渡邉先生の教育広場

<第10章>親が選ぶこと、子供が選ぶことー学校選びは、親子が共に育つ旅路

多様な人種や文化の違いなど、日本人の親御さんにとって、ニューヨークで子育てすることは、時に孤独で難しいこともある。そんな方々のお力になりたい、子育ては地域みんなでするもの、渡邉先生のそんな思いを届けます。


今週からキンダーガーテンの申し込みが始まります。ニューヨークの学校選びには、テストスコア、ランキング、PTAの資金力、口コミ、学校見学の印象ー情報は山のようにあるということを今までお伝えしてきました。ストレスを感じることも多いかと思いますが、私が、多くの家庭と子供たちを見てきて感じるのは、最終的には、〝親の直感〞ってとても大事だなということです。

直感とは「なんとなく」ではない

ここで言う直感とは、「なんとなく好き」といった表面的な印象ではありません。丁寧に情報を集め、悩み、考え抜いた後に、ふっと胸の奥に残る〝静かな確信〞です。

「先生の声のトーンが優しかった」「子供が自然に笑っていた」「ここなら安心できる気がした」。こうした印象は、脳の深い部分で無数の情報を一瞬で統合し、判断しているサインなのです。

「完璧な学校」は存在しないーけれど「その子にとっての最高」は存在する

ニューヨークには、「完璧な学校」は存在しません。どんなに評判の良い学校でも、その子の性格や家庭のリズムに合わなければ、毎日小さなストレスの積み重ねになります。

逆に、ランキングが高くなくても、子供の表情が自然にほぐれ、先生が我が子を尊重してくれる学校であれば、それはその子にとって最高の環境です。子どもの〝育ち方〞は、学校の名前ではなく、家庭の安心と親の信頼が育てるものです。

子供の未来のために

学校選びに深く悩む人もいれば、直感的にすっと決められる人もいます。どちらも正しい選択です。けれど忘れてはならないことがあります。学校選びに限らず、習い事、進路、友人関係など、親は日々、子供に良かれと思って様々な選択をしています。それはとても大切なこと。けれど、親の選択が、子供自身の「選ぶ力」を育てる土台になっているか。そこに意識も向けることが大切です。なぜなら、親は子供の面倒を一生見るわけではないですし、子供には子供自身の人生があり、いつか自立して、自分の足で歩いていかなければなりません。だからこそ、今の選択は「子供のため」であると同時に、「子供が将来、自分で選べるようになるため」でもあります。子供たちは、私たちの知らない未来を生きていきます。ニューヨークで暮らすかもしれないし、日本へ帰るかもしれない。あるいは第三国で新しい価値観に触れながら生きていくこともあるでしょう。親が選んだ道ではなく、子供自身が選んだ道を歩けるようにーその準備として、親は、子供の進路に向き合っていきます。日々、子供と向き合い、その時々で最善だと思う選択をする。それが「愛情」であり、「子供を守る力」です。そして同時に、子供の「やりたい」という気持ちに耳を傾け、その意志を尊重すること。それが、子供が自分らしく羽ばたいていくための、確かな灯りになります。どのご家庭にも、あたたかな一歩が訪れますように。


渡邉敦子
Friends Academy of JCS
エデュケーショナルディレクター

米国にて教育学修士課程を取得。ニューヨーク州普通学級、特別支援学級教員免許、および国際モンテッソーリ協会(AMI)の資格を所持。ニューヨーク現地のプリスクールを始め、米国公立小学校や日本語学校での勤務経験が豊富。日本語での教育相談や発達に関する親御さんの悩み解決のお手伝いに尽力している。

Instagram: @kaigai_kosodate_ari

               

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