巻頭特集

健康意識が高まる今、大切な医療保険について改めておさらいしよう

団体向け保険もチェック

企業に勤めている人がおのずと加入することになるのが団体医療保険だ。企業側はどのような点に気をつけて団体医療保険を選べばよいのか、プロに聞いてみた。


ファイナンシャルプランナーによる医療保険選び講座

企業において、医療保険にまつわるコスト削減は、トップをはじめ、会社の福利厚生を担当する人事・総務担当者にとって大きな課題である。そんな医療保険を導入する際のポイントを、ファイナンシャルプランナーの浅井早苗さんに教えてもらった。

Q. 医療保険のコスト管理をする上で覚えておきたい点は?

A.

企業のファイナンシャルプランニングという観点において、医療保険のコスト管理は一番土台になる部分に当たります。ここをしっかり構築しておくことで、安定した資金運用につながってきます。

ただし、年々保険料は7〜10%ほど上昇していることから、各企業の予算を考えると、ベネフィット内容を落としてでも保険料のコストを抑えていくことが必要になってくるでしょう。その際、目先の保険料が安いというだけで安易に決めてしまうと、「実はディダクタブルや自己負担額が異常に高かった」なんてことも。企業・社員による自己負担の部分も見落とさないようにプラン内容をしっかり精査することが重要です。

Q. 医療保険会社を選ぶ時のポイントを教えてください。

A.

数ある保険会社の中から選択する際、コスト削減はもちろんですが、従業員にとって最も使い勝手の良いものを選ぶという視点も大切です。

各社の違いとしてはコスト、プラン内容の他に、ネットワークの広さがあります。もしニューヨーク州以外にもオフィスを構えていたり、コロナ禍の在宅勤務普及により州外に在住している社員がいるという場合などは、ある程度大きなネットワークを持つ保険会社を選ぶことが大切です。オバマケアが開始してからは新しいプロバイダーも多数出てきています。医療保険の見直しをする際は、どのエリアに強い保険会社なのかを確認するようにしましょう。

Q.  その他に、人事・総務が留意すべき点は?

A.

人事・総務の担当者の方が実は駐在員で米国に赴任されてきたばかりというケースも少なくありません。日本と米国の医療保険のシステムは大きく異なります。長年暮らすローカルの従業員の方が現地の保険事情に詳しいなんてことも大いにあるので、社員の意見を柔軟に取り入れることは重要です。また最近はコロナ禍によりリモートヘルスサービスなども注目されています。従業員のニーズを十分に理解してベネフィットの大きい保険を選択できることが企業にとって大切といえるでしょう。

 

 

浅井早苗さん

日米の金融業界に22年従事。
ニューヨークを拠点に法人および個人に向けた保険、年金、投資など幅広い金融商品のコンサルタントを務める。
教育機関、企業、協会などでファイナンシャル教育セミナーも行い、最新のファイナンシャル情報を提供。
ウェストチェスター在住。問い合わせは以下から。
newyorklife.com/agent/sasai


保険会社リスト

団体保険を提供している大手保険会社をピックアップ。医療保険会社選びの際に参考にしよう。

米国日本生命

米国で医療保険を提供している唯一の日系生命保険会社「ニッセイ」。他社にはない日本語や英語などでの丁寧できめ細かいカスタマーサービスが強みで、日系企業にとっては頼もしい存在だ。医療保険、歯科保険、視力矯正保険などに加え、健康増進プログラムも提供。個人向け医療保険はなく、団体保険のみを扱っている。

nipponlifebenefits.com


ユナイテッドヘルスケア

オックスフォード・ヘルス・プランを擁する米国最大手の医療保険会社。最近はデジタルヘルス系のスタートアップ企業を次々買収し、デジタルヘルスサービスを強化。130万人の医師、6000以上の病院という強大なネットワークを持つのが魅力。100人以下の中小企業から3000人までの大企業などに向けた幅広いプランを用意する。

uhc.com


アンセム

ニューヨーク州の「エンパイア・ブルークロス・ブルーシールド」をはじめ、信頼度が高い「ブルー・クロス・ブルー・シールド」ブランドを数多くライセンス展開するユナイテッドヘルスケアに並ぶ大手グループだ。全米にわたる広いネットワークを持ち、スタートアップ企業にも加入しやすい幅広いプランを用意。公的医療保険プランも提供。

anthem.com


エトナ

2018年にCVSが買収した大手保険会社。個人に提供するマーケットプレイスからは撤退したが、スモールビジネスから大企業向けの団体保険を各種提供している。テクノロジーの導入にも力を入れ、アップルウォッチと連携した健康アプリをアップルと開発、保険加入者に提供するなど次世代のヘルスサービスでも話題を集める。

aetna.com


ヒューマナ

薬剤給付管理会社エンクララを傘下に置き、高齢者向け医療ビジネスに力を入れる保険会社。在宅慢性疾患ケア、処方箋の郵便配達など独自のサービスが人気の理由だ。企業向け団体保険では、従業員のニーズに合わせた柔軟なプランや手頃な各種プランで顧客の支持を得ている。

humana.com


ヘルスファースト

ニューヨーク州を拠点とする医療保険会社。市内、ロングアイランド、ウェストチェスターなど幅広くネットワークを持つ。主に公的医療保険プランを中心に提供するが、スモールビジネス向けプランも各種用意。健康診断、歯科・眼科、妊婦ケアを含む、低コストで充実のベネフィットが人気だ。

healthfirst.org


愛するペットの保険もお忘れなく!

ここニューヨークでは、人間だけでなくペットの医療費も高い。いざペットが病気やけがをしてしまった時に備えて、以下のペット保険に入っておけば安心だ。

犬猫のためのペット保険大手

トゥルーパニオン Trupanion

医療費のカバーに上限額がなく、その90%を返金してくれるという明朗会計でシンプルなプランが人気。ただし、年度初めの診察にはディダクタブルを支払う必要がある。保険会社からの返金を待たずとも獣医への直接支払いが可能で、面倒な請求書のやりとりの手間が省けるのもうれしい点だ。14歳以下の犬猫が加入対象となっている。

trupanion.com


ヘルシーパウズ Healthy Paws

動物の種類や年齢によっても異なるが、月々15〜90ドルと比較的低価格の保険料で手術や入院までの医療費をカバーしてくれる保険。請求額上限は無制限で、不慮の事故や病気による治療費を対象としている。ちなみに多頭割引はしていないので、複数のペットを飼っている場合はそれぞれの保険料が発生する。

healthypawspetinsurance.com

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