みみ先生の日本語子育て

その12 子どもが親を大好きな時に

現地邦人の子どもたちに向けて日本語教育を行っている皆本みみさん。「みみ先生」からニューヨークでの日本語教育について大切なことを伝えていく連載。


小学校に上がる前の子どもには、たいてい反抗期があります。その一方で、「お父さんが一番」とか「世界の中心はお母さん」という、親を全面的に信頼し、親のことが大好きな時期もあります。対象は母親であることの方が多いようですが、この時期はまさに子育ての黄金期。しつけや基本的な生活習慣を身に付けさせるのに、この時期を逃す手はありません。

子どもが大きくなればなるほど、親の嫌なところが見えてきたりして、なかなか言うことを聞いてくれなくなります。「小さな大人」になる前の、子どもが言うことを素直に聞いてくれる時に教えてこそ、時間の無駄、エネルギーの無駄がないのです。

でも、どうもこのことに気付かずに、チャンスを失っている親御さんが多いようで、無駄なことをしていると思うのです。言い換えれば「もったいない」。

この時期は「しつけ」に限らず、言葉の勉強も効率的に行えます。言葉は生活の中で学んでいくものであり、ピアノやスイミングといった習い事とは違います。ですから、親が意識して教えていかなくてはならないのです。親の意識。ここがポイントです。

日本にいるから日本語はできる、あるいはアメリカにいるから英語ができるかといったら、そうではありません。確かに簡単な「読む・書く・話す」はできるようになるでしょうが、深く理解したり、応用できるようになるためには、しっかりした教育が必要になります。フランスにいればフランス語を話せるようになるかもしれないけれど、新聞が読めるかどうかは別問題。これと同じです。

つまりここまでの基礎を、親は手を抜かずに生活の中で身に付けさせなくてはならないのです。簡単ではありません。だからこそ、子どもの吸収が早く、無駄のない時期にやってしまうのがいいのです。

 

親にとっても成長のチャンス

ところでこの時期は、親にとっても伸びるチャンスです。

「今さら、親は伸びる必要なんてないわ。子どもさえ伸びてくれればそれでいいの」なんて言っているあなた、その考えが子どもをダメにしてしまいますよ。

ニューヨークではお母さんたちに対して、日本人とばかり付き合っていないで、もっとアメリカの社会の中に積極的に入っていき、アメリカを理解してほしいと言っています。せっかくアメリカにいるのですから、それこそもったいないと思うのです。なぜなら、子どもと話をしていく中で、生活の舞台であるアメリカについての理解がなければ話にならないからです。

また、子どもにとって育つ環境は重要です。ましてや、子どもが一番伸びる時期の環境は、どんなことがあっても整えてあげなくてはなりません。ピアノを習わせて、スイミングもやって、家庭教師も来るし……。だから環境が整っている、と安心している場合ではありません。その環境の中に親も入っているということ。意識されているでしょうか。

子どもは親の姿を見ている

向上心を持つ親の姿勢は、子どもにも大きく影響します。「お母さん大好き!」 と子どもがこちらを向いている時、「私にとってもチャンス!」という意識で、なんでもいいですから積極的に知識を吸収してみてください。

お子さんは敏感です。エネルギーに満ちたお母さんと接するのは心地よいはずです。大好きなお母さんのことを、もっと好きになってくれます。

この時期をうまく利用すれば、しっかりしつけができ、子どもにたくさんの言葉を習得させていくことができるでしょう。

※このページは、幻冬舎ルネッサンスが刊行している『ニューヨーク発 ちゃんと日本語』の内容を一部改変して掲載しております。

 

 

 

 

皆本みみ

1952年、東京都八丈島生まれ。
79年に来米。
JETRO(日本貿易振興会)、日本語補習校勤務を経て公文式の指導者となり、シングルマザーとして2人の娘をニューヨークで育てる。
2007年『ニューヨーク発ちゃんと日本語』(幻冬舎ルネッサンス)を上梓。
現在もニューヨークで日本語の指導者として活動中。

 

 

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