第39回 スポーツコンベンション

アジアで発展途上「スポーツ法学」とは

5月にマドリードで開催された「ISDE Sports Convention」に、パネリストとして登壇してきました。

これはスポーツ法学のカンファレンスで、スポーツ界で現在法律関係の仕事に従事している、もしくはこれから従事したいと考える世界60カ国の500人あまりを対象に、スペインにあるISDEという法科学院が開催したものです。パネルは全部で10個ほどあり、私はその中で「スポーツイベントとサステイナビリティー」のパネルに登壇しました。

ISDEとは何かということをまず説明しますと、スポーツの法曹界に多くの卒業生を送り出している、マドリードとバルセロナにあるロースクールです。私自身が卒業をしたのは2014年ですが、ISDEとコロンビア大学がその直後に提携をした縁で、私も招待講師として、時折講義に出向かせてもらっています。

スポーツ界の法 欧州と米国で差

スポーツマーケティングという単語は聞いたことがあるかと思いますが、ではスポーツ法とは何か?

スポーツビジネスにはさまざまな特異性があります。スポーツマーケティングであれば、それを理解した上でのマーケティング活動となるのと同様に、スポーツ法はスポーツビジネスにおける特異性を、法的見地から取り上げる学問です。

スポーツマネジメントの修士課程でもスポーツ法は修学しましたが、アメリカの大学院であったため、アメリカの法律やスポーツにまつわる法の勉強が中心でした。例えばドラフト制度や、FA(フリーエージェント)制度、サラリーキャップ、フランチャイズ制度など、一般のビジネスでは通じないものがなぜ法的に通るのか? ということを学びました。

しかし欧州にあるISDEでは、欧州の法律や、特に同地で最も盛んなサッカービジネスに関する法律を学ぶことができました。それは例えば移籍金や、トレーニングコンペンセーションなど。そしてスポーツマネジメントの1科目ではなく、ロースクールにてきちんと法律の勉強をしておく必要性を感じたので、二つ目の大学院に就学したのでした。

スポーツビジネスという特異なジャンルを扱うには、専門的知識が欠かせない。視点を変えて「なぜ?」と考えることが重要だ

まだまだ発展途上 アジアでの可能性

このカンファレンスには、ブラジル代表ネイマール選手の代理人である弁護士の他、僕と同じパネルには、元スペインバスケットボール代表で、スペインバスケットボール協会現会長のホルヘ・ガルバホサ氏がいたり、元ブラジル代表で現在スペインのサッカークラブ、レアル・バリャドリードのオーナーを務める、ロナウド・ルイス・ナザーリオ・デ・リマ氏などが登壇するという豪華な顔ぶれで、正直気後れしました。

しかし、弊社がハワイで主催する、パシフィックリムカップに関する法的観点から注意すべき点や、イベント運営をする上でのサステナビリティーに関する話を、きちんと自分の言葉で発表できたことは素直にうれしかったです。特に欧州のカンファレンスにて、今サッカー界で新興勢力として見られている日本のJリーグや、アメリカのメジャーリーグサッカー(MLS)に関する情報はまだ少なく、その点に関する質問を多く受け取りました。なぜスポーツ法が大切か? ということも、懇親会で若い弁護士の卵から聞かれました。

これは実はあちこちで聞かれますが、スポーツマーケティングや、チケットセールス、スポンサーセールスなどにおいてもそのライツ(権利)の取り扱いや、スポーツビジネスを制定している仕組みやルールをそもそも理解していないと、その中で行われる活動は成り立たないのです。なぜこのような規則がこのリーグにはあるのだろうかなぜこの国に移籍するときはルールが変わるのだろうか? 国家法が影響しているのだろうか? などなど。

今回のカンファレンスでは、そもそも参加者の中で東洋人が自分1人で、この概念が今後数年先に日本やアジアに入っていくのだろうな、と感じることもできました。もし、スポーツビジネスにご興味のある読者がいたとしましたら、スポーツ法は着目してもよい分野ではないかなと思います。

 

 

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol.1053

焙煎したての
コーヒーが飲みたい

コーヒーは焙煎(ばいせん)してからすぐに香りや味の変化が始まってしまうので、持ち味を十分に楽しむには、焙煎したての豆からいれるコーヒーが一番。そこで、今号では店内焙煎のコーヒーを提供するカフェを紹介する。(取材・文/古村典子)

Vol.1052

今から始める
安全対策

犯罪や災害は、実際に降りかかってから行動するのでは遅い!手の届く範囲で始められる対策を、ジャピオンと一緒に講じよう。(取材・文 / 南あや・音成映舞)

 

Vol.1051

英語が得意になりたい!

「日常会話はできるし・・・」「どうせ数年後に日本に戻るし・・・」と言いながら、バイリンガルの友人がうらやましい、そこのあなた。今年こそ本腰入れて、英語力を鍛えてみない?(取材・文/南あや)

Vol.1050

ようこそ
「白鳥の湖」の世界へ

チャイコフスキー3大バレエの名作『白鳥の湖』。1月下旬から市内で順次観ることのできる三つのバレエ団による公演と、その見どころを紹介していく(取材・文=音成映舞)