心と体のメンテナンス

外反母趾の治療と予防(後編)

切らない治療で痛みを緩和
手術が必要になるケースも

Q.外反母趾(がいはんぼし)」はどのように診断しますか?

A.

前編で説明したように、外反母趾は足の親指の先が人さし指の方に大きく曲がり、親指の付け根部分の関節が外側に突き出る病気です。
大抵のケースは関節の変形によって診断がつきますが、重症度や原因を調べるため、問診に加え各種検査を行います。

問診では、発症時期、外反母趾の家族歴、痛みの場所、普段よく履く靴の種類、病歴などについて質問します。外反母趾の発症や進行は靴に大きく影響されるので、職場または日常生活でどんな靴を履いているか、立ち仕事かどうかなどは、治療法を検討する上でも大切な情報です。

次に、座ったときと立ったときの足の様子、足の親指の関節の動き、突出部の大きさと炎症の有無などを評価し、さらにレントゲン検査で患部を詳しく調べます。
何らかの病気が原因で外反母趾が起きていると考えられる場合は、血液検査や筋肉の異常を調べる検査を行うこともあります。

これらの問診と検査結果を総合的に考慮して外反母趾を診断し、治療計画を作ります。

 

外反母趾の手術後。親指付け根の突出部の骨を切り、骨を本来あるべき位置に戻してネジで固定した(写真提供: パーク先生)

 

Q. どのように治療しますか?

A.

外反母趾と診断されても、必ず手術が必要になるわけではありません。最初に「切らない治療」を試し、それでも改善しなければ手術を検討します。

まず、足に合った大きさと形の靴を履くことです。靴選びのポイントは、つま先が丸い(足先を締め付けないデザイン)、つま先・足の横幅ともにきつくない程度に余裕がある、歩行時に踵(かかと)が抜けない、土踏まず(アーチ)のサポートがある、素材が柔らかい——など。先が細い靴、ヒールが高い靴は足に負担を掛けるので、できれば避けてほしいのですが、どうしても職場やパーティー会場などで履かなければいけないときは、移動中は別の靴に履き替えるなど、できるだけ履いている時間を短くしましょう。

アーチを支える靴の中敷き(インソール)の使用が痛み緩和に有効なこともあります。種類豊富な既製品が市販されていますが、それらは一般的に強度が不十分なので、足病医の診察を受け、ある程度強度があり、自分のアーチの形に合った中敷きをオーダーメイドすることをお勧めします。適切な中敷きの他、足の親指と人さし指の間を広げる装具の着用は、関節の変形の進行を遅らせることにも役立ちます。

ただし、これらの治療は対症療法であり、すでに起きた変形を矯正することはできません。

 

Q. 薬物療法について教えてください。

A.

痛みが強い場合、非ステロイド系の消炎鎮痛薬の飲み薬や貼り薬、塗り薬などを処方することがあります。それらが効かなければ、患部にステロイド薬を注射することもありますが、注射を繰り返すと関節周辺の組織が損傷を受ける可能性があります。

 

Q. 手術が必要なのはどんなケースですか?

A.

足の変形が進行し、切らない治療を試しても痛みが続く場合です。だからと言って即手術ではなく、主な症状、患者の健康状態、手術のリスク、職業、普段激しいスポーツや運動をしているか、手術によって期待できる改善の程度などを慎重に検討し、その上で手術するかどうかを決めます。

手術の方法もさまざまで、関節の変形の程度や状態、患者の希望などによって適切な方法を選びます。そのうち一つは、患部を切開して骨を露出させ、突出した部分の骨を切る方法です。関節周辺の骨を本来の位置に戻し、チタン製の金具で固定します(写真参照)。手術は日帰りで行われ、一般的に術後すぐに特殊な靴と松葉杖、あるいは杖を使用して歩行が可能になり、2〜3カ月後にスポーツができる程度まで回復します。足指の関節の動きや歩行に困難がある場合は、理学療法を併用することもあります。

足病医は、膝から下の脚の問題の専門家です。外反母趾のような骨格の問題はもとより、水虫、ウオノメなどの皮膚の異常、神経系や血管系の異常、けがの治療と手術などの特別訓練を受けています。気になることがあれば気軽に相談してください。

※来週は、シェリー・メイ先生に歯科インプラントについてお聞きします。

 

朴仁戴先生
Innjea S. Park, DPM, AACFAS
足病医学博士(DPM=Doctor of Podiatric Medicine)。
ニューヨーク足病医学専門大学でDPM取得。
ワイコフハイツ医療センターで外科レジデンシー修了。
外反母趾、扁平足、足首関節炎、骨折、足底筋膜炎、水虫、いぼなど、足の病気や悩み、けがの治療と手術が専門。
米国足病医学会(ABPM)会員、米国足・足関節外科学会アソシエート(AACFAS)。日本語堪能。

 

日本診療所
Nippon Shinryojo
130 E. 40th St., #1200
(bet. 3rd & Lexington Aves.)
TEL: 212-213-3100
www.nipponshinryojo.com

 

 

 

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