巻頭特集

NY話題のビジネスパーソン vol.4

ゲーリー・森脇俊一さん&滝川玲子さん | ウィンデルズ・マークス米国生活において人生のさまざまな 場面で頼りたいプロフェッショナル
1830年創業の法律 事務所「ウィンデルズ・マ ークス・レーン・ミッテンド ルフLLP」は、古くは発 明王トーマス・エジソンや IBMなどを顧客に持つ 有名事務所として知られ ている。中でも、同事務所 のゲーリー・森脇俊一弁護 士と滝川玲子弁護士は、 遺言(Will)や、信託 (Trust)、遺産(Esta te)について日本語で相 談できる東海岸随一のキャ リアを誇る。今回はそんな 二人に話を聞き、そして老 後・帰国後に必要な準備 についてアドバイスをいた だいた。

─滝川弁護士へ質問です。

ウィンデルズ・マークスは、 どのような種類の弁護士事務所ですか? 不動産法、会社法、銀行、 有価証券法、破産、債権者権利、知的財産法、訴訟、 雇用労働法、運輸関係法、税法等を含む総合法律事務所で、ゲーリー森脇と私が所属するのは、Private Client Services. Estates & Trusts(遺言・トラスト・遺産相続・遺産法)部門です。

 

─滝川弁護士が、主に扱われている種類は?
私が主に扱うのは遺言、トラスト、遺産相続、遺産税 法で、日米の国境を超える米国所在財産の相続に関す るニューヨーク州での手続き、特に日本語での対応が強みと言えると思います。

 

─お心がけていることは?
真摯な対応と感謝です。

 

─ここ数年で増えたケースや依頼は?
日米の国境を超える米国所在財産の相続で、複雑な争点を含むケースが増えました。エステートプランニングの方では、トラストに関する問い合わせが増 えています。


─ゲーリー弁護士に質問で す。主に扱われているのは?

国際エステートプランニ ング(資産継承計画)です。日本が関わる国境を越えた問題に精通しています。


─ゲーリー弁護士、ここ数年で増えたケースや依頼は?
家族間の争いのケースが増えたかと思います。

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知っておくと便利な法律のアレコレ 

意外と知らない「FBAR」とは 老後・帰国後の備えは大丈夫?
老後・帰国後に必要な準備とは?

そんな二人が在住日本人に気 を付けてほしいという制度に、 FBAR(Foreign BankAccount Reporting:外国金融口座の報告) というものがある。「米国市民または 米国永住権保持者で、米国外に1万 ドル以上の金融口座を保有している人に、最高額の開示を義務付けるの がFBARです」と森脇弁護士。

滝川弁護士も、「米国外資産を保有する 依頼者の事情に詳しくない税理士 の場合、処理がなされないこともあ るようです」と懸念を示す。FBARで注意したいのは、「その1 年の内のどこかで、国外金融口座の残高が1万ドルを超えた場合」に「申 告」が必要であるという点。年末には ゼロであったとしても、年内に1回で もその金額に達したのなら手続きを 踏まなくてはならない。

また「申告」するだけで、支払いは発生しないという点も誤解しないように。通常の締め切りは4月15日だが、最大10月までの延長措置が用意されている。なおFBARとは別に、確定申告(タッ クスリターン)の一部として、8938 という書式を使って行う「特定海 外金融資産申告」というものもある。 「FBARと似ているようですが、要件、対象資産、報告省庁が異なるので、税理士とよく相談して行ってほしいです」(森脇弁護士)

 

老後・帰国後の備えは大丈夫?

もう一つ、在住日本人と切っても 切り離せないトピックが、永久帰国後の米国内資産の相続だ。「米国に長く住んでいて、資産を保有している人は、永久帰国後もその処遇に注 意する必要があります」と滝川弁護士。「数十年前に比較的安価で購入したアパートを放置した人が、日本 に永久帰国して亡くなり、相続の書 類も遺産管理者の指定もなし。相続の書類があったとしても状況の変化 に即して修正されていないと、日本 にいる遺族が途方に暮れるというケ ースも珍しくありません」。

被相続者が亡くなった後、遺産分割協議書で 相続が進む日本に対し、米国では個 人の残す遺言(Will)が重要となる。 森脇弁護士によると、故人が相続の 関連書類を一切準備していなかっ た場合、資産は裁判所を通した遺産 管理状手続き(遺言がある場合はプ ロベート)に入る。米国では遺言を 用意する代わりに、資産の全てを信 託に入れて管理するという手段も一 般的だ。
また、資産の有無にかかわ らず、自身で意思決定が困難になっ た際の医療・財政代理人を公式に任 命しておくことも忘れずに。

米国では、本人からの委任がない限り、たとえ親であっても第三者に 医療情報は公開されない。「通常は 米国に住む近しい人で、かつ英語が 話せる人が望ましいですが、そうい った人が誰もいない場合もあります」と森脇弁護士は指摘する。

「信頼 が置けるのであれば友人、隣人でも問題ありません」。これらの法的手続 きは、若い人でも不慮の事故などで 身に降り掛かる恐れがあるため、今 から弁護士に相談を。

2020年8月14日(NYジャピオン別冊/ニューヨークに住む Vol.3)から一部引用

 


ゲーリー・ 森脇俊一弁護士

コロンビア大学を経て、 ブルックリン・ロースクール法学修士。相続や信託など遺産運用の分野 で45年以上のキャリアを持つ。ニューヨーク日系人会の運営にも携わり、 同会員の日本人在住者 からの法律相談にも応じてきた。平成30年に旭日小綬章を受賞上智大学外国語学部・ 法学部国際関係法学科 を経て、ニューヨーク大 学ロースクール法学修士。日本の法律事務所および企業での勤務経験も豊富。相続法の他に、移民・国籍法にもネ ットワークがある。また法律・会社・金融関連の日英翻訳も行っている



滝川玲子弁護士

上智大学外国語学部・ 法学部国際関係法学科を経て、ニューヨーク大学ロースクール法学修 士。日本の法律事務所および企業での勤務経 験も豊富。相続法の他 に、移民・国籍法にもネ ットワークがある。また法 律・会社・金融関連の日英翻訳も行っている

ウインデルズ・マークス・ レーン・アンド・ミッテンドルフ
Windels Marx Lane & Mittendorf, LLP
156 W. 56th St.
TEL: 212-237-1000
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