みみ先生の日本語子育て

その9 子どもは親を選んで 生まれてくる

現地邦人の子どもたちに向けて日本語教育を行っている皆本みみさん。「みみ先生」からニューヨークでの日本語教育について大切なことを伝えていく連載。


親は子どもを選べない。子どもも親を選べない。これが世間一般の常識です。

しかし、私には、「選ぶこと」から親子の縁が始まっているように思えてならないのです。ちょっとファンタジックな話になりますが、こんな想像をしてみてください。

人は生まれる前に、神さまから自分の運命を知らされるのです。そして、最後に親を選んで、この世に誕生することを許されます。しかし、オギャーと産声を上げた瞬間に、それまでの一切の記憶を失ってしまうのです。

いかがでしょう。こんな想像をすると、親子の出会いがとても神秘的に思えませんか。人生において、数え切れないほどの「縁」の中で最も尊いのが親子の縁だと、私は信じています。

悲劇の事故が教えてくれたメッセージ

ところで、1999年、日本で起きた「東名高速飲酒運転事故」を思い出してください。おそらく多くの人々の記憶に刻まれた悲惨な出来事だったのではないでしょうか。飲酒運転のトラックが普通乗用車に追突し、幼い姉妹2人が命を落とした事故です。

あってはならない悲劇ですが、被害者のご両親は立派でした。事故の後、法改正を求めるなどの運動を行い、社会に大きな影響を与えてきたのですから。悲しみに耐えながら泣き寝入りに終わらせない、精神的に大変強いご両親だったのでしょう。

この事故を知り、思ったのです。この姉妹たちは生まれてくる前に、すでに運命を知らされていたのではないかと……。その運命とは、社会の悪と不正を正すという使命です。しかも短い人生でそれを成し遂げなくてはなりません。そこで、姉妹は、「この親なら大丈夫。しっかりやってくれる」と見込んで、このご両親の元に生まれてきたのではないかと……。

そう考えると、わが娘たちも、きっと私を母として選んでくれたのでしょう。彼女たちは、最も努力し、最も優秀な生徒でした。子どもに備わった素晴らしい能力に気付かせてくれ、私の好奇心とやる気を大いに刺激してくれました。2人が私の娘だったからこそ、今の私があるのです。そして、私自身の使命を果たせてきたように思います。

 

母親になる準備期間

赤ちゃんは、10カ月近くお腹の中にいます。そして、生まれてからも1年くらいは歩くことができません。つまり、この期間は、わが子との結びつきが最も強い時であり、母親としての準備をする期間でもあります。

最近、若いお母さんたちにお会いし、こんな話が飛び出しました。

「子どもがお腹の中にいる時は、今までと同じ生活はできないと諦めていました。子どもが生まれるまでは辛抱しなきゃと、それが、子どもが生まれてからはますます大変で、今では独身時代の生活に戻るのは諦めました」と。私は、少し驚きましたが、こんな考え方の人、意外と多いようです。

子どもが生まれても、それまで通りの生活を変えたくないという気持ちはわかります。その生活を守るために子どもを作らないという人もいるくらいですから、それはそれでいいと思います。しかし、子どもを望んで授かったのに、自身の生活を変えられないとしたら、それは親のエゴ、私に言わせれば親になる資格がありません。

育つ時に育てる。私は、子どもが3歳になるまでは、父親か母親のどちらかが必ず子どものそばにいるべきだと思っています。誰でもキャリアは大事ですが、仕事の代わりはいても親の代わりはいません。また、いろいろな事情で子育てができない人もいるでしょう。そういう人は、子育ての経験のある信頼できる人に依頼してもいいかもしれません。ただし、お互い密に連絡を取り合う必要はあります。

※このページは、幻冬舎ルネッサンスが刊行している『ニューヨーク発 ちゃんと日本語』の内容を一部改変して掲載しております。

 

 

 

 

 

 

皆本みみ

1952年、東京都八丈島生まれ。
79年に来米。
JETRO(日本貿易振興会)、日本語補習校勤務を経て公文式の指導者となり、シングルマザーとして2人の娘をニューヨークで育てる。
2007年『ニューヨーク発ちゃんと日本語』(幻冬舎ルネッサンス)を上梓。
現在もニューヨークで日本語の指導者として活動中。

 

 

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