修するFCバル セロナ。実は来場する人の 6割が初観戦者で、ほとん どが観光客だそうです。こ のクラブの興味深い話は、 次回詳しく紹介しますが、 FCバルセロナは「サッカ ーがわれわれの歴史と伝統© Christian Bertrand / Shutterstock.comスペインにとってサッカーは国技ともいえる存在。ス ペイン独自のサッカーの歴史と伝統、文化が存在す る35中村武彦の プロスポーツから見る世界でも一歩進んだスポーツビジネスが展開さ れるアメリカ。多くのプロスポーツの本部がある ニューヨークでは日々、新たな考えやビジネスモデ ルが生まれている。最先端のプロスポーツビジネ スの現場に携わっている中村武彦が解説するコ ラム。Friday, September 8, 2017|Vol. 932|16 BUSINESS19中村武彦マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマ ネジメント修士取得、2004年、MLS国際部 入社。08年アジア市場総責任者就任、パン パシフィック選手権設立。09年FCバルセロ ナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学 院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェ ント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを 経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

