ニューヨークで奮闘する日本人たち。その新しい発想、夢に向かって走る姿は、私たちを常に刺激する。今、輝いている新人に熱い思いを語ってもらい、また推薦者からの応援メッセージも聞く。
——幼少期から、いろいろなジャンルのパフォーマンスをされていますね。
父親が大のミュージカル好きで、ゴールデンエイジのころのミュージカルビデオを見せられながら育ちました。親がそういった習いごとに積極的だったので、バレエ、子供ミュージカル、タップダンス、ジャズダンスなど、気付いたら週6日は習いごとをしていました。小学校の文集には、ブロードウェーで活躍するミュージカル女優になりたいと書いた気がします。
——日本の大学で声楽科に進んだ理由は?
劇団四季にはまったとき、出演者の経歴に日本の大学の声楽科が多いことに気付き、「ここに行けばミュージカル女優になれる」と(笑)。ミュージカルはダンスから入るケースが多いし、オペラならヨーロッパを目指すと思うので、私の経歴でニューヨークに来ている人は少ないと思います。
——アメリカに来て苦労したことは何でしたか?
アメリカに来た当初は、自分の「日本人気質」に悩みました。日本では「利菜は絶対アメリカが似合っているよ」と言われたのですが、来てみたら、自分は失敗を恥ずかしがる「日本人」のステレオタイプだったんです。他の生徒に置いて行かれている気がして、焦りました。でもこれは「慣れ」ですね。
——ミュージカルをしていて、一番うれしい瞬間は?
役と自分が一体化したとき。自分がいなくなって、役だけに集中できたときは気持ちいいですね! そして私のパフォーマンスを見た人から、プラス思考の反応をもらったときは、やりがいを感じます。
——経歴にある「クルーズ船のパフォーマー」とは?
とにかく色々できることをやろうと思って応募した仕事です。5カ月かけて、北欧、アメリカ大陸、カリブ海を巡るクルーズで、私は船上のキャバレーショーのシンガーでした。2日に1回、複数の演目をルーティンでこなすのは大変な反面、自由時間も多くて面白かったです。デッキの上で朝日を見ながらコーヒーを飲む、すてきな生活でした(笑)。でも、やっぱりニューヨークでダンスする生活が恋しかったですね。
——今春、ミュージカル「ギークス!」で、オフブロードウェーに戻ってきました。
今回はダンスキャプテンを担当しました。振り付けやチーム全体の動きを把握するだけかと思いきや、ブロッキング(ステージ全体の動きの指示)も任され、なかなか大変でした!
——今後の目標は?
私の憧れの女優たちが演じてきた、ミュージカル「オペラ座の怪人」のクリスティーヌ役をやってみたいですね。狭き門だからこそ、やってみたい。
私のロールモデルは、クリスティン・チェノウェス(ミュージカル「ウィキッド」グリンダ役の初演女優)。小柄だけど、どんな役もパワフルに歌いこなす彼女は、ミュージカル女優としての目標。でも私は同時に、自分の確固たるオリジナリティーを持ち続けたいです。


前嶋利菜さん
東京藝術大学大学声楽科卒業。2016年来米。
アメリカンミュージカル&ドラマアカデミー出身。
「コーラスライン」、「テンペスト」他に出演。
rinamaejima.wixsite.com/rinaweb
『新人の日常チェック!』
彼らは日常をどうやって過ごしているのか。仕事場、オフの姿を追う。

ミュージカル「ギークス!」では、アメコミ好きなオタク役を好演。恋愛モノのヒロインより、明るくはっちゃけた役が好きだという

「バイキング・オーシシャン・クルーズライン」で船上ショーに出演。シャンソンや音楽グループ「アバ」の曲目などを歌った

ユーチューブチャンネル「Hello New York」で活動中。「ロケで仲間といろんな所に行けて楽しい」と前嶋さん