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第 回 大統領選のゆくえ敗を決する選挙人の総数) というサイトでも、現在ク リ ン ト ン 氏 が ・1 % だ が、8月中旬は、 %もあっ た。このほか、おそらく皆さ んがよく目にする世論調 査の結果がある。これは、前 記の「勝率」ではない。ン陣営では、有権者登録や事前投票を訴えるだけでも、オバマ大統領、ミシェル大統領夫人、バイデン副大統領、ビル・クリントン元大統領、娘チェルシーが、手分けして激戦州を訪れ、 列を作っても、投票に行く拮抗続く2候補の争い トランプ勝利の可能性 「大統領選挙は、どちら が勝つのですか?」2日現在、クリントン氏が%、ドナルド・トランプ 電話で有権者から得た「オールスター戦」だ。これ だけのスターをそろえてい るのに、なぜ、支持率が拮 抗しているのか、不思議で ならない。つまり、これまで の選挙運動の常識は当ては まらない。かどうかは把握できない。 ミシェル大統領夫人が、ペ ンシルベニア州での遊説で こう言っていた。「 年にバ ラクがこの州を制したの は、1郡当たり 人、敵よ り票が上回ったお陰よ」 とよく聞かれる。つい1 カ月前まで、「ヒラリー・ク リントン民主党候補です よ」と言っていた。今はも う、そう言う自信がない。共和党候補が %だ。 「支持率」の調査結果で、ク リントン氏が %、トラン勝率、支持率合わせ 全く互角の戦いプ氏が %だ(同月2日現 在、ニューヨーク・タイムズ が の調査結果の平均を まとめたもの)。その差、3 ポイントでは、誤差の範囲 内だ。 数字的な根拠を示そう。 この確率は、8月下旬、ニューヨーク・タイムズが クリントン氏が %と圧日々更新している「誰が大 倒していた。同様に、53統領になるのか」という勝 8(ファイブ・サーティエイ 勝率、支持率を合わせ見 オバマ大統領が、2008年、 年に勝利したのは、白人の得票で、共和党の大統領候補者に負けたものの、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系、女性、 倫問題などに目をつむっ利の確率予想がある。 月ト、538は、投票日に勝た場合、これは、全く「互角」の争いだ。「トランプ氏は、政治の経験がないし、発言にも問題があるから、そんなことあり得ない」というのは、甘すぎる。日本も含め、世界の主要新聞は、 駆使し、天候や投票所の混は、「アンチ・クリントン派」 だ。国務長官時代のメール サーバー問題、夫ビルの不月8日にトランプ氏が 雑などを理由に、投票を諦 当選した場合を考えて、彼 めるかもしれない有権者を の半生記や、今後の米政界 事前投票に動員させて、勝 の見通しなどの原稿を準 利した。 備し、彼の若い頃の写真な 年の事前投票の取材 トランプ大統領誕生の 可能性がいかに高まってい るかを理解してもらえた だろうか。どを集めている。で、バージニア州ハンプトこれまでの常識 当てはまらない 数字以外の根拠もある。 トランプ氏の選挙運動は、 ほとんど本人と、マイク・ペ ンス副大統領候補の遊説 だけだ。ところが、クリント若者という浮動票で、8割 前後の得票を達成したた めだ。激戦州における浮動 票対策も、ボランティアをて、ホワイトハウスに送り 込むのは、どうしても許せ ない、という若者などが、消 去法でトランプ氏に投票す る。これは、潜在的な民主 党支持者の2割ぐらいはい るとみられている。ンを訪れた時のことは、忘 れられない。白人の若い男 性が、折りたたみ椅子を片 手に、黒人のお年寄りを案 内していた。列にたどり着 くと、パッと折りたたみ椅 子を広げて、お年寄りを座 らせる。投票が終わるまで 付き添って、自宅まで車で 送る。そして、また次のお 年寄りと椅子を携えて、投 票所に戻ってくる。オバマ 氏を勝たせるための、人間 の「輸送」システムだった。党支持者2割がアンチ 消去法でトランプ? しかし、今回クリントン 氏は、非白人、女性の支持 率で、トランプ氏のそれを 上回るものの、オバマ氏ほ どの熱狂はない。事前投票 を表明した有権者も、オバ マ氏を下回る。また、長蛇の それほどの接戦なのだ。 さらに、見過ごせないのPhoto by Keiko Tsuyamaトランプ候補の集会に来る白人中間層の底力はあなどれない【今週の用語解説】 浮動票11104144浮動票(Floating Vote)と は、支持候補、政党を持たな い有権者、および票のこと。 アメリカでは5人に1人とされ る。候補者の主張や社会状 況などによって投票する候補 を決める(あるいは投票しな い)。候補、政党が支持基盤 を持つ州以外で、浮動票の 流れによって、当選が決まる 可能性が高い州を「Swing - State(」激戦州()揺れる州) と呼ぶ。今回激戦州とされて いるのはフロリダ、ペンシルベ ニア、オハイオ、バージニア 州。120810907723171289 6836津山恵子の に刺さるニュース解説米国で起きているさまざまなニュースは、市民 の生活にも深く関わっている。ニュースの背 景や深層、そしてわれわれの生活への影響 を、気鋭のジャーナリストが解説する。津山恵子ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク 発で、米社会、経済について執筆。フェイス ブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに 単独インタビュー。近書に「教育超格差大 国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市 平和特派員。元共同通信社記者。Friday, October 7, 2016|Vol. 885|16 BUSINESSハート