Page 14 - NY Japion
P. 14
6、7月公演)を手掛けた 演出家の西山裕之さんと スタテン島9・ 慰霊碑を デザインし、NASA(米 国航空宇宙局)主催の火星 基地設計コンテストで参 加チームが優勝した建築 家の曽野正之さんが、「空 間」をテーマに語った。 ■□■ ――「空間」という言葉から曽野  建物は目で見て手 で触れられますが、空間は 見えない部分も含まれるの で、そこも意識してデザイ ンしています。現代社会は 何でもすぐ見えて聞けてバ ーチャルで体験できます が、実は形がない方がイメ――「In the Box」では、自 分も舞台の一部になっている曽野  ある時期、火星のこ とばかり考えて暮らしてい たのですが、ある日、木が風 に揺れて子供たちが遊んで いる命あふれる情景を見た 時、「地球っていいところ だ」と感激しました。意識 が地球から離れて初めてそ の良さが分かった。舞台も そういう空間で、僕が火星 に出たのと同じような経験 を提供してくれるのだと思 います。 ――今後の空間作りは? 曽野  それが分かっちゃう とつまらない。設計で一番 面白いのは、思いもつかな かった答えが出てくる快感 です。分かりやすくて生命 力があり、見た人がエネル ギーを感じられる空間を 作っていきたいです。西山  絵画や映画と違っ て、舞台はその瞬間しかな くて、その場で、その時に、 そこにしかない空間を体験 するものです。そういう空 間を作り上げるために台 本を書いている時が一番楽 しくて自由です。魅力的な 空間を作り続けていきたい ですね。演出家・舞台映像演出スペシャリストれて違うところに」という 狙いがあるので、例えばコ ンサートの舞台を作る仕 事で映像を使うときも、平 面を映して立体に見せると いったマジックと同じ、錯 覚、心理に訴える手法をよ く使いますね。曽野  小劇場で観ている 時、舞台デザインや照明、 音響、役者さんのエネルギ ーなどでは空間が大きく感 じることもありますよね。 ――火星という特殊な空間 の家を考えた時、曽野さん はどうアプローチしたので すか?西山裕之建築家曽野正之曽野  スタテン島の慰霊碑 の形も海と空に少し広げ て、パースを無意識レベルで 操作し、マンハッタンが近く 見えるようにしています。 西山  昔から日本の演劇 のセットでも、奥行き感を 見せるために遠近法を使っ たセットを立て、目の錯覚 を利用して舞台を広く見 せたりしていました。曽野  火星ではほとんど 家の中に閉じこもることに なるので、機能より経験の 部分を重視して設計しま した。  ダンサーの折原美樹さ 描くイメージは? ん、ジャズピアニストの大 西山  空間というと個々 江千里さん出演の舞台、 の思いと役割はさまざまだージが強烈で記憶に残りま す。情報を減らして目に見 えないものを想像してもら いたい。「その見えなくても 分かるところ」が僕にとっ ては空間のイメージです。 ――同じ空間を扱うお仕事 をされているお二人でも随 分捉え方が違いますね。 曽野  空間は、建築では心 理的な要素がすごくある ものです。西山  火星ってテレビや写 真でしか見られませんが、 そこに生活する空間を作 り上げるのはすごく大変そ うですね。「In The Box」(2015 年)と「In the Box2」(今年と思いますが、僕は舞台と いう空間を使って、「現実か ら離れて違うところに連れ て行く」というイメージで 捉えています。舞台はその瞬間にそこにしかない空間 ―西山目に見えなくても想像できるのが空間 ―曽野西山  舞台でもそこは大 きいですね。舞台では目の 錯覚を利用しているものが すごく多い。「現実から離西山  あの舞台ではセット や道具で見せてしまうと余 白がなくなるので、あたか もセットがあるように皆さ んに想像してもらえるよう な演出をしました。錯覚に陥りました。曽野  まさにわれわれはモ ノではなく空間を作ってい ますね。それぞれの空間か ら違うインスピレーション や想像が発生する。そうや って作ったものからはエネ ルギーが発生し、メッセー ジが伝わります。曽野正之神戸大学、ワシントン大学建築科卒。1998年 に再来米。2003年に「The September 11 Memorial in Staten Island NY」コンテスト で選出。10年に友人とClouds AOを創立。 15年、NASAの「3D Printed Habitat Challenge」で参加チームデザインの「火星 の氷の家」が優勝。www.cloudsao.com西山裕之1995年に舞台の助手の仕事でニューヨーク に半年滞在。帰国後制作会社勤務を経て 2001年に独立。08年に株式会社ニッシー・ プラス設立。テレビ番組やコンサート、舞台な どの演出や監督として日米間で活動。11年よ り桐朋学園芸術短期大学ステージクリエイト 専攻の非常勤講師。www.nissyplus.com11Friday, July 21, 2017|Vol. 925|14 INTERVIEW気になる二人のNY対談二人だからできる話がある。 気になるあの人たちが、 一つのテーマについて対談する。テーマ空間


































































































   12   13   14   15   16