Page 4 - NY Japion
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Friday, December 15, 2017|Vol. 946|04 COVER STORY店奥に進むと突然現れるボッチボール場。ルールは簡単な ので、数人で訪れて、ぜひトライしてみてほしいバー部分は、由緒正しき、名門大学の同窓会館の趣き。客 は革張りのソファーにもたれてゆっくりと時間を過ごしている32フロリダを意識した南国的な雰囲気の中、ヒップスターたち がプレーしている。フルバーも完備ダイアグラムにピタリとディスクが入る快感が尾をひく。同店 は計10本のシャフルボード「コース」を備える10Union Hall702 Union St. Brooklyn, NY 11215 www.unionhallny.comThe Royal Palms Shuffleboard Club514 Union St.Brooklyn, NY 11215 www.royalpalmsshuffle.comブルックリンで再燃! 未知のスポーツに挑戦(ともにフロリダ出身)のオ やってみて」と、促されるま 感はゴルフのパットに近い。  ブルックリンのゴワナス 地区は、ゴワナス運河沿い の旧工場地帯だが、最近と みに開発が進み、ヒップな 若者が続々移り住んでき た。今この地域で人気沸騰 中の夜遊びがシャフルボー ドだ。そもそもはクルーズ 客船の甲板で行われる体に 負担のないスポーツで、フロロイヤル・パームズ リダでは引退者コミュニテーナーコンビが3年前に、 まにコースに出る。 バーを併設した コートの   ルールはいたって単純。 シャフルボード場を旧倉庫 先端がコの字状のキューで に開設すると、たちまち人 円盤(ディスク)を押し出し が集まるようになった。 (「シュート」という)、コース  なりふり構わずの第1投 は、ビギナーズラックで見事 ダイアグラム内に収まる。 得点7。「うまいじゃない! センスいいわよ」とアシュリ ーさんの甘言。言ったそば から自分のショットは、わがおしゃれ&知的な酒場で ローマ帝国の「玉遊び」広い空間に入ると、天井は ブルックリン伝統の模様入 りティン(ブリキ)シーリン グ。壁面は本棚で埋め尽く され、赤々と燃える暖炉の 前には革張り椅子とソファ がゆったりと配置されてい る。いわくありげな長大な バーで迷わずブルックリン の地ビール「シックスポイン ト」を注文。酒もつまみも 値段は手頃だ。トークの会」みたいなハイ センスなイベントも主催し ている。どうやらコミュニテ ィーの文化会館的な存在 らしい。ただし、このユニオ ン・ホールを一躍有名にし たのは、店内中央にあるボネラルマネジャーのステフ ァニアさん。玉を転がす要 領は下手投げでボーリン グに似ているが、レーン表 面が土なのでイレギュラー が多く、思うように転がら ない。パリーノのそばでピ タリと止めるには豊かな経 験と勘が必要だ。  アイビーリーグ校など一 流大学は、マンハッタンの一 等地に同窓会館を持ってい る。たいがい格式のある建 築でライブラリーやラウン ジがあって、優雅にビリヤ ードする男たちを尻目に バーでは紳士淑女がマティ ーニを傾けている。憧れの 外国小説に出てきそうなオトナの風景だが、一流大 の卒業生でないと、この特 権は味わえない。ッチボール場だ。  ボッチボールとはイタリィーなどを中心に100 年以上も前から盛んに楽 しまれてきた。  「シャフルボードは老若 男女誰でも楽しめるからい いのよ。お客さんたちを見 て。誰一人スマホを使ってな いでしょ? それくらい夢中 になれるの」と熱く語るの はアシュリーさん。「何がそ んなに面白いの?」「百聞は前方のダイアグラム(得点盤)内(線上はアウト)に到達させて点数を競い合う、 黄色ディスクを直撃。無慈  日本人になじみが薄いの は当然としても、激しいス ポーツを好むニューヨーカ ーも長年、歯牙にもかけな かった。ところが、ジョナサ ンさんとアシュリーさん『一遊』にしかず。とにかくボーリングとカーリングを 合わせたような競技だ。1 対 1 、ま た は 2 対 2 で 対 戦。先攻が黄色、後攻が黒 のディスクを交互に4枚ず つシュートすると1フレー ムが完了。これを2回繰り 返すとラウンドとなり、さ らにラウンドを繰り返して ゲームとなる。悲にダイアグラムからはじ き出して、ゲームはふり出 しに。この瞬間、悔悟のアド レナリンが急激に分泌し、 復讐心に苛まれる。予想通 り、メンタルの乱れで第2 〜4投はことごとく外れ、 手堅く8点をゲットしたア シュリーさんにフレームを 取られる。思わず口をつい たのが「もうひと勝負!」。 ハマる理由が分かった。ユニオン・ホール  ところが、「世界一気取っ た街」と揶揄(やゆ)される ブルックリンのパークスロ ープには、そんな同窓会館 をもしのぐ知的な酒場が ある。その名はユニオン・ホ ール。倉庫のようなだだっ  地下には音楽やコメディ ーのステージもあるし、「ピ ュリツァー賞受賞者を囲むア伝統の大衆球戯。起源は ローマ帝国までさかのぼる とか。土を敷いた長いレー ンに「パリーノ」と呼ばれる 白い小さな玉を置き、それ を標的にソフトボール大の 重い玉を転がす。玉をパリ ーノに最接近させた人が 勝ち、というゲームで、通 常は屋外で楽しむ。  「やり始めると結構熱く なるわよ」とステファニア さん。「この2本のレーンは 当店の顔です。ここを会場 にするリーグ戦のシーズン が始まったところ。毎週末 に試合があって全 チーム がしのぎを削っています」。  コースは潤滑剤でツルツ ルに磨かれているのでディ スクはよく滑る。長いキュ ーを操り、ディスクを送り 出し、かつコース上にある ディスクに当てる感じはビ リヤードに似ている。力の 加減で暴走するから、慎重 に狙いを定める。ここぞの タイミングで押し込む緊張  「店を設計している時に、 この知的な空間にふさわし い遊びは何か? とみんなで 討議したのよ。ダーツやビ リヤードじゃありきたりで しょ? ならば『いっそ古代 から続く屋外ゲームをレ ーンごと入れちゃおう』と いうことでボッチボールを 始めました」と話すのはゼ  知らないところで思わぬ 「夜の球宴」が繰り広げら れていた。われこそはと思う人はいざブルックリンへ。


































































































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