巻頭特集

フェリーに乗って行く週末のプチお出掛け~スタテン島編~

各国出身のおばあちゃんが腕を振るう
エノテカマリア

ミシュランや英国放送協会BBCなど世界中のメディアが注目。スタテン島探索の仕上げは、本格的イタリアンと各国料理が味わえるこの店で!


厨房を仕切るのはプロの料理人ではなく、市内5区からやって来る50歳以上のノンナ(イタリア語でおばあちゃんの意味)たち。「酸いも甘いも噛み分けた」人生の達人が腕を振るう各国の家庭料理が味わえるレストラン、それが「エノテカマリア」だ。

埼玉県出身の小松平ゆみさんのキュウリとわかめのサラダ(18ドル)。小松平さんが作るズッキーニの田楽やギョーザは「売り切れ御免」の人気メニューだ

イタリア系移民が多く住んでいたブルックリン区バスビーチ出身のジョー・スカラベッラさんが、祖母や母親など家族を相次いで亡くした喪失感から立ち上がろうと2007年に創業。両親が共働きだったため、祖母ドミニカさんに育てられたというジョーさんが「ノンナの味」をメニューに据えたのは必然だったが、料理人を雇わずにノンナに任せ、正真正銘のノンナの味を再現したのは、慧(けい)眼たるところ。

下の写真は、地中海沿岸のエジプト・アレキサンドリア出身のサハールさん(写真上)によるタジンスッペ(30ドル)。トマトスープで煮込だイカをライスにかけていただく

「イタリア各家庭に代々伝わる味を気軽に楽しめる」として店は大繁盛。メディアの取材は引きも切らず、スタテン島いちの人気店となった。

7年前にはコンセプトをさらに進化させ、世界各国にルーツを持つノンナによるプロジェクト「ノンナズ・オブ・ザ・ワールド」を開始した。日本、韓国、ペルー、インド、アルゼンチン、フランス、バングラデシュ、ベネズエラ、ポーランド、ギリシャ、トルコ、ドミニカ共和国、チェコ、ベラルーシ、パキスタン、エジプトなど、これまで100人以上のノンナがジョーさんの店でお国料理を振る舞ってきた。

イタリア庶民の料理、カプッツェル(ヒツジの頭のオーブン焼き、36ドル)。下の写真は、「わざわざブロンクスとブルックリンからこれを食べに来た」という4人組だ

中には、ルイジアナ州からコンテナいっぱいのクロウフィッシュ(ザリガニ)を持ってやって来たノンナもいて、「ノンナの輪」は州外にも拡大中だ。

写真左から「政治やパンデミックで分断した人たちを、食を通じてつなげていきたい」と話すジョーさん、サハールさん、マネージャーのパウラさん、小松平さん

 

Enoteca Maria
27 Hyatt St., Staten Island, NY 10301
➡︎フェリー乗り場から自転車で3分、徒歩で7分。セントジョージ劇場の隣。支払いはキャッシュのみ。
営業時間: 金〜日曜、午後1時〜8時30分
TEL: 718-447-2777
enotecamaria.com


スタテン島のトリビア

魅力いっぱいのスタテン島。歴史を知れば、島の探索がもっと楽しくなる!

◉ 先住民が島をオランダ人に売却したのは1657年。シャツ10枚、ストッキング30足、銃10丁、弾丸用の鉛30本、火薬30ポンド、コート12着、ダッフルコート用のボタン2枚、やかん30個、手おの30丁、鍬20丁などと交換された。
◉ 1776~83年までの7年間、イギリスが島を占領していた。
◉ 2001年に閉鎖されたフレッシュキルズは、世界最大のゴミ処理場だった。
◉ ベラザノ橋の鋼鉄ケーブルは季節によって収縮と拡張する。2階建ての車道は冬より夏の方が12フィート低くなる。
◉ サウスビーチの沖合には2つの人工の島(ホフマン島とスインバーン島)がある。
◉ 西部開拓史時代のガンマン、「バッファロービル」ことウィリアム・フレデリック・コーディーと「アニーよ銃をとれ」のモデルとなったアニー・オークリーも島に住んでいた。
◉ エリザベス女王は1957年10月21日、夫の故フィリップ殿下と共にステープルトンからセントジョージまでパレードした。
◉ 1972年公開の映画「ゴッドファーザー」でアル・パチーノ演じるマイケル・コルレオーネが住んでいたのは、トッドヒル地区にあるチューダー様式の邸宅。2019年に137万ドルで売りに出された。

               

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