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15|Vol. 893|Friday, December 2, 2016 BUSINESS阪本が選ぶ読めば分かる この一冊本当にあった!こんな会社 規則も命令も上司も責任もない! アズワンネットワーク編集部108共 感 マ ー ケ ティン グやってくれていることに感 謝しなきゃ」と、気付いたそ うです。「今日、帰宅した ら、感謝の気持ちを伝えま す」とNさんは晴れやかな 顔で言っていました。内で繰り広げる一人劇場だ から、終わりがありませ ん。そこに想像が入る。「き っとこういう気持ちで言っ たんだろう」とか「本当は、 裏にこんな意味が込めら れていたのでは」とか。しか し、それは全く根拠のない 推測です。〝共感〞をキーワードに独自のマーケティング理論を 展開するブランディングコンサルタント・阪本啓一の「マーケティング力アップ講座」。第 回 内観する習慣組織が変わる電車内のシャカシャカ常識=多数意見」が不愉快と思っただけ、肝心の自分自身の考えではないのです。あらためてシャカシャカ ると奥さんは早々に出発 った本人はとうの昔に忘れ 音に耳を澄ませてみると、 してしまいました。Nさん、 ているかも。ところがこっち 先日、地下鉄に乗っていて、隣席の男性がつけているヘッドホンからシャカシャカと音が漏れていました。 「特に目くじらを立てるほたら奥さんの出勤時間に 間に合わない。「あなた、今 日、子供お願い!」言い捨て「やめてくれよ、うるさい どの不快感は感じられな よ...」と一瞬思った。思った い。だったら、ま、いっか」。こ 後、「なぜ、不愉快な気持ち れが内観の効果です。組織 になっているのだろう」と自 の問題で大きな比重を占 分の気持ちに向き合ってみ めるのは人の問題。特に人 た。できるだけ客観的に、 間関係が多い。クライアン なぜこんな気持ちが湧いて トの参考になればと、その きたのか考えてみる。これ 日訪問したときに解説し を内観といいます。すると、 ました。一瞬「ニャロメ!」と思った そうです(笑)。「約束が違 うだろう。オレはオレでい ろいろあるんだ!」と。は引きずっている。これは言 わば自分一人で演じる一人 劇場みたいなものです。脳「車内でヘッドホン漏れはモラル違反である。だから不 感謝に気付く 愉快な気持ちになった」ということが分かりました。 受講した1人Nさんが、 しかし、そこで内観を思 い出した。「なぜ、自分は 今、こんな気持ちなんだろ う?」と。すると、「子供を 連れて行くことに胸がざわ ついているのではなく、奥さ んが当初の約束と違うこ とをした」↓「約束と違う とはいえ、彼女は毎日これ をやってくれている」↓「そ もそも約束っていうけど、 家族の約束事をタテに目 くじらを立てる自分が小 さく思える」↓「実際、今朝 一日だけだけど、子供の面 倒を見てから会社に行くの はとても大変だと思い知っ た」↓「こんな大変なことを 彼女は毎日文句も言わずつまり、漏れているシャカシ ャカ音のせいで私の気持ち が不愉快になったわけでは なく、ただ「シャカシャカ 音↓モラル違反↓不愉快 になる」という自動的な反 射に過ぎないのです。その日の朝の出来事を披露 してくれました。Nさん宅 は奥さんも仕事をしていま す。2人いる子供はNさん より先に出掛ける奥さん が出勤時に実家へ預けてい く。ところが今朝は下の子 が寝坊し、朝食を食べさせ たり身支度させたりしてい 「車内シャカシャカはモラ ル違反である」という「世間 誰かの発言や行動に対 して自分の中に湧き上がる 感情。ひょっとすると、その 感情を引き起こした当人 は全く気にしていないかも しれません。電車のシャカ シャカ男のように。また、言 内観を、取り入れてみま しょう。人は十人いたら、十 人のものの考え方がある。 意見やものの見方、考え方 が違って当たり前。違うか らだめ、ではなく、違うか ら組織として成立する。違 うことを前提に、まず、自 分を振り返る習慣を。やが て組織が静かに、大きく変 わるはずです。人を犠牲にする本末転倒な経営に嫌気が差し、人を大切にする自分たちの理想の会社を作ろう...ここまではよくある話。本当かなあ、 識革命であり、自分を振り と疑いながら読み進めば、 返る習慣の積み重ねなのだ これは本物と確信し、びっ と分かります。人を責める くりしました。それこそ、タ 前に自分を振り返る。 イトル通り、「本当にあっ こんな話も。四日市店、鈴 た! こんな会社」でした。 鹿から通う社員が疲弊して 本書で私は内観(自分の内 いました。とても売れている 面の客観的観察)の重要性 店ですが、本来の経営目的 を学びました。内観を取り とは逸れると判断して閉店 入れることで、組織が静か したそうです。なる革命を起こしたと書か れています。組織を一体化す るのは、立派な理念やビジ ョンではなく、一人一人の意「一人一人が、仕事の 出 来 、不 出 来 に 関 わ ら ず 大 切 に 尊 重 さ れ 、ど んな困難も力を合わせ て 一 緒 に 考 え 、乗 り 越 えていける。たとえそれ で会社が立ち行かなく なっても、『じゃあ、次は 何しようか?』って一緒 にまた歩んでいける、そ んな会社が作りたいと 思 っ た 。 」( 本 文 か ら 引 用)アズワンネットワーク今週の教訓なぜ気持ちがゆらぐのか阪本啓一■ブランディングコンサルタント。大阪大学 人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し 渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。 06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役社 長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営 の実現に取り組む。『ブランド・ジーン~繁盛をもたら す遺伝子(』日経BP社)などの著書・訳書、講演活動 も多数。www.kei-sakamoto.jp 電子メディア開店!www.orange-media.jp