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15|Vol. 871|Friday, July 1, 2016 BUSINESS阪本が選ぶ読めば分かる この一冊幸せになる勇気 岸見一郎+古賀史健88共 感 マ ー ケ ティン グとが重要です。これが「今期 視点を多様化し、視座を高 売上目標**ドル」ではス めます。 キマが埋まりません。数字 そして主語が「わたした を追うには追うでしょう ち=わたしと会社」になっ が、数字の先にある会社の たら、上司が言わなくても 存在意義にまで思いは至 経費を気にするようにな らないでしょう。仕事の内 るし、メールや電話の言葉 容によりますが、とはいえ、 使いに神経を行きわたら 社員一人でこの心的スキマ せるようになります。 を埋めるのは困難です。 さらに、「わたしたち=〝共感〞をキーワードに独自のマーケティング理論を 展開するブランディングコンサルタント・阪本啓一の「マーケティング力アップ講座」。第 回 存在意義「ビジネスとは、お金儲け のためのものである」とい う定義は、間違ってはいま せんが、十分ではありませ ん。いえ、むしろ幼い未成熟 な定義です。しかし、書店の ビジネス書コーナーに行く と、「稼ぐ」「バカ売れ」「儲 かる」など威勢のいい言葉 が目につきますし、売れて います。これは経済や経営 の世界がまだ未成熟な証 拠だと思います。があると分かります。 そして、結局人類は50 00年の間、お金について 同じことを繰り返してき たに過ぎないとも言えま す。そろそろ経済や経営を バージョンアップする時期 にきていると思います。旧 来のビジネス1・0を進化 させ、ビジネス2・0にする ためにはどうすればいいのありません。 そうではなく、「社会に このため、月に一回は「う わたしと会社とお客さん」 ちの会社は社会に役立って というように、お客さんに いるのか?」「役立っている まで主語が広がると理想で としたらなぜか・どんなと す。つまり、お客さんの喜び ころか」「働く幸せとは何 が自分と会社の喜びにな か」といった抽象的なテー る。こうなったとき初めて、 マを社員みんなで議論する 会社の掲げる存在意義に 時間を用意しましょう。日 命がふきこまれるのです。 頃は具体的な業務連絡の ビジネスを、進化させま みですが、抽象的な議論こ しょう。 そが、社員の視野を広げ、でしょう。 それは、事業目的の再定存在するいかなる課題を 引き受けるのか」「お客さ んにどんな喜びを与えるの か」が重要なのです。経営理 念、志、ビジョン、ブランド 提供価値、何と呼んでもい いのですが、ここでは簡単 に存在意義としましょう。 これは社員教育にも影響 します。 新入社員は、「自分」と 「会社」の間に心的距離が 界の歴史」(大村大二郎著、 ょう。ビジネス2・0では、 あります。わたしの利害と KADОKAWA)という 「社会のお役立ち」を事業 会社の利害は一致していま 面白い本があって、著者は の目的とします。もちろん、 せん。わたしはわたし、会 「お金の流れでわかる世義から始めるのが適切でし元国税調査官。人類500 たやすいことではありませ 0年の歴史を「お金」で切 ん。だからこそ、その重責を るとどうなるかという企画 引き受ける覚悟と継続す です。 る志が求められます。社は会社です。彼女の主語 は「わたし」という一人称単 数。これが「わたしたち= わたしと会社」と複数にな ると次のステップに上がれ ます。そのためには、「わた しの仕事が社会やお客さ んのこれこれに役立ってい る」という、彼女の現場での 仕事と会社の存在意義と の間にスキマがなくなるこ 本書を読むと、ローマ帝 「今期の売上目標は** 国滅亡は脱税が原因だっ ドル、利益目標は**ド た、無敵のナポレオンは金 ル」と、経営目標といえば 融戦争で敗れた、世界経済 お金の数字しか社員に伝 の勢力図を変えた第一次世 えない社長は、目標設定が 界大戦...など、歴史上の出 間違っています。売上や利 来事の背景には必ずお金 益は結果であり、目標では 100万部のベストセラ ど、アドラーの個人心理学 ー「嫌われる勇気」続編です について存分に学べます。中 が、前著を読んでいなくて でも「人生の主語を切り換 も十分理解できます。わた える」部分で、組織論の重要 しは、本書のほうがより実 なヒントをもらいました。ア 践的で、かつ、疑問にしっか ドラーはビジネスにも適用 り答えてくれる内容だと思 できる、柔軟な思想だと思 います。 います。 アドラー心理学はなるほ そして、読むだけではな どと思うものの、実は深い く、実践するためのとても ところまで理解するのは困 良い指南書です。特に「愛と 難です。本書は「課題の分 は、ふたりで成し遂げる課 離」「尊敬」「交友」「共同体 題である」の項、なるほどー 感覚「」信用と信頼「」愛」な と膝を打ちました。世界はシンプルであり、 人生もまた同じである。 しかし、シンプルであり 続 けることは 困 難 で あ り、そこでは日々が試練 となる。(本文より引用)ダイヤモンド社今週の教訓重責を引き受ける 覚悟が必要です阪本啓一■ブランディングコンサルタント。大阪大学 人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し 渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。 06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役社 長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営 の実現に取り組む。『ブランド・ジーン~繁盛をもたら す遺伝子(』日経BP社)などの著書・訳書、講演活動 も多数。www.kei-sakamoto.jp 電子メディア開店!www.orange-media.jp

