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意外に完治まで時間がかかる捻挫(前編)(Vol.35)
現代に生きる老若男女が健康でいるための生活のポイントを、カイロプラクターのドクターベルモンテが教えてくれる連載。
悔やんで遅い不注意捻挫 覚えておきたい応急処置
つい最近、当院の理学療法士・城戸亜幹絵さんのところに、足首の捻挫がなかなか完治しないが、どうしたらいいか、との相談が持ち込まれました。人間は歩かないわけにいかないので、足首を捻挫すると、たとえ軽症でも意外に完治まで時間がかかるものです。
この方は60代前半の女性。今年6月初め、自宅でラウンジ椅子に脚を組んで座り、膝にラップトップを置いて仕事をしていたそうです。その間、上に組んでいた右脚の膝下から足先までが痺れて、感覚が麻痺していました。この方はそれに気付かず、椅子から立ち上がりラップトップを持って1歩。変だなと思いながら2歩、3歩目くらいで痺れて感覚がなくなった右足がバランスを崩しました。足首を外側にグキっと捻り、そこに体重が乗った、その瞬間床に倒れたそうです。「しまった」と思った時はもう後の祭り。それでもラップトップだけは守ったそうで、いやはや何とも。
この方がその直後の様子を語ったところによると、「激痛と、倒れたショックでしばらく動けませんでした。15分くらい経って、やっと這って台所まで行き、冷凍庫から氷を取り出し、右足をダイニングチェアに乗せてタオルを被せ、その上から氷で冷やしました。30分くらい経って、痛みはまだありましたが、何とかびっこを引きながら歩けるようになりました。でも、しっかり腫れていました」とのことでした。
その後2、3日は患部を冷やし続け、しばらく外にも出ず、家の中で大人しくしていたら、1週間くらいで腫れと痛みが引いたとのことでした。ところが1カ月以上経った7月半ばになっても、一定方向に足首を曲げると突っ張る感覚があり、その後少しずつ良くなっているものの、10月末になってもまだ違和感が残っていると言って、亜幹絵さんに相談に来られました。
冷やすか、温めるか…
この女性、不慮のけがで気が動転していたにしては、適切な応急処置を行ったと言えるでしょう。11月1日号掲載のこのコラムで「RICE=Rest (休息)、Ice(冷却)、Compress(圧迫)、Elevate(持ち上げる)」というけがの応急処置を紹介しましたが、その頭に「Protect (保護)」が加わった「PRICE」があります。体の部位に急激な衝撃が加わって起こったけがの痛みを軽減し、腫れを最小限に抑えるための応急処置です。捻挫の場合も、まず「PRICE」を実践するといいでしょう。
亜幹絵はさん、「捻挫の場合、足首をタオルで包むなど保護してから安静にし、氷で冷やし、さらに患部をテーピングして必要以上に腫れないようにします。患部を持ち上げるのも腫れ防止です」と説明しています。その後も2、3日は氷で冷やし、痛みと腫れが引いてきたら、冷やすか、逆に温めるかはその人がどう感じるかで、ケースバイケースです。また、「ずっと安静にして動かさないでいると、周辺筋肉と関節の可動域があっという間に落ちるので、痛みがなくなったら、なるべく早く足首を動かした方が賢明です。その場合、冷やすよりも温めたほうが動かしやすくなります」とアドバイスしています。
この女性は相談に来られた時点ですでに痛みはなく、あるのは足首を伸ばした時の違和感だけだったので、放置してもそのうち違和感は消えるはずですが、理学療法によるリハビリで、関節を包む筋肉を強化するのが理想的ですし、早く完治するでしょう。
違和感については亜幹絵さん曰く、「捻挫による損傷後にできたscar tissue(傷跡組織)によって、足首をひねる時に動きが制限され、突っ張るような感覚があります。治癒の過程です」とのことです。
次回は捻挫のメカニズムや、理学療法での運動セラピーをもう少し詳しく説明します。
ジョン・J・ベルモンテ 先生
John J. Belmonte, DC
E. 53 Wellness院長。カイロプラクター(Doctor of Chiropractic)。全米カイロプラクティック協会会員、ゴルフPGAツアー・スポーツ医学チーム所属。アスリートのけがの治療、妊娠中の痛みの緩和、成長期の子供のカイロ治療も手掛ける。
E. 53 Wellness
211 E. 53rd St./TEL: 212-980-4211
e53wellnessnyc.com
今月の教訓!
「湿布薬はNSAID入りを」
捻挫などのけがでは湿布薬も有用です。処方箋湿布薬には、腫れと炎症を鎮める非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の成分が含まれており、皮膚から有効成分を浸透させることができます。最近は市販の湿布薬にもNSAIDが含まれるものがあるので、表示をよく見て買いましょう。ただ、湿布薬の主成分はメンソールで、爽快感による痛みの緩和効果はありますが、冷やす効果はありません。患部を冷やすときは氷、市販のアイスパック商品を使います。
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