巻頭特集

米国の大学にまつわる受験事情を!

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大学受験体験談を聞いてみよう

コロナの影響を受けつつも、大学受験を合格突破したお子さんを持つ3人の親に実体験をインタビューした。

日本人子女の米国の大学受験に関しては、「SATの総合点が1300以上ないと有名大学は難しい」「アイビー校は家族に卒業生がいないと入れない」「年間5万ドル超えるような有名私大の学費は日本人の一般家庭では負担できない」といった、根拠のない噂を耳にすることもまれにある。

確かに米国大学は、学費が高いが、ほとんどの大学生が何らかの奨学金(返済不要)を受給しているのが現実で、SATやACTを合格要件に含めない大学も増えてきた。つまり、最新の正しい情報を早めにゲットすれば、いろいろな選択肢が見えてくるし、志望校の選択も広がるはずだ。

毎年、願書提出から合格発表までの時期(11月〜3月)は受験生も親も気が気ではない心境になるが、一方で、早期に入学意思を表明するアーリーディシジョンやアーリーアクションという手段もあるので、選択肢に入れるべきだろう。

たった一回の一斉試験で合否が決まる日本の受験と違い、米国の大学受験にはさまざまなコースと攻略法がある。また上記3人の親たちの受験談にもあるように、受験を突破するには、大学のブランドだけではなく、本人の能力や性格、そして夢に見合った大学を見つけることが大切でであることがうかがえる。


豊富な活動実績で志望校合格
チェルシー在住のM・Sさん
【合格した年】 2020年春
【合格した大学】 シカゴ大学

 

 

市内有数の進学高校出身の娘さんが昨年シカゴ大学に合格したというM・Sさん。受験に関しては、お子さん任せで一切口出ししなかったそう。シカゴ大学は本人の第一志望で、無事受かったものの、年間7万ドル近い授業料がかかると知りがくぜん。「でも昨年4月になって突然、メリットスカラシップの支給が決まり、年間の授業料は1万5千ドル程度に減額でき安心しました」。突然の措置はおそらくコロナの影響では、とMさん。米国の大学入試は内申、テストの点数、論文だけでなく、高校時代に何をやっていたか、人となりが重要な選別ポイントだったという。物心ついた頃から本をたくさん読ませていたことで、高校時代はエッセー大会で優勝するほどの文章力を身に付けていたこと、幼少期から習っていたピアノコンクールに参加し、入賞実績を作ったり、気候変動研究会にも参加するなど、学業以外にさまざまな社会活動に携わってきたことがプラス要因だったと振り返る。「思いがけない学校から合格通知が届くことも。初めから諦めずにたくさん手を打っておくことも重要ですね」。


軌道修正するも結果は大成功
アッパーウェストサイド在住のM・Mさん
【合格した年】2021年春
【合格した大学】ケース・ウェスタン・リザーブ大学

 

 

高校では体育会系のラクロス部の主将を務めていたM・Mさんの息子さん。3年まで部活に全力投球し、大学進学を考え始めたのは4年になってからだったそう。11月までは、某アイビー校の早期枠中心で計画。出身高校の過去データと自己のエッセーや内申に照らして「大丈夫」と踏んでいたが、届いた通知は「不合格」。そこから速やかに軌道修正して、他州の州立大学など数校に出願したという。学校選びにはMさんも力を貸したが、最終的な決断を下したのは全て本人だった。「今年はコロナの影響で3年後期の内申評価が通常のA-D方式でなく、合/否のみのシンプルな判定だったため、第3学年の成績向上を思うように表明できず、内申で不利でした」とMさん。しかし、4月に入ると複数の大学から奨学金付きの合格通知が届く。その一つ、オハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学は息子が望んでいた「医療工学」の最先端を研究する大学だった。初期の想定とは違ったものの、迅速な判断が奏功して、結果的には良い大学に良い条件で決まった、と喜びを語る。


先へ先への行動で堅実に突破
アストリア在住のR・Tさん
【合格した年】2020年春
【合格した大学】ボストン大学

 

日本生まれの娘さんが7歳の時に、教育のことを考えてニューヨークに家族で移住したというR・Tさん。お子さんは中学時代から「毒」の研究に関心を持ち始め、高校1年の夏休みには「アメリカ自然史博物館」のリサーチプログラムにインターンとして参加していたそう。2年時には法医学部が強い学校を中心に早くからキャンパス見学し、4年生になると医学プログラムの放課後授業にも参加した。その後、進路指導の先生から全米トップクラスの法医学部があるボストン大学を勧められたことで、志望校をボストン大学、ミシガン大学、ビンガムトン校の3校に絞ったそう。ボストンは早期合格狙いだったが、まずはビンガムトン大学に合格。その後12月に本命のボストン大学からの合格通知も無事受け取った。本人もあまり期待していなかったそうで、合格を知ったときは一家で喜んだそう。Rさんは「本人の先へ先への『段取り感覚』があったのがよかったのではないでしょうか」と振り返る。「米国は女子が能力を伸ばすチャンスが山ほどあるので、早くからいろいろ挑戦させてみることが大切だと思います」。


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