車両と人の衝突事故や、路上・建物内での転倒など、「事故」にもさまざまな種類がある。今週は、米国で暮らす上で知っておきたい事故の心構えと、賠償請求までの大まかな流れを解説する。
Q. どのような案件での相談が多いですか?
A.
最も多いのは、自動車と歩行者の衝突を含む交通事故(Vehicular Accident)です。バスやバイク、自転車との接触事故もこれに該当します。けがをした場合、加害者側に対して賠償金の支払いを申し立てます。
賠償金には、治療費や休業損害(仕事を休んだことで発生する損益)、後遺障害に対する慰謝料や逸失利益などが含まれます。
一方、日本人があまり被害者意識を持たないのは、路上でのつまずきや階段での転落といった、相手のいない負傷でしょう。「自分の不注意だった」程度で済ませる人が多いですが、事故現場の土地所有責任(Premises Liability)を問うことができます。
専門家を派遣して現場を詳しく調べると、段差や割れ目があったり、階段の手すりの高さが法定以下だったりと、けがの要因を特定できることがあります。それを理由に、土地所有者・管理者を訴えるのです。
また日本に比べて発生件数が多いのが、医療ミスによる負傷・死亡のケース。米国では医療ミスは「起こりうる」認識で、患者側が病院相手に訴え出ることも珍しくありません。
Q. どの程度の負傷から相談できますか?
軽度でも、痛みを感じるなら、賠償を求めるのにふさわしいと考えていいでしょう。多くの法律事務所は、無料で相談を受け付けます。費用も、基本的には示談成立まで発生せず、成功報酬制(Contingency Fee)を取る場合がほとんどです。
Q. 歩行者として自動車事故の被害にあったら、何をすべき?
A.
まずは911に通報し、自動車事故に遭ったことを伝えて下さい。パニックになり、病院搬送をとっさに断ってしまうケースが多く見られますが、その時に何もなくても、翌日に激しい痛みを感じることがあります。また同時に警察に通報し、事故の詳細な記録(Police Report)を作成してもらいます。運転手の運転免許証番号や保険番号、車両のナンバープレート情報などは個人的にも控えておきましょう。
治療や通院を経て弁護士に相談し、その事故でこうむった損害を、相手運転手の保険会社に請求します。運転者の経済能力を理由に支払われないということはありません。仮に相手が保険未加入でも、政府保障事業によって支払いが補てんされます。
申し立てができるのには、時間的なリミットがあります。事故の発生場所や状況により変わるので、なるべく早めに弁護士に連絡することが大事です。
保険会社が電話や郵便などで直接示談を持ちかけても連絡せず、弁護士の指示をあおいでください。大抵のケースでは示談が成立し、よほど規模の大きい事故でない限り、裁判所へ出向くことはありません。
Q. 逆に、自分が運転中に事故を起こした場合はどうなりますか?
A.
事故を起こした運転手は、警察の到着まで現場にとどまる義務があります。事故後は、被害者とのやりとりは直接ではなく、保険会社や弁護士を通した間接的なものとなります。
過失割合は事故の状況により変わり、歩行者に対して車両側が不利とは、一概には言えません。過去には、現場状況から運転手の過失が認められなかったケースもありました。
Q. 目撃者がいない事故も請求できますか?
A.
市内各地に設置されている監視カメラに記録が残っている場合もありますので、諦めずに弁護士に相談してください。土地所有責任を問うケースを含め、「不当な状況は訴え出る」ことが大切です。
〈おことわり〉
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