みみ先生の日本語子育て

その10 赤ちゃんにも 美しい日本語

現地邦人の子どもたちに向けて日本語教育を行っている皆本みみさん。「みみ先生」からニューヨークでの日本語教育について大切なことを伝えていく連載。


私は、娘たちには、首が座るくらいの頃から五十音を読んで聞かせていました。壁には表を貼り、一字ずつ指差しながら「あ・い・う・え・お」と始めると、赤ちゃんでも耳をよく澄まして聞いているのがわかりました。なんだか楽しそうと思ったのかもしれません。

同コラムのメインテーマは、いかに子どもに話し掛けるかということです。私は、わが子がお腹の中にいる時から話し掛けていました。だから、娘たちにとっては、毎日、シャワーのように日本語が入っていたのではないでしょうか。

その際、気をつけたのは、正しい日本語を使うことでした。そのため、赤ちゃん言葉は決して使いませんでした。もしかしたら、日本で子どもを生んでいたら、何も考えずに赤ちゃん言葉で話し掛けていたのかもしれません。「アババー、ママデチュヨ」みたいに。やはり、異国の地にあって、きちんとした日本語を娘たちにマスターさせるための決意は生半可なものではなかったのでしょう。

正しい日本語を心掛けただけではありません。美しい日本語、良い言葉ばかりを使うように常に意識していました。「言霊」というように、良い言葉の方が高いエネルギーを持っていると思ったからです。「ばか」とか「うすのろ」とか、そういったエネルギーを下げるような言葉は一度も使ったことがありません。これは大人にも言えることで、私自身が言われて嫌な言葉、エネルギーが低下するような言葉は使わないようにしていたのです。

さて、2歳を過ぎると、クレヨンを握って、絵が描けるようになります。絵といっても、でたらめな線を描く「線錯画」とか、丸をグルグルと何重にも描く「円錯画」ですが。形になっていなくても、クレヨンを握って線を描くということ自体が楽しいのでしょう、子どもは喜んで描いていました。

そして、そんな時でも、初めは描くことに集中させておきますが、しばらくしたら話し掛けます。「何を描いてるの?」とか「これはお魚かな? 青いお魚が元気に泳いでいるの?」なんて、正しい日本語、美しい日本語を使います。

 

じっくり「話し掛け」

子どもが生まれてすぐから、窓を開け、外の音を聞かせることもよくやりました。じっくり聞かせてから、やはり話し掛けです。

「救急車が通ったね」「鳥が鳴いたよ」「ヒューヒューっていうのは風の音だよ」「○○ちゃんが、笑っている声が聞こえたね」とか、話し掛ける内容はその日、その場面によって違います。

雨の日には、子どもを抱いて窓辺に立ち、「今日は小雨だね」とか「雨がザーザー降っているね」と外の様子を見ながら話し掛けていました。

散歩には、毎日のように出掛けました。ベビーカーに乗せると、子どもにとっては風景にも動きが出てきますから、目を輝かせます。そんな時も、話し掛けによって、さらに目は輝いていきます。

お風呂の時間も無駄にはしませんでした。数を数えさせたり、歌もたくさん歌ってあげました。お風呂はそれほど長居できる場所ではありませんから、歌を一曲歌ったら出るというような目安があれば、のぼせ防止にもなりますし、逆に、お風呂嫌いも解消できると思います。

もう少し成長したら、紙芝居などもやってみましたが、そこでも正しい日本語、美しい日本語を使ったつもりです。子どもが日本語を勉強できる場所は家しかないので、その発信源となる母親にはこれくらいの努力は必要だと思います。

このくらいの意識でやっていくと、日本語だけではなく、しつけや他の学習面においても効果が期待できるのではないでしょうか。

※このページは、幻冬舎ルネッサンスが刊行している『ニューヨーク発 ちゃんと日本語』の内容を一部改変して掲載しております。

 

 

 

 

 

 

皆本みみ

1952年、東京都八丈島生まれ。
79年に来米。
JETRO(日本貿易振興会)、日本語補習校勤務を経て公文式の指導者となり、シングルマザーとして2人の娘をニューヨークで育てる。
2007年『ニューヨーク発ちゃんと日本語』(幻冬舎ルネッサンス)を上梓。
現在もニューヨークで日本語の指導者として活動中。

 

 

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