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03|Vol. 947|Friday, December 22, 2017 COVER STORY桑間雄一郎先生Yuichiro Kuwama, MD 東京海上記念診療所院長。内科 専門医師。マウントサイナイ医科 大学内科准教授。著書に「極論で 語る総合診療(」丸善出版)他。 東京海上記念診療所Mount Sinai Beth Israel Japan- ese Medical Practice• 55 E. 34th St., 2nd Fl.TEL: 212-889-2119•141 S. Central Ave., #102, Harts- dale, NY 10530TEL: 914-997-1200  胃の基本的な働きは、1 食後何時間か食べ物を貯 めておき、2その間分泌さ れる胃液と、食べ物をよく 混ぜ、3胃液に含まれる消 化酵素で化学的にも食べ 物を細かく分解すること。必要があるので、袋の形を しているわけです。出口が 小さいのも、細かくした食 べ物を小腸に少しずつ送る ためです」翌朝胃が張ったように感じ る痛み。これは、体でいうな らストレッチ後の筋肉痛 だ。吐き気や食欲不振、も たれ感はそうした状態の 副産物と言っていい。  忘年会・新年会の定番メ ニューともいえるアルコー ル飲料と揚げ物は、胃の不 調をきたす定番レシピでも ある。そのメカニズムは単 純ではないが、油が十二指 腸を刺激して、そこから分 泌される成分が胃の働き を鈍らせるという説がある そうだ。ステムを持っています。とこ ろが、血液が十分に行き渡 らないと胃が栄養不足と なり、その自衛機能が落ち て、自爆状態になってしま うのです」。そうすると、胃 と腸のさまざまな不調につ ながる。  たんぱく質、糖分、脂肪など、それぞれを分解する   「体内にある胃は目に見 ためのさまざまな消化酵 えませんが、皮膚や筋肉の 素が、唾液、胃液、すい液、 痛みと比較すると、胃痛の 腸液に含まれる。 メカニズムが見えてきま  痛みの原因、感度には個 人差がある。何をどれだけ 食べたらどんなタイプの胃 痛になる、という方程式は ない。医学が進んだとはい え、胃痛には分かっていな い部分が多いという。  もちろん酒と油はすい 臓を酷使する最悪のコンビ でもあり、恐ろしい急性す い炎の原因にもなる。  胃酸の中でも生き延び るのがピロリ菌だ。ピロリ 菌があると将来胃がんに なる確率が6倍になるとい う研究結果もある。いつも 胃の調子が悪い、胃が痛い ような人は、一度検査をし てピロリ菌退治をしておく とよいと桑間先生は話す。  よく胃のトラブルを起こ す胃酸も、強い酸性の胃液 成分だ。「胃酸は、食物と一 緒に体内に取り込まれた ばい菌を殺すという重要 な役割を持ちます」と桑間 雄一郎先生は言う。す」と桑間先生。  胃痛にはまず、胃酸過多  「胃痛は、腸の痛みも加 味された総合的な症状で、 複雑です。胃酸過多の人も いる一方で、検査しても異 常がないのに、胃壁の神経 過敏のため、ちょっとした ことで胃が痛くなる人もい ます」と桑間先生。  ストレスや喫煙も胃の大 敵だ。精神的なストレス や、タバコの成分は自律神 経を介して胃の働きを鈍 らせる。胃壁そのものの血 流も減少する。桑間先生に よると、「胃は食べ物を分解 しますが、胃自身まで分解 してしまわないよう防御シ  胃の形にも理由がある。   「食べ物が一気に小腸に 送られると、小腸での栄養 分の消化吸収が追いつきま せん。そのため、ある程度の 時間、胃に食べ物を貯めるなどで胃内部の粘膜がた だれ、びらん(内壁が剥が れた状態)や潰瘍(かいよ う)になったための、どちら かというとキリキリとした 痛みがある。これが皮膚で いうならすり傷状態だ。す り傷が食道に生じれば胸 焼けになる。  吐く息か便を検査する ことで簡単に探知でき、治 療も簡単だ。血液検査は不 確実という理由で、アメリ カではピロリ菌検査の主流 ではない。お話を聞いた人  もう一つは、暴飲暴食で 胃が一気に引き伸ばされ、              しょうわん     だいわん                      昔から日本にある漢方は、胃に「すっきり感」を 持たせることで、胃痛や胃もたれの症状を緩和す るものだ。対して現代の市販胃薬には、1胃酸 の中和剤(Tumsなど)と、2胃酸分泌を抑えるタ イ プ が あ る 。 2 に は H 2 ブ ロ ッ カ ー( Z a n t a c や Pepcid AC)と、PPIことプロトンポンプインヒビタ ー(Prilosecなど)がある。PPIは日本では処方薬 で、より強力。これらが登場して以来、胃潰瘍の 手術の必要性がなくなったそう。  処方箋の降圧剤や、骨粗しょう症の薬の中に は、胃をムカムカさせ、胸焼けを引き起こすものが ある。症状がひどい場合は主治医に相談しよう。   鎮 痛 剤 の「 A d v i l 」や「 A l e v e 」な ど の N S A I D(非ステロイド抗炎症剤)は、胃粘膜の保護物質 を阻害するので、必ず食べ物と一緒に服用する こと。「Tylenol」は、空腹時に服用しても、胃を傷 めることはない。                 ホリデーシーズンは、どうしても食べ過ぎ、飲み 過ぎる。元気に楽しくこの季節を乗り切るために、 胃を労わるための知識を多少なりとも頭に入れて おきたいもの。今号は、医療専門家、ヨガ/アー ユルヴェーダのインストラクターから、胃の管理・ 予防のためのアドバイスをもらった。


































































































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