アーティスト:阪上眞澄さん

ニューヨークで奮闘する日本人たち。その新しい発想、夢に向かって走る姿は、私たちを常に刺激する。今、輝いている新人に熱い思いを語ってもらい、また推薦者からの応援メッセージも聞く。

——元々は書道の道に進まれたそうですね?

生まれ育った奈良県は、墨と筆が伝統的な地場産業で書道のレベルが高く、私も5歳頃から書道を始めました。賞をいただくことも多かったので、自然に書の道に進みました。進学した奈良教育大学特設書道科は、書の専門家を作る国の機関で、毎日ひたすら中国や日本の古典といわれる書を書き続けました。

卒業後は高校で書道科の教員を続ける傍ら、展覧会活動を行い、日展、読売、日本書芸院などで多くの賞をいただきました。

——書道一筋で来て、アートに方向転換した理由は?

箱入り娘だったので、子供たちが中学生になるまで、奈良から出たことがなかったんです。初めて移り住んだ神戸で現代アートを見て、こんな世界があるのだと目からうろこでした。デッサンを習っているうちに、鍛錬してきた書道のテクニックを生かした現代アート作品を作るようになりました。でも銀座の画廊で初めて個展を開いた時、「書家の王道を歩いて来た人が現代アートをやるなんて」という書壇のプレッシャーを感じ、海外に行く決意を固めました。

——ニューヨークで個展を開いたいきさつは?

現代アートの勉強のためにニューヨークで美術館巡りをする準備をしている時、英語を習っていた先生から「どうせ行くなら、レジュメと作品集を作って持って行きなさい」といわれて、チェルシーのギャラリーに片っ端からメールを送りました。そこで返信のあった一つが、ウォルターギャラリーでした。すぐに話がまとまり、2014年に個展を開催。その頃から移住を考え始め、まず職に就こうと、教員募集に応募し、採用されました。

——ニューヨークに来て、作風は変わりましたか?

「幅が広がって深くなった」とよくいわれます。日本にいる時は、これはダメ、こうであるべきと、自分で制限を設けていたように思います。でもこの街に来て、美しさにはいろんな形があり、それぞれが自分のスタイルで堂々と生きている姿こそ美しいのだと思えるようになりました。

人生もっと楽しんで、表現したいことを作品にしようとしています。次から次に描きたいことがあふれて、すぐキャンバスが足りなくなってしまうんです。

——アーティストとして、最高の瞬間は?

私の作品が人の胸を打っているのを見る時。何度も足を運んでくれる人や、気に入った作品の前から離れない人と気持ちを共有できる最高の瞬間です。

——今後目指すところは?

自分の作品を通して、人が「コモン」な価値観から解放されて、楽になれれば、この上なくうれしいです。特に「美しさの価値観」を変えたいです。そして、時間の経過に耐えられる作品を作ることが最終目標。

現在、ノースセーラムのハモンド美術館で11月9日(土)まで個展を開催中です。引き続き、展覧会活動を行っていきたいです。

 

阪上眞澄さん
奈良教育大学特設書道科卒。
芸術科書道の教諭を経て、日展など多数の公募展で入賞・特選を受賞。
2017年から当地で活動。
masumisakagami.com

 

 


 

『新人の日常チェック!』
彼らは日常をどうやって過ごしているのか。仕事場、オフの姿を追う。

 

今年5月にWalter Wickiser Galleryで開催した個展でのレセプションの様子。コレクターを中心に多くの入場者でにぎわった

 

若い頃に集めた拓本(石碑などに刻まれた文字を、墨を使って紙に写し取ったもの)を時々自宅スタジオに広げ、作品作りに役立てている

 

アストリアのお気に入りのレストラン「Tell’s Taverna」で、大好きな赤ワインと魚やタコをいただく。この日は赤ワインのサングリアをチョイス

 

 

 

 

 

 

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