Page 16 - NY Japion
P. 16
第 回  トランプバブルル高に振れた。「トランプ氏 が大統領になったら大変な ことになる」と、開票時にド ルが売られたのとは逆の相 場が進行している。公約軟化の理由 懸念されるリスクを取らなければならない 理由は、ワシントンにもあ る。連邦議会の協力なくし ては、何の政策も成立しな い。共和党は上下院で過半 数の議席を獲得しているも のの、「反トランピスト」も 少なくはない。内輪の共和 党を味方につけなければ、 最初から「レームダック」と 言える 。トランプ氏の当選で 株式相場なぜ堅調  また、ダウ工業株 種平 均(ダウ平均)が同月 日 に初の1万9000ドル 台をつけ、続伸した。日経 平均株価も連れ高で、「ト ランプ相場」なるものが形 成されてしまった。マーケッ トの興奮は、どこから来る のか。  トランプ氏が様々な公 約について、「軟化」の姿勢 を見せていることも、マー ケットは好感している。実 は、支持者にとっては公約 破りだが、例えば最大の公 約だった「メキシコとの国 境に万里の長城のような 壁を作る」というのは、「一 部フェンス」と差し替えた。 廃止すると公約したオバマ ケア(オバマ政権の医療保 険制度)も、一部維持する としている。  最大の懸念は、彼の保護 貿易主義だ。保護貿易は、 国内の雇用創出、インフラ 整備などにつながり、国内 景気を一時的には浮揚させ るかもしれない。しかし、北 米自由貿易協定(NAFTA) を見直し、中国に %の関 税を課すといった政策は、 良好な関係を保っていた貿 易相手国との間に、深い摩 擦を生むことになる。  2016年米大統領選 は、共和党候補のドナル ド・トランプ氏が勝利し た。 年1月 日の就任式 を経て、米国は8年ぶりに 政権交代を経験し、前代未 聞のリーダーの下、前代未 聞の4年に突入する。ニコ動画のスタジオにスカ イプでレポートをしている 最中、アンカーの堀潤氏 が、こう言った。  クリントン氏の敗北を   投開票日の 月8日夜、 最初に嗅ぎ取った瞬間だ。  「津山さん、ドル円相場 が1ドル=103円から 102円に振れてます」経済政策注力への期待 ヒラリー・クリントン民主   しかし、 月 日現在、 トランプ相場が形成  トランプ氏は、大統領に 就任した初日に環太平洋 経済連携協定(TPP)か ら脱退する意向を通知す党候補の集会に出掛けた。 ドル円は111円台と、投午後9時過ぎ、日本のニコ 開票前より7円も円安ド   まず、トランプ氏が経済  クリントン氏の私用メールサーバー問題についても、大統領に就任したら、 ると表明。これは安倍首相政策を重んじるだろうと いう期待だ。同氏は、所得 格差が進み、移民に職や機 会を奪われているとフラス トレーションを抱えた中間 階級が、強力に支え、勝利 した。彼らの期待を裏切ら ないために、賃金を上げ、 た。「古きよきアメリカ」を取   一方、日本に対しても選  トランプ氏の経済政策に 対する意欲を、マーケット は評価している。しかし、リ スクを見逃してはいないか が、懸念される。り戻すことが、喫緊だ。  具体的な彼の公約は、道 路や橋、空港などのインフ ラを整えること、そして個挙前、「米軍が日本防衛の ために支出している国防費 を負担するべきだ」として人・法人に対する減税と、 規制緩和だ。いずれも、景 気の拡大を後押しする政 策だ。逆に、政府の歳出と 財政赤字は膨らむことに なるが、目先は、トランプ氏 が、支持者の期待を裏切ら ないことだろう。特別捜査官を設けて訴追 すると、テレビで中継の大 統領候補討論会で、脅迫め いた発言をしたが、「前進 したい」という理由で、訴追 しない方針を明らかにしとニューヨークで会談した わずか4日後だ。トランピ ストからは絶賛を受けてい るが、国際的なダメージは 大きい。いたが、 月 日の安倍晋三首相との電話協議では、 「日米関係を強化する」と 発言した。意味は不透明だ が、トランプ氏の外交にお ける強硬路線は、日米関係 や他国との同盟関係を危 うくする、イコール、世界の 不安定につながると懸念されていた。  トランプ氏が、現実路線オバマ大統領の過去の公約も経済と雇用だった【今週の用語解説】当選後のトランプ氏  トランプ次期大統領は、大 統領選で掲げていた数々の 公約を当選後に軟化させて いる。メキシコとの国境に壁を築くとしていたが、一部をフ ェンスにすると発言。同様に不法移民に対する方針も、 犯罪歴のある不法移民を対 象にするとし、撤廃するとして いたオバマケアも一部維持 を表明、クリントン元国務長 官のメール問題も追訴しない 考えを示している。反対に、 就任後のTPP脱退に関して はいち早く表明した。22 30Photo by Keiko Tsuyama1111 2917 2040Friday, December 2, 2016|Vol. 893|16 BUSINESS津山恵子の に刺さるニュース解説米国で起きているさまざまなニュースは、市民 の生活にも深く関わっている。ニュースの背 景や深層、そしてわれわれの生活への影響 を、気鋭のジャーナリストが解説する。ハート45津山恵子ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク 発で、米社会、経済について執筆。フェイス ブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに 単独インタビュー。近書に「教育超格差大 国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市 平和特派員。元共同通信社記者。11 10


































































































   14   15   16   17   18