<注目トピックス>日本人の安全と平等を求めて

日本人の安全と平等を求めて:
ニュージャージー州で起こった暴行事件突き飛ばされ、唾を吐かれた上に「この中国人たちに俺の弁護士費用を払わせろ!」と言われて

アジア系住民に対するヘイトクライムが依然として存在している米国。当事者である人々が実際に声を上げ、正義を求めることの重要性がますます高まっている。本記事では、裁判と言う公の場で、検察官から十分な法的サポートを受けられていない昨年ニュージャージー州で起こった暴行事件の公正な捜査と裁判を求めて立ち向かうケースを紹介。

米国社会におけるアジア系住民への差別問題の現実

 昨年325日、ニュージャージー州バーゲン郡にあるショッピングモール「ガーデン・ステート・プラザ」で、日本人でビジネスオーナーの菅原知子さんとその家族が暴行事件の被害に遭った。ヒスパニック系の男性ロペス氏が、3歳と5歳の子供を乗せてベビーカーを押している菅原さんを肘で複数回激しく突き飛ばし、さらにそれを止めに入った菅原さんの夫に対して顔に唾を吐きかけた。また、ロペス氏はその場で菅原さんの子供たちの写真を撮影し、「この写真をブラックマーケットに出してやる」と脅迫。事件を目撃した買い物客の数人がすぐに止めに入り、警察が到着し、複数の目撃者が暴行に関して菅原さん家族のために警察に証言した。この事件の発端は、ロペス氏の孫がモールに設置している高いオブジェによじ登っているのを見かけた菅原さんが子供の安全を心配し、その危険性を子供の母親に伝えたことから始まった

その母親は逆に、知子さんに対して悪態をつくなどし、その後も自分の携帯電話を見続け、子供に対し適切な対応を取ることはなかった。菅原さんが子供の安全確保のためセキュリティーに伝えると子供の母親に伝え、リポートのためその様子を撮影すると、母親は逆上し悪態をつきながら攻撃的な態度を見せたという。

母親の態度に恐怖に怯えた菅原さんは2人の子供の安全も考え、直ぐに撮影したものを削除し、セキュリティーには通報しないことを言い残し、その場から去ろうとした。しかし、その直後に現場に現れたロペス氏が、セキュリティーに通報しようとした菅原さんの行為に激怒し、菅原さんとその家族に暴行を加えたのだ。

加害者であるロペス氏はポリスレポートに記載されている暴行の事実を否定し、更には裁判の過程で「この中国人たちに俺の弁護士費用を払わせろ!」といった人種差別的な発言を放った。

公正な捜査と裁判を求めて

菅原さんは自身でも米国のロースクールを卒業し、法学修士を持つ身であり、ニュージャージー州バーゲン郡のパラマス裁判所で正義が行われると期待してた。しかし、彼女が経験したのは全く逆で、裁判所や担当検察官から不当な扱いやコメントがあり、菅原さんら被害者の証言や主張を無視。自身の権利が侵害されていると感じたそうだ。

まず第一に、暴行直後に到着した警察官は目撃者数人から暴行に関する直接的な証言を得たにもかかわらず、その場に居る加害者を逮捕しなかったということに、菅原さんは疑問を感じた。その後、菅原さんたちが被害届を提出したことで事件化したが、アジア系に対する人種差別犯罪は、多くの場合、通報すらせず、通報してもも適切な逮捕、十分な捜査や起訴が行われないということが起きていることを目の当たりにした。

菅原さんは、担当検察官から更に悪質で不当な扱いを受けていると訴えた。また、事件発生当初から被害者が受けるべき適切な法的サポートを一切受けることができなかったそうだ。検察官からの連絡や、情報提供は皆無で、事件進展状況や裁判の法的質問に関する問い合わせにも全く返答なかった。

特筆すべきは、重要な証拠となるショッピングモールのビデオ映像を1年以上経った今も確保していない事や、検察官が加害者側弁護士との知り合いであることを理由に、加害者側弁護士からの書類が長期間にわたって未到着であった問題にも適切に対応せず放置した事、菅原さんからこれらの問題を指摘した際に検察官は、裁判官のいないブレークルームで菅原さんに対して怒鳴るなどの行為が行われたという。

加えて、パラマスの裁判所では事前に認められていたはずの日本語の通訳が出席しておらず、裁判中に菅原さんが検察官に通訳を要求しても、無視された。さらに、加害者側弁護士からもニュージャージー州犯罪被害者権利法で禁じられている、被害者への威嚇及び嫌がらせと解釈されるような内容を送りつけられるなどされたそうだ。

また、被害者を加害者側弁護士の個人事務所に、検察官無しで個別に呼びよせ、「被害者の携帯電話を加害者弁護士に提出させて制限無くその携帯電話を閲覧する必要がある。要求に従わなければ事件は取り下げられる。」などという不適切な圧力をかけるものだったという。

この事について菅原さんは「検察官に相談しても無視されました。裁判官にも相談しましたが、検察官の事実に基づかない発言により十分な発言の機会も与えられませんでした。また、暴行罪の起訴当事者はニュージャージー州であることから、被害者が私的に弁護士を雇うことも出来ず不当な扱いに甘んじなければならない状況なのがとても苦しいです」と話す。

まさしくこれらの問題は、犯罪被害者に対する権利と保護を定めたニュージャージー州犯罪被害者権利法で定められている権利が侵害され、犯罪被害者に対する支援体制の不備を浮き彫りにしてる。

絶望から次世代のために今できることを

菅原さんは、身体的な被害、捜査現場での不当な取り扱い、裁判の遅れ、検察官の怠慢、加害者側弁護士からの脅迫的な要求、公の場での差別的な待遇とその解決法が無い事、そして加害者からの子供への加害予告など、様々な問題に直面し、精神的に追い詰められ、現在この暴行事件は1年以上経った今も未解決のままだ。

「これは読者の皆さんや私たちの誰にでも起こりうることであり、このような差別に対して声を上げ、断固として反対する必要があります。また、税金を納める善良な市民として、私たちは公正で正当な法的手続きを受ける権利があり、その権利が侵害されないことを訴えます。ニュージャージー州は人種差別に関しても厳しい法律を科している州の一つですが、それが鏡の中の餅のようにならないことを祈ります」と菅原さんは話す。

 

【ご意見と体験談をお寄せください】

 菅原さんが理事長を務めたマンハッタン区の日米合同教会(JAUC)では、アジア系住民への根強い差別問題にも取り組んでおり、差別体験をお持ちの方の経験談や、州のアジアンヘイト問題に関わっている方々からのご意見をお待ちしています。ニュージャージー州知事を始め、バーゲン郡のエグゼクティブオフィス、同州弁護士協会などへ改善要求書を送る予定。子や孫の世代が米国社会で真の平等を得られるよう、ご協力をお願いします。

送り先は info.japanusa@gmail.comまでご連絡ください。

【お断り】この記事はパラマスポリスデパートメントが発行したポリスリポート、及び被害者当事者のインタビューを元に執筆されたものです。他の関係者や専門家の意見や情報は反映されていない可能性がありますので、ご了承ください。

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