Page 3 - NY Japion
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03|Vol. 866|Friday, May 27, 2016 COVER STORYNYで奮闘する ポスドクたちの世界ニューヨークには数多くの大学や研究機関が集中しており、 日本人の博士研究員(通称=ポスドク)が、新発見を夢見て日々 奮闘している。今回は若き科学者たちにインタビューし、彼らの 研究内容、当地を目指した理由、今後の目標などを聞いた。「MI‒‒‒2」で小児脳腫瘍の新治療に第一歩 スローンケタリング記念がん研究所勤務  船戸洸佑さんれしかったという。「いろい きたい」と船戸さんは話す。 ろな人に、僕の研究内容を 化合物から薬を作るのは 知ってもらえましたから」 化学者の仕事。医療研究分 と笑顔になった。同研究は、 野の役割分担を尊重し、自 ロックフェラー大学の教授 分は自分にできることをや とのコラボレーション。「こ っていきたいと語る。 の教授のおかげでうまくで  その名は「MI‒‒2」。ス ローンケタリング記念がん 研究所の研究員・船戸洸佑を探索するという船戸さ んの仕事は、まさに「ミッシ ョン・インポッシブル」だ。は、その第一歩だ。  (こうすけ)さん( )が2 013年に発見した、小児 脳腫瘍の治療に有効な化 合物の名前だ。翌年には学 術誌「サイエンス」に論文が 掲載され注目を集めた。  小児脳腫瘍といってもいろいろあり、船戸さんの研究対象は、中でも悪性度が高く、予後も悪いタイプ。これまでは、なぜそうした脳腫瘍ができるのかが分かっていなかったが、最近の研究の結果、特定の遺伝子変異が原因だと考えられるようになった。手術が難しいタイプだけに、新治療法   それだけに、「サイエン の開発は必須。「MI‒‒2」 ス」で発表できたときはう  ニューヨークに来て4年 目の 年は、船戸さんにと っての「豊年」だった。「サイ エンス」への論文掲載と前 後して、友人のクリスマス パーティーで知り合った女  「『MI‒‒2』でネット検 索すると、トム・クルーズ 主演の映画がまず出てく るんですよねえ」と冗談め かすが、小児脳腫瘍の発症 機構の解明と、新規治療法データが間違っていないか など、確かめなければなら ないことが山積でした」と 冷静な回答が返ってきた。研究をしており、その過程で博士号を取得。「アメリ カは研究も進んでいるし、  「寝ても覚めても『MI‒‒基礎研究で社会に貢献きました。環境や仲間にも 夫人に作る手料理 恵まれたと思います」と、  大発見の瞬間とはどういうものなのか?「データを解析していて、何となく見つけました。同様の発見がすでにされていないか、 の研究所で大人の脳腫瘍の感謝の気持ちも忘れない。   船戸さんが現職に就い たのは2011年、 歳の ときだ。日本では東京大学優秀な研究者も多い。一度 は日本を出て、アメリカで やってみたかった」のがここ に来た理由だ。フロリダで 開かれた学会の帰りに、ニ ューヨークに寄って面接を 受け、採用となった。2』です」と苦笑する船戸 さんだが、リフレッシュも兼 ねて、走ることと料理が趣 味。得意料理はスパゲティ ーの「カルボナーラ」で、夫 人によく「作って」と頼まれ るそう。 年には初めてニ ューヨークシティーマラソン にも出場した。  「MI‒‒2」は、研究が進めば新薬として開発され るかもしれない。しかし、  「考えるのが仕事なので、「これからも僕は基礎研究 走っているとき〝無〞になれ 者として社会に貢献してい るのがいいです」性とゴールインした。奈良県出身。父親の仕事で5歳 までロンドン、帰国後は横浜市で 育つ。東京大学理学部生物化 学科卒、同大学院修士課程を 理学系研究科生物化学専攻で 修了、同大学院で理学博士号 取得。2011年、東京大学分子 細胞生物学研究所での特別研 究員を経て、同年9月から現職。実験中の船戸さん。他にもコンピ ューターでデータを解析したり、政 府機関や各種財団への助成金 申請書を作成するなどデスクワー クも多い14271432


































































































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