渡邉先生の教育広場

<第2章>日米の子育て習慣の違い

 

多様な人種や文化の違いなど、日本人の親御さんにとって、ニューヨークで子育てすることは、時に孤独で難しいこともある。そんな方々のお力になりたい、子育ては地域みんなでするもの、渡邉先生のそんな思いを届けます。


日本と米国の子育てには文化的背景からくる大きな違いがあります。ニューヨークに住む日系家族にとって、この違いを理解しつつ、子供の成長に最適な方法を選ぶことは重要です。両国の価値観を取り入れた柔軟なアプローチが鍵となります。

自立心の育て方

日本と米国では「自立」の捉え方が異なります。日本では協調性を重視し、集団の中で役割を果たすことが自立の第一歩とされます。その一方で、米国では自己主張や意思決定が自立の指標とされることが多いです。例えば、米国では積極的に意見を述べる姿勢が評価され、リーダーシップ育成を掲げる教育機関も数多く存在しています。

この両国の良さを融合した「第三の道」を模索することが望ましいでしょう。「自分で選び、自分で考える」機会を提供しながらも、他者への配慮や協調性を教えるバランスが重要です。このようなアプローチは、自立心と責任感を同時に育む効果的な方法となり、グローバル社会で活躍できる子供たちを育てます。

おつかいとお留守番

日本ではよく知られるように、幼少期から「おつかい」や「お留守番」が自立心を養う手段として親しまれています。しかし、米国では法的・文化的背景が異なり、小さな子供を単独で留守番させることはネグレクト(育児放棄)とみなされる場合があります。ニューヨーク州では明確な年齢制限はないものの、一般的には12歳未満の留守番は避けるべきです。

親子でお風呂に入ることへの注意点

また日本では、親子で一緒にお風呂に入ることは一般的で、家族間のコミュニケーションの一環として親しまれています。「裸の付き合い」という文化が銭湯や温泉でも見られるように、信頼関係を深める場として尊重されています。

しかし、米国ではこの習慣が大きく異なり、特に父親が娘と入浴することはタブー視されます。場合によっては虐待の疑いをかけられる可能性もあり、警察や児童保護機関への通報リスクがあるため注意が必要です。米国では、小さな子供が一人でお風呂に入れない場合でも、親が服を着たまま浴槽の外からサポートする方法が一般的です。

バイリンガル環境での言語発達

バイリンガル環境で育つ子供たちは、言語発達のペースや過程が一言語環境とは異なります。一時的に「言語混合」の段階を経ることは、自然です。家庭では日本語、外では英語という「一人一言語」の原則を無理なく続けることが重要です。一人一言語が難しい家庭では、少なくとも一文中に多言語が混ざらない会話を心がけましょう。英語優位になりがちな環境下では、日本語での語りかけ、読み聞かせの量を確保することが鍵となります。また言語発達に懸念があれば、専門家への相談をおすすめします。両言語で自己表現できる喜びを知ることで、バイリンガル能力への興味と意欲を引き出すことが可能です。


渡邉敦子
Friends Academy of JCS
エデュケーショナルディレクター

米国にて教育学修士課程を取得。ニューヨーク州普通学級、特別支援学級教員免許、および国際モンテッソーリ協会(AMI)の資格を所持。ニューヨーク現地のプリスクールを始め、米国公立小学校や日本語学校での勤務経験が豊富。日本語での教育相談や発達に関する親御さんの悩み解決のお手伝いに尽力している。

Instagram: @kaigai_kosodate_ari

               

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