Page 16 - NY Japion
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ニューヨークの地下鉄の中では、新聞や本などを読んでいる人がいまだに多い【今週の用語解説】バズフィード(BuzzFeed) 2006年にニューヨークで設立された、 バイラルメディア(フェイスブックやツイッターなどのSNSの情報拡散力を利 用して、インパクトや話題性のある動 画や画像を中心とした記事に、短期 間で爆発的なトラフィックを集めること を目的としたブログメディア)。創設者 のジョナ・ペレッティ氏は、ハフィントン・ ポストの共同創業者の1人としても知 られている。アメリカでの閲覧者数は 約8500万人とされる。昨年10月にフ ランス、スペイン、ブラジル(ポルトガル 語)の各国版を公開し、日本版サイトは 日本法人が開設準備を進めている。 昨年12月16日、創刊編集長に元朝 日新聞記者の古田大輔氏が就任した ことが発表された。241018津山恵子の に刺さるニュース解説米国で起きているさまざまなニュースは、市民 の生活にも深く関わっている。ニュースの背 景や深層、そしてわれわれの生活への影響 を、気鋭のジャーナリストが解説する。津山恵子ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク 発で、米社会、経済について執筆。フェイス ブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに 単独インタビュー。著書に「モバイルシフト」(アスキーメディアワークス)など。2014年よ り長崎市平和特派員。元共同通信社記者。Friday, January 8, 2016|Vol. 846|16 BUSINESSハート第 回 新聞、テレビは生き残る?子新聞(デジタル版)の購 読者も、100万人を突破 し、紙の発行部数に迫る勢 いだ。て、地下鉄で乗り過ごすこ とさえある。を増やし続け(オタク系、 LGBT、動物...)、1日に 出す記事の本数も増え続 けている。しかし、アクセス を追い求めるだけでは、限 界があるだろう。あくまで も「没入度」が重要だとい える。ネットでは得られない 旧メディアの魅力は?消費者をつかむには 「没入度」がキーワードオバマ大統領も 休暇には読書ざんまい 朝起きて、戸口に新聞を 取りに行かなくなった。テ レビもめったにつけず、ネッ トフリックスやユーチュー ブを見ている。新聞やテレ ビの若者離れが激しく、旧 メディアはいずれ消えてゆ くのではという懸念が、こ の 年ほどメディア業界で 渦巻いている。しかし、普通 の人々はあまり同様の懸 念を持っていない。乗ると、いまだに新聞や分 厚い本を開いている老若男 女を見る。電子ブックで本 を読んでいる人もいる。東 京の地下鉄や電車内は、新 聞や本、いやマンガ週刊誌 すら見ている人がいないの に比べると、ニューヨークは 読書人口が多い。ハフィントン・ポストやバズ メディアとデジタルメディ フィードといったオンライ アの間にこうした違いがあ ンオンリーのメディアでは、 ることを、無意識にだがよ マーケティングのキーワー く理解している。だから、バ ドにもなっている。没入度 ズフィードは刹那的に使 が高ければ、たくさんの読 い、地下鉄の中あるいは休 者が来て、滞在時間も長 暇中は、本や新聞、雑誌に く、オンライン広告の単価 集中する。没入すること ニューヨークの地下鉄に ニューヨーク・タイムズによると、本屋での本の売れ行きが増えているそうだ。 ビよりも優先するというこ アは、いまだに読者がどの オバマ大統領は、夏休み ニューヨーク・タイムズの電 とは、まだ起きていない。 程度の没入度を得ているの に読む本のリストを発表すまだネットを上回る 書籍やテレビの人気 没入度のことを英語では「Immersion」という。実は、 案外、普通の人々は、旧 また、一人当たりの1日平均で、テレビを見ている時間は、ネットを使っている時間よりもまだ上回っている。何よりも、オバマ大統領の記者会見はテレビで中継されている。彼がいかにインターネットをうまく使いこなす大統領であっても、 も上がるからだ。しかしオ で、体系だった「知」を手に ソーシャルメディアをテレ ンラインオンリーのメディ することができる。 アイフォーンが発売され か、把握しかねている。 る。昨年は6冊でペースは て8年がたち、アイパット 確かに、オンラインオン 2日に1冊。オバマ氏のリ は5年たった。人々が 時 リーのメディアというのは、 ベラルな政策に批判的な間、無尽蔵の情報源につな 刹那的な消費が主流だ。よ がる端末を手にして、それ り面白おかしいネタを求 に慣れた結果、わずかなが める読者をツイッターなど ら、変化が起き始めている。 で引き込むが、読者は一本 つまり、旧メディアの見直し 読み終わると、再度ツイッ だ。 ターに戻り、他の媒体や、他著者の本も含まれていた。 首脳自らの読書リストに 触発され、休暇の読書をま ねする国民も間違いなくい るはずだ。 例えば、筆者は朝起きる と約2時間、ニューヨーク・ タイムズ、ワシントン・ポス ト、英紙ザ・ガーディアンを アイパッドで読む。外出時 は、本を抱えて歩き、暇が あるとページをめくる。そ こで気が付くのは、新聞(こ の場合デジタル版)や本と いうのは、没入度が高いと いうことだ。集中して読めの人のビデオやツイートを見たりしてしまう。 つまり、デジタルメディア に対しては、読者のロイヤ リティーが、新聞や本に比 べて極めて低いことが分か ってきた。例えばバズフィー ドだからという理由で、し ばらくいろんな記事やビデ オを見よう、という人が少 ない。このため、アクセスを 増やすために、ありとあら ゆるソーシャルメディアを 使い、ニュースのカテゴリー

