巻頭特集

この夏はアートを存分に満喫しよう!

大美術館の夏の展示をチェック!

マンハッタンは有名美術館が密集する世界でも有数の場所。古典の名作から現代の秀作まで、今夏の展示会を見に行こう。


メトロポリタン美術館

メトロポリタン美術館で開催中の「ピープル・カム・ファースト」は、アメリカ人アーティスト、アリス・ニール(1900-1984)の、ニューヨークの美術館では20年ぶりとなる回顧展となる。今回の展覧会では、社会正義の擁護者であり、今世紀で最も過激な画家の一人に位置付けられる作家の、長年にわたるヒューマニズムへの傾倒が彼女の人生と芸術に影響を与えたことが約100点に及ぶ絵画、ドローイング、水彩画で示されている。

 

展覧会では、ファシズムや人種差別に反対してデモを行う活動家や、大恐慌の被害者である貧困層の人々を描いた作品のほか、スパニッシュハーレムに住む人々や、さまざまな政治団体のリーダー、クィアのアーティストやパフォーマーなどのポートレートを余すことなく展示している。

またニールはニューヨークに長年住んでおり、街並や建物の日常的な美しさ、住民の多様性や情熱を物語っているのが特徴だ。同展示は8月1日まで。

1000 Fifth Ave.
一般25ドル/metmuseum.org


MOMA

現在MOMAの3階で展示されている「セザンヌ・ ドローイング」は、これまであまり紹介されることのなかったポール・セザンヌによる鉛筆や水彩で描かれた250点以上の作品や代表作を一堂に集めたもので、ドローイングがセザンヌらしい革新的で現代的なビジョンをどのように形成したかを明らかにしているという注目の展示会だ。

 

 

セザンヌのドローイングは、変形する線を探したり透明感や明るさを追求して水彩を重ねるなど、そのプロセスが目に見える形で残っている。また、同氏は台所のテーブルの上のもの、妻や息子、時計やランプなど、家庭生活を彩る身近な対象物や、お気に入りだったサント・ヴィクトワール山やうっそうとした森に出かけた時のインスピレーションから物語を描いていたというから、それらを想像しながら作品を楽しむのも醍醐味だろう。同展は9月25日まで。

また現在同館では、動く彫刻「モビール」で知られるアレクサンダー・カルダーの「マン・イーター・ウィズ・ペナント」(8月7日まで)をはじめとする作品も1階の彫刻庭園に展示されているので、合わせて鑑賞してみよう。

11 W. 53 St.
一般25ドル/moma.org


フリックマディソン

アッパーイーストサイド、セントラルパーク沿いにあるフリックコレクションは現在、本館を改修する2年間にわたり、メトロポリタン博物館が所有するメットブロイアーを「フリックマディソン」と称し、コレクションを移転展示している。

改修工事のために移転先を探していたフリックコレクションにとっては絶好のタイミングで、現代美術コレクションを収容したメットブロイアーが閉館を決定していたことで今回の一時移転が実現した。

 

 

フリックマディソンでは世界中に30数点しか現存しないフェルメールの作品のうち3点を鑑賞することができ、またベリーニ、クロディオン、ゲインズボロー、ゴヤ、ホルベイン、レンブラント、ティツィアーノ、ターナー、ベラスケス、ヴェロッキオ、ウィスラーなど、近代ヨーロッパの貴重な絵画や彫刻を、地域と時代ごとに編成し、3つのフロアにわたって展示している。

ブルームバーグ・コネクト・アプリでキュレーターが解説する最新のガイドも無料で提供されているから要チェックだ。

945 Madison Ave.
一般22ドル/frick.org


グッゲンハイム美術館

グッゲンハイム美術館では、創設者ソロモン・グッゲンハイムのめい、ペギー・グッゲンハイムがアイオワ大学スタンレー美術館に寄贈したジャクソン・ポロックの作品「壁画」を中心にした展覧会が8月30日まで行われている。

「壁画」は、ポロックがメキシコの壁画家ホセ・クレメンテ・オロスコ、ディエゴ・リベラらの作品に影響を受け、シュールレアリスムによる無意識の探求や、伝統的な絵画の概念に挑戦した作品だ。ポロックの抽象化に近づく独自のスタイルを「壁画」によって発展させている。

 

 

グッゲンハイム美術館とポロックの関係は深く、同美術館の前身である非具象絵画館の管理人をポロックに依頼していたこともあるそう。

ューヨークでは20年以上公開されておらず、今回の展示は、ゲッティ・コンサベーション・インスティチュートとロサンゼルスにあるポール・ゲッティ美術館による大掛かりな調査と修復プロジェクトを終えて実現したものとなっている。

1071 Fifth Ave.
一般25ドル/guggenheim.org


歩いて見るのはいかが?
市内のアートツアー

ブルックリン・アンプラグド・ツアー

Photo by Brooklyn Unplugged Tours

大きなビルの壁面に描かれたグラフィティーやストリートアートもニューヨークを代表するアートの一つ。そんなアートを巡るウォーキングツアーに参加するのもいいだろう。

ブルックリン・アンプラグド・ツアーではブッシュウィックを中心に、ヨーロッパ、南米、アジアからきたアーバン・アーティストたちの文化やライフスタイルに触れることができる。ツアーは2時間で32ドル。

brooklynunpluggedtours.com


ハイライン&ハドソンヤード
グループウォーキングツアー

Photo by Viator

小グループで参加できるツアー。チェルシーにある空中公園、ハイラインを中心に散策しながら、彫刻、壁画、ハドソンヤードにあるベッセルなどパブリックアート作品の数々を観賞する。所要時間は2時間、料金は25ドルから。毎週月・火・木・金に実施。詳細、申し込みはウェブサイトをチェックしてみよう。

viator.com

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1240

今年のセントパトリックデーはイル文化を探索しよう

3月17日(土)のセントパトリックデー(Saint Patrick’s Day。以下:聖パトリックデー)が近づくとニューヨークの街中が緑色の装飾で活気づく。一足先に春の芽吹きを感じさせるこの記念日は、アイルランドの血を引く人にとっては「盆暮れ」と同じくらい大事。大人も子供も大はしゃぎでパレード見物やアイリッシュパブに出かける。聖パトリックデーとアイルランド魂の真髄を紹介する。