木を見て、森を見て、木として考えるコラム

<第29回> 気候週間に、地球に存在す る不公平とこれからについて考える

日差しと暑さが和らぎ、日の入りが急に早くなる…そんな夏の終わりを感じる頃、毎年やってくるものがある──気候週間(Climate Week)だ。

気候週間は、9月後半に世界の首脳がニューヨーク国連本部ビルに集まる国連総会のタイミングに実施され、各環境団体や市民団体などが手を取り合い、気候危機に関するさまざまなイベントを企画する。また、世界各都市と連動したグローバル気候マーチもあり、ニューヨークでは参加者たちが国連ビルを目指して街を練り歩く。昨年はこの街の7万5千人がマーチを歩いたそうだ。

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個人の小さな声を大きく響かせるために

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気候危機に懸念を抱いている個人はきっと多くいるだろう。少しでも環境負荷を減らせないかと探していくと、アイデアや工夫は生活の中にもたくさん見つかる。例えば再生可能エネルギーへの変更や、モノの再利用やリサイクルを通したゴミ削減などを実践している読者も多いと思う。しかしながら、それらはどれも重要である一方で、「地球沸騰化の時代」と言われる今まさに「焼け石に水」に過ぎないかもしれない。

ゆえに、気候週間やグローバル気候マーチは、持続可能な社会への公平で速やかな移行に注目することを特に強調する。具体的な行動としては、化石燃料企業に対して持続可能な事業への切り替えを訴え、そして化石燃料への投資を続ける金融機関をはじめとした各企業にも転換を求める。化石燃料から利益を得ているこういった企業に向けた、環境インパクトの透明性ある開示の要求も重要だ。くわえて、国連総会でニューヨークに滞在する各国首脳に対して、国家として強固な環境政策を促すことも主要な目的である。

小さな存在である市民たちが集まり、具体的で迅速な変革にしっかり目を向けて、訴えの声を戦略的に大きくする。気候週間は、その声を街の中だけでなく国境を超えて響かせられる貴重な機会。さらに、このムーブメントの中心には若者も多い。気候変動が進行中である今、企業や国家に対する要求は長い未来を見据える若い世代にとって特に切実であろう。若者ではない世代も、それと響き合っていくべきである。

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気候変動から受ける影響には差がある

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昨年7月にこのコラムでも触れたように、気候変動の影響が特に甚大であるのはMAPAだという点も、私たちは理解しなくてはいけない。MAPAはMost Affected People and Areasの頭文字で、「温室効果ガス排出など気候変動深刻化の責任は軽いにもかかわらず、最も大きな影響を受ける人々や国・地域」を指す。この歪みを認識し、気候正義を広く深く理解する必要性が高まっている。

ではこの歪みはどうして生まれてしまうのか。例えばこの街一つとっても、責任の重さと実際に受ける被害に歪みが生じる不公平がある。経済状況や人種・民族などの違いがエリアごとに顕著なニューヨークに住んでいると、ハリケーンや大雨、洪水、大雪といった気候変動の影響を受けた際、被害の大きさやその後の修復・復旧に差があることに気づくだろう。そのほかにもジェンダーやセクシュアリティーにおけるマイノリティー、障害者、子供や高齢者などは、気候危機によって受ける被害が一般的に深刻になりやすい。

これは地理的な要因だけでなく、「強い者」や「持つ者」と「弱い者」や「持たざる者」に分かれる構造によるもの。私たちが住む街の中でだけでも確認できるそういった構造を、今度は地球規模ならではの差に注目して見てみると、植民地主義やグローバル資本主義などに起因する世界での不公正も明らかになる。

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連帯し、一人一人の行動を最大のものに

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持続可能な未来を築くために、連帯を強化しよう…! 今月は、職場・学校・近所の人たちと気候危機について会話する絶好のタイミング。

深い学びと効果的な行動を身近にしてくれるイベントに声を掛け合って参加し、皆で未来について考えるきっかけにしてみてはいかがだろうか。

 

COOKIEHEAD

東京出身、2013年よりニューヨーク在住。ファッション業界で働くかたわら、市井のひととして、「木を見て森を見ず」になりがちなことを考え、文章を綴る。ブルックリンの自宅にて保護猫の隣で本を読む時間が、もっとも幸せ。
ウェブサイト: thelittlewhim.com
インスタグラム: @thelittlewhim

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