みみ先生の日本語子育て

その16 数字の読み方を覚える

現地邦人の子どもたちに向けて日本語教育を行っている皆本みみさん。「みみ先生」からニューヨークでの日本語教育について大切なことを伝えていく連載。


近頃、子どもの国語力の低下が指摘されています。算数や理科、社会といった教科も国語力がないために解けないというのです。全く同じことを私も感じていました。計算問題は解けても、文章問題になるとつまずいてしまう子どもは多く、まずは言葉を理解させるところから入らざるを得ませんでした。

数字に関しても、英語の読み方では、12と21、15と51の判別が難しいということが挙げられます。「twelve」と「twenty-one」、「fifteen」と「fifty-one」この違いです。確かに、「じゅう・に」「にじゅう・いち」と読む方が、数を理解しやすいのです。

そこで、数字については、まず日本語読みに力を入れて指導しています。

 

100まで数える練習を

まずは、1から10までの数の読み方を表を見ながら徹底させる。それから30まで、50まで、70、80と100までの言い方に慣れさせる。これは大事です。一緒に口に出しての練習です。でも、まだ足し算は早いです。ここで育つ子どもには、100(ひゃく)という言い方は、とても難しいのです。スムーズに言えるようになったら、次は、おはじきで1から100まで数えさせる練習です。そして、数が増えるという感覚を覚えさせます。その後、再び120までを数えられたら、足し算に入れます。

次の指導は、足して10になる数の徹底です。その時に「何と何を足すと、何と何が仲良しで10になるの?」と聞いてあげるのもいいですよ。そこで記号をマイナスに変えて遊びます。それで足し算、引き算はスムーズになります。

口に出すことで九九を覚える

特にこだわったのは、掛け算九九です。アメリカでは掛け算九九を日本のように教えません。しかし、私は、どの子どもにも九九を覚えさせることにしていましたから、九九に入る前に、「いち、に、さん、し……」といった数字の読み方を徹底して指導しました。そして、「口に出す・聞く」を何度も繰り返させました。「しし16」は「よんよん16」ではありませんし、「しちしち49」は「なななな49」でもありません。

日本ではなんでもないことのようですが、「four」や「seven」が頭に先に入っていることもあり得るアメリカの子どもたちにとっては、こういうことが重要なのです。

「今日は何日?」を聞いてあげよう

ところで、数字といえば、日本語の読み方の方が断然難しいというものも、たくさんあります。例えば、日にちの読み方です。

1日を「ついたち」と読んだり、5日を「いつか」、6日を「むいか」、20日を「はつか」とはなかなか読めません。これは、海外在住の子どもに限ったことではないでしょうが。

そこで、お母さん方にお願いしていたのが、毎日必ず、「今日は何日?」とお子さんに問いかけてあげるということでした。難しい読み方も、それぞれが年に12回は覚えるチャンスがありますし、当日に聞いてあげる方がリアリティーがあっていいのです。また、漢字とひらがなを書いてもらい、子どもの目の高さに貼ってもらいました。

数字の読み方という壁は、プレバイリンガルにとっては、最初の踏ん張りどころです。基礎である、ここのところをしっかり身に付けけさせることに、時間を惜しまないでください。

※このページは、幻冬舎ルネッサンスが刊行している『ニューヨーク発 ちゃんと日本語』の内容を一部改変して掲載しております。

 

 

 

皆本みみ

1952年、東京都八丈島生まれ。
79年に来米。
JETRO(日本貿易振興会)、日本語補習校勤務を経て公文式の指導者となり、シングルマザーとして2人の娘をニューヨークで育てる。
2007年『ニューヨーク発ちゃんと日本語』(幻冬舎ルネッサンス)を上梓。
現在もニューヨークで日本語の指導者として活動中。

 

 

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mimisenseiteacher@gmail.com

 

 

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