みみ先生の日本語子育て

その2 子どもにとって大切なもの

現地邦人の子どもたちに向けて日本語教育を行っている皆本みみさん。「みみ先生」からニューヨークでの日本語教育について大切なことを伝えていく連載。


世の多くの人は、形あるもの、目に見えるものだけを大事にしているように思えます。例えば、ニューヨークの教室でこんなことがありました。

ある日、2人の男の子、A君とB君が入会しました。どちらも5歳でした。3カ月後、2人に差が現れ、A君のほうがぐんと伸びてきました。そこで黙っていないのは、B君のお母さんです。「なぜ一緒に始めたのに、うちの子は伸びないのですか」と。私は、こう答えました。

「お宅のお子さんは慎重なんですよ。半年後には違ってくるはずですから安心してください」。

B君のお母さんには、わが子の良いところが見えていませんでした。A君と比較し、目に見える結果だけで判断してしまっていたのです。

でも、そうではありません。伸びる時期は子どもによって違いますし、B君にはB君なりの良さがあるのです。この時は、さらにこんなこともお話しました。

「お母さんは、お子さんに対して少し口数が少ないようですよ。A君のお母さんは、よく話しかけているんです。もっとしゃべりましょう」と。母親が子どもに話しかけるというのはとても重要で、どのお母さんにもお話しさせていただいたことです。子どもの発達には、親の目に見えない地道な努力が必要だというわけです。

 

目に見えないもの

さて、目には見えなくても大切なもの、他にもたくさんあります。〈人を敬う心〉〈信じる心〉〈反省する心〉、そして〈感謝する心〉などです。内面に関わることですから、わかりにくいものです。しかし、これらは感じることができます。

一見同じような親切を受けても、形にこだわってやっている人と「なんとかしてあげたい」と心からやっている人とでは違ってきます。人間は、そんな違いを敏感に感じ取れるものなのです。だからこそ、子どもには目に見えないものを真剣に教えていかなくてはなりません。そして、お母さんも目に見えないものに敏感になり、お子さんのサインにもっと気付いてあげてください。

私は、毎日、子どもの様子をよく観察していました。すると、微妙な違いではあっても感づくもので、「今日は少し元気がないな」という日はあまり難しい勉強はさせず、逆に「今日は乗ってるな」という日は、新しい内容の勉強をさせました。親が子どものコンディションを常に把握し、学習ペースをうまく管理してあげるのも、目に見えない努力だと思います。

自立心を育てる

こんなお母さんがいました。当時3歳だったわが子がかわいくてならない様子で、一度も叱ったことがないと言っていました。確かに外見は、女の子のようななんともキュートな男の子でした。が、あえて言わせていただきました。

「お母さん、この子も50になったら髪が薄くなるんですよ」と。するとお母さんは悲鳴を発しました。「イヤー、みみ先生やめて〜そんなこと考えたくもない」と。無理もありませんが、さらに突っ込みを入れた私。

「もしかしたら、その時、お母さんはこの世に存在しないかもしれないですよ」。

少し意地悪だったでしょうか。でも、このように子どもに対して「猫かわいがり」の接し方をするお母さんたちには、現実と向き合ってほしいという気持ちからズバズバ言わせていただいているのです。

ただ、かわいい、かわいいだけで育ててしまっては、幾つになっても親を当てにし、自立できない人間を育ててしまいます。自立心を育てることに、もっと目を向けていただきたいと思います。

※このページは、幻冬舎ルネッサンスが刊行している『ニューヨーク発 ちゃんと日本語』の内容を一部改変して掲載しております。

 

 

皆本みみ

1952年、東京都八丈島生まれ。
79年に来米。
JETRO(日本貿易振興会)、日本語補習校勤務を経て公文式の指導者となり、シングルマザーとして2人の娘をニューヨークで育てる。
2007年『ニューヨーク発ちゃんと日本語』(幻冬舎ルネッサンス)を上梓。
現在もニューヨークで日本語の指導者として活動中。

 

 

 

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