みみ先生の日本語子育て

その6 子育ては真剣勝負

現地邦人の子どもたちに向けて日本語教育を行っている皆本みみさん。「みみ先生」からニューヨークでの日本語教育について大切なことを伝えていく連載。


小学生くらいまでは、いわゆる「頭の良い子」はたくさんいます。問題は、それが20代、30代まで持続できるかということではないでしょうか。意外と「ただの人」になっているもので、だからこそ、頭の良し悪しではなく、その子どもの個性を伸ばすことのほうが大切になってくるのです。

大人には、子どもの真の個性を発見し、それを導き出す義務があります。とはいえ、形あるものにとらわれるのが人間ですから、目の前に突き出されたテストだとか成績表に一喜一憂し、個性だとか心根といった、形となって現れないものを見出すことは難しいのかもしれません。

学校の成績、あるいは偏差値という「呪縛」は、大切なものの姿を隠してしまう、大人にとっても、子どもにとっても手強い相手ですが、お子さんの真の個性を見出し、伸ばしてあげてください。焦ることはありません。ゆっくりと、少しずつでいいのです。

ところで、娘は、人からよく「頭が良い」と言われてきました。ところが、そのたびにこう答えているのを何度か聞いたことがあります。

「頭が良いというか、私、努力しているんです」と。確かに努力していました。そこで、努力というものについて、もう少し考えてみましょう。『ノルウェイの森』(村上春樹著)に、印象的な内容がありました。

努力というものは、自分ができないことをできるようにすることを言うのだと。例えば、2、3個の語彙(ごい)しか知らなかったスペイン語が話せるようになれば、それは努力と言えますが、毎日、会社に行くというのは、生活のための労働をしているだけで努力とは言わない……。うーん、考えさせられます。

自分の手には負えそうにないことにも、果敢にチャレンジする。大人になるほど難しそうですが、わが子の個性を伸ばすための努力は、真摯に取り組んでいきたいものです。

 

子どもを「お山の大将」にしない

成人した娘たちは、幼い頃を振り返ってよく言います。「マミィは怖かった」と。学校の先生、それも生徒たちから恐れられているような先生よりも怖かったのだそうです。「えー、そんなことないでしょう。こんな子ども思いの親はいないよー」と、一応反発はしてみますが、はい、確かに怖い母親でした。それは認めましょう。

しかし、ここで反論しておきます。私は、子どもたちの失敗に対しては何も言いませんでした。叱る時というのは、自分のやるべき事をしていない時や、人に対して失礼な事をした時です。

日本には、「地震、雷、火事、おやじ」という言葉がありますが、わが家では「おやじ」が抜けていましたから、私の記憶では、毎日が真剣勝負でした。子どもたちを怒る人間は私しかいないのですもの。親として当然のことだと思います。義務だと思って、バンバンやっていました。

でも、子どもたちには感謝されてもいいと思います。「子どもの時に甘くて、今、厳しい」より「子どもの時に厳しくて、今、甘い」方がいいでしょうと。前者は、親と子の双方にとって、前途多難な人生が待ち受けていると容易に想像ができます。

だいたい子どもに対しては、厳しいくらいのほうがいいのではないでしょうか。絶対に、子どもを「お山の大将」にしてはなりません。家の中で「お山の大将」でいられれば、子どもたちにとってこんな居心地の良い場所はありません。

わが子が50歳、60歳になっても自立せず、私が80歳、90歳になってもまだ子どもの食事の世話をしてあげなくてはならないなんて、とんでもないことです。

「家より学校の方がいい」というくらいでちょうどいいのです。まあ、そのへんのさじ加減は難しいところで、だから真剣勝負だったのかもしれません。

※このページは、幻冬舎ルネッサンスが刊行している『ニューヨーク発 ちゃんと日本語』の内容を一部改変して掲載しております。

 

 

 

 

 

 

皆本みみ

1952年、東京都八丈島生まれ。
79年に来米。
JETRO(日本貿易振興会)、日本語補習校勤務を経て公文式の指導者となり、シングルマザーとして2人の娘をニューヨークで育てる。
2007年『ニューヨーク発ちゃんと日本語』(幻冬舎ルネッサンス)を上梓。
現在もニューヨークで日本語の指導者として活動中。

 

 

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