みみ先生の日本語子育て

その5 子どもを一人の人間として尊重する

現地邦人の子どもたちに向けて日本語教育を行っている皆本みみさん。「みみ先生」からニューヨークでの日本語教育について大切なことを伝えていく連載。


子どもに対する態度が横柄な大人をよく見かけます。「大人の言うことを聞け」と言わんばかりに子どもと接する大人が案外多いのです。これはよくありません。大人は、子どもに対してもっと謙虚にならなくはなりません。相手がたとえ0歳児であっても、一人の人間として尊重することは、子どもが育つ上でとても大切な環境づくりにつながるからです。

子どもと一緒に勉強させてもらおう。──こんな心掛けでいるといいのです。「まだ小さいから親の言いなりになるだろう」なんていう意識でいたら、後できっとわが子からしっぺ返しがきますよ。

というのは、いつも親から尊重されていない、つまり「下」に見られている子どもは、抑圧されて大きくなれないからです。それだけではありません。同じことを他人に対してやってしまうのです。こいつは「下」だと見なした相手に対して、「言うことを聞け」という態度に出てしまうわけです。手を出さなければいいという問題ではありません。たとえ手を出さなくても、相手を傷つける暴力に他なりません。

 

 

忙しくても子どもを放置しない

「私は、子どもを尊重しているから大丈夫」と言う人も気を付けてください。例えば、自宅で子どもに勉強をさせます。でも、やらせっぱなしになっているということはないでしょうか?確かに主婦にとっての夕刻は、食事の支度など格別に忙しい時間帯です。しかし、これほど子どもにとって失礼なことはないのです。私は常々、お母さんたちにこうお話してきました。「勉強をやらせた以上は、その日のうちにチェックしてあげてください」と。もし、子どもが間違って覚えてしまったら、気の毒だからです。例えば、漢字で「にんべん」にしなければならないところを「ぎょうにんべん」で覚えてしまったとしたらどうでしょう。小さな違いであっても、時間が経てば経つほど、修正が難しくなります。だから、その日のうちにチェック。子どもを尊重しているから、「その日のうちに」なのです。

子どもを尊重するということは、決して威圧的にならないということだけではありません。わが子が悪いことをしても、「子どもだからまだわからない。大人になったらわかる」と、叱りもせずに放置することも、やはり子どもを尊重しているとは言えないのです。尊重するからこそ、話せばわかると信じ、正しい方向に導いてあげるのが親の役目です。

地域ぐるみの子育て

韓国に留学経験のある娘が、こんな話をしてくれました。ソウルで友人の家に遊びに行った時のことです。お母さんがピアノの先生をしており、10歳に満たないくらいの男の子がちょうど習いに来ていました。レッスンが終わり、その子がお家の人に迎えを頼む電話をかけました。その直後、先生がすかさず男の子に注意をしました。

「お母さんにそんな口きいてどうするの。『迎えにきてください』って言わなきゃだめでしょう」と。

娘は、日本ではとっくになくなってしまった「地域ぐるみの子育て」が、韓国にはまだしっかり残っているような印象を受けたようです。昔の多くの日本人が持っていた、礼儀正しさ、思いやり、ひたむきさ、謙虚さといった「人の道」を、さりげなく実行できる韓国の人に、日本人としてのDNAが刺激されたのかもしれません。

子どもを一人の人間として見ているからこそ、間違ったことは注意する。子どもを尊重できる大人は、「子どもに言ってもわからない」などと勝手に思ったりしないのです。

※このページは、幻冬舎ルネッサンスが刊行している『ニューヨーク発 ちゃんと日本語』の内容を一部改変して掲載しております。

 

 

 

 

 

皆本みみ

1952年、東京都八丈島生まれ。
79年に来米。
JETRO(日本貿易振興会)、日本語補習校勤務を経て公文式の指導者となり、シングルマザーとして2人の娘をニューヨークで育てる。
2007年『ニューヨーク発ちゃんと日本語』(幻冬舎ルネッサンス)を上梓。
現在もニューヨークで日本語の指導者として活動中。

 

 

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