みみ先生の日本語子育て

その17 工夫次第で、いつでもどこでも学習できる

現地邦人の子どもたちに向けて日本語教育を行っている皆本みみさん。「みみ先生」からニューヨークでの日本語教育について大切なことを伝えていく連載。


子どもにとって、「大」と「小」の概念は理解しやすいようですが、「中」の概念は難しいということがわかりました。

そこで、私は娘たちと3人で歩いている時、こんな遊びをやってみたことがあります。私が「大」、上の娘が「中」、下の娘が「小」です。そして、並んだ順に「大、中、小」と声に出して言ってみるのです。並び順を変えて「小、中、大」とか「中、小、大」と声に出し、体で大きさの概念を覚えていくという方法です。

実は、この遊びは、登校中にやりました。この程度の遊びをやろうと思えば、いつでもどこでも、できてしまいます。時間を無駄にしない。まさにこれが「みみ流」です。

子どもたちを車に乗せている時間も、できるだけ無駄にしません。運転中は手と目は使えませんが、良く回る口は大活躍でした。

「How do you say “Sora” in English?」(空のことは英語でなんていうの?)。「How do you spell it?」(スペルは?)。車の窓から見えるものすべてが教材になります。ある日、車を走らせていたら、後部座席で2人がけんかを始めたので、もったいないと思ったのがきっかけでした。

いつでもどこでもできる学習法は、半分遊びです。ですから、子どもたちも嫌がらずに楽しんでやってくれるのです。机に向かってやるものだけが勉強ではありません。日常生活の中で反映されるのなら、それほどいい勉強法はありません。ダジャレだっていいのです。

例えば、食事に肉を出す時、さりげなく「肉18」なんて言ってみます。やり過ぎるとひんしゅくを買いますが、覚えてくれるのならなんでもやってみるのが「みみ流」です。「兄さんが6」「西が8」「ロック54」「葉っぱ64」「黒く54」と、いろいろ使えます。

また、出掛ける時にはいつでも本や筆記用具を携帯していました。レストランに入って、子どもの食事が先に終わってしまっても、これがあれば手持ち無沙汰ではなくなります。電車に長時間乗る時などは、わざと難しい本(普段敬遠している本)を選んでおくのもテクニック。案の定、本を見せると、子どもは嫌な顔をしますが、結局それしかなければ読み始めます。結構、集中して読んでいるのを見ると、改めて先入観で判断しては良くないということに気付かされます。

遊びは脳を刺激する

教室に通っていた子どもたちは、時々こんなことを言って帰って行きました。「みみ先生、また遊びに来るね」と。これは子どもたちにとって、教室での学習が遊びのように思えたからでしょう。教室のない日、道でばったり会った子どもに「みみ先生、遊ぼう」と声を掛けられた時には、いささか戸惑うこともありましたが、実際、子どもたちとは一緒になってよく遊びました。

学習によく遊びを取り入れたのは言うまでもありませんが、純粋に子どもと遊ぶこともたくさんありました。そもそも遊びとは、子どもの成長、発達に大きく寄与するものですから、遊びそのものが学習になると言っても過言ではありません。

ままごとは、その子どもの家庭生活がわかって、どきりとさせられることもありますが、子どもを知ることができますし、子どもにとっても、父親の役割、母親の役割、そして家庭の中での自分の立場、役割を確かめる良い勉強になります。

「プレーセラピー」という子どもの心理療法があるように、心に問題を抱えた子どもも、遊びを通して何かに気付き、障害になっている原因を自ら取り壊すことによって、前向きに学習に臨めるようになるのかもしれません。「遊びを侮るなかれ!」ですね。

※このページは、幻冬舎ルネッサンスが刊行している『ニューヨーク発 ちゃんと日本語』の内容を一部改変して掲載しております。

 

 

 

皆本みみ

1952年、東京都八丈島生まれ。
79年に来米。
JETRO(日本貿易振興会)、日本語補習校勤務を経て公文式の指導者となり、シングルマザーとして2人の娘をニューヨークで育てる。
2007年『ニューヨーク発ちゃんと日本語』(幻冬舎ルネッサンス)を上梓。
現在もニューヨークで日本語の指導者として活動中。

 

 

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