オペラってこんなに面白い!

〈第三回〉オペラってこんなに面白い!

オペラの舞台裏と日常を、現役歌手がリアルに届ける連載。


オペラ歌手はアスリート

ご無沙汰しております。今回は「オペラってスポーツ?」というトピックで話したいと思います。実はオペラ歌手は「アスリートに似ているね」と言われることが多くあります。オペラ歌手に一番似ているのがフィギュアスケートと言われており、フィギュアスケートのように、オペラも高度なテクニックと芸術的表現の両方が求められます。

トリプルアクセルを飛び、高速スピンをこなしながら、なおかつ芸術的な表現をするように、オペラ歌手もまた高音をクリアに出し、難しいフレーズを数多く歌いながら、同時に音楽やストーリーを美しく表現します。技術面と芸術面を高いレベルでパフォーマンスするために、日々の努力とトレーニングが必要になります。

最低10年かかる「声の訓練」

前回も話した通り、オペラはマイクを使わず、大きな劇場で声を響かせて演奏しなければならないため、特別な発声法が必要です。ただ声量が大きいだけではなく、オーケストラの音の中でもよく通る独特な響きを作ることがオペラ発声の特徴です。この特別な響きは、オーケストラの隙間を通る周波数を持つため、大きな劇場でも声が通るのです。そのオペラの発声を習得するためには、毎日のトレーニングがとても大事です。喉や舌、声帯、呼吸といった身体のさまざまな要素を微調整しながら、オペラの声を作っていきます。

舞台に立てるようになるまでの声の訓練は、最低でも10年ぐらいかかると言われていて、音大を卒業したから習得できるというものではありません。美しい声の響きの探求は、一生続くのです。特に声というものは自分の耳で聞こえる音と、他人に聞こえる音では大きく違います。だからこそ、歌の先生に定期的に聞いてもらって、細かく調整していくことがとても大事になってきます。どれだけベテラン歌手になっても、レッスンに通うというのはオペラ界では常識なのです。

ハワイオペラシアター「愛の妙薬」の公演で ヨガをしながら歌うシーン

筋トレやストレッチは日課

オペラ歌手は体が楽器なため、体のメンテナンスもとても重要です。オペラ発声というのは、人間にとって元々自然なことではないので、発声をサポートする筋肉づくりも大事なトレーニングのひとつです。しっかり全身を使って声を出すためには、声に関わる筋肉のトレーニングや、柔軟性なども必要です。日々の筋トレ、そしてストレッチもオペラ歌手には欠かせません。特に、近年ではオペラの演出もミュージカルのように動きの多い現代的な演出が増えています。走り回ったり、踊ったりしながら歌わなくていけない演出もたくさんあるため、持久力をつけることも必要になります。

それに加え、普段のボーカルケアも欠かせません。消化器官と喉はつながっているので、食生活も声帯の健康と関わってきます。脂っこいものを食べすぎた後やアルコールを飲んだ後に喉に違和感を覚えたことはありませんか。胃酸が増え、逆流してしまうと、声帯を刺激して声のコンディションに影響することがあります。普段は気にならない程度の刺激や炎症でも、オペラ歌手にとっては大きな問題になってしまうことがあります。また声帯を乾燥させないように、湿度管理などもとても大事なことです。

そしてさらに必要なことはメンタル面の管理です。イメージトレーニング、緊張をどうコントロールするかなど、メンタルを整えることは、質の良いパフォーマンスをするには大事なことです。このようにアスリートと等しく体やメンタルに気を使い、日々トレーニングしているのがオペラ歌手なのです。

次回は「メンタルトレーニング、プレッシャーとどう戦っているの?」 というトピックで、さらにメンタル面について詳しくお話ししたいと思います。

 

 

<今聴きたい!おすすめクラシック作品>
3月4日に東京文化会館にて東京都交響楽団、新国立劇場合唱団そして少年少女合唱隊と初共演しました。大野和士指揮にて「春の交響曲」をテノールソロで歌わせていただき、私にとっては日本でのオーケストラデビューとなる大切な公演でした。「春の交響曲」は、ベンジャミン・ブリテンが1949年に作曲した、春を感じる素敵な楽しい作品です。ブリテン自身が指揮をしたレアな昔の録音がYouTubeで聴けますので、ぜひ鑑賞して、春を感じてみてください。

リンク:ベンジャミン・ブリテン「春の交響曲」

 

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駒形貴之/Taka Komagata

テノール歌手。東京都出身。米ロンジー音楽院大学院修了。ボストン・グローブ紙、LAタイムズ紙に歌声を称賛される。ニューヨークを拠点に北米各地でオペラ公演に出演。クラシック音楽を広める団体、「バルコニーシリーズ」を創設し活動を広げている。

Instagram: @takakomagata

HP: takakomagata.com

               

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