巻頭特集

NYC新市長が誕生!エリック・アダムス氏を解剖

アダムス新市長の公約とは?

新市長に期待いっぱいのニューヨーク市民。まずはアダムス新市長について知ろう。

※出典/Eric Adams公式ホームページより

民主党の牙城ニューヨーク市とはいえ、政治への関心の高いアメリカでは新市長の公約に対して多くの人が注目をしている。前頁の時事通信、山越記者のコメントにもあったように、アダムス氏の公約は具体性に欠け、強いメッセージがあるわけではない。ただ新型コロナウイルスで大打撃を受けた全米最大都市を復活させるという重大な責任はある。

治安の悪化やアジアンヘイトに代表される人種差別問題は以前よりも明らかに増え、保険や教育など、パンデミックによって格差社会の歪みが浮き彫りになっているのは事実だ。また、ワクチン接種による市民の分断も起きている。ニューヨーク市が市の職員にワクチン接種を義務化し、従わない職員は無給休暇にするという処置を発表したことで一部職員がボイコットを行った。

ワクチン接種率の鈍化や社会的混乱など、ニューヨーク市での出来事は全米に影響を与えることもあり、それだけパンデミックからの回復がアダムス氏の腕の見せどころとなりそうだ。


★★★アダムス新市長の公約を見てみよう★★★

1. Government

ニューヨークには莫大なリソースがあります。しかし、それらを無駄に使い、市民に対して十分に供給できていないのが現状です。私たちは次のような視点を大事にしながら、市を運営していきます。

•効率
•有効性
•平等


2. Economy

今こそ、すべてのニューヨーカーのために機能する新しい経済を実現するときです。正しい方法で市の経済が回復するためには、リソースを最大限に活用し、規制権限を使って経済的・社会的な構造問題を解決しなければなりません。今こそ、これらの方法でニューヨークのビジネスを復活させるべきです。

•スタートアップ企業や新規投資を誘致する
•新興企業や新しい投資を誘致し、働く人々を支援する
•中小企業を支援する
•市全体の職業訓練と職業紹介のプログラムを新たなレベルで開発する


3. Healthcare

新型コロナウイルスは、医療機関同士の連携不足による非効率性が不公平な社会を生み、どれだけの命を奪うかを私たちに教えました。ニューヨークは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えられたからといって、より健康的な都市を目指すことをやめてはいけません。私たちは次の方法で健康と福祉の向上を目指していきます。

•人種間の健康格差をなくす
•市全体で統一された病院ネットワークを形成する
•予防医療の充実と健康的な生活習慣の指導
•薬物乱用クリニックの場所を再検討する


4. Safety

私たちの街ニューヨークは今、これまでの犯罪対策を無駄にしてしまうような危機的状況にあります。この街はニューヨーカー、特に子供たちにとって安全な場所でなければなりません。

私たちの安全を守るために、NYPDが必要です。そして公正で安全な司法への取り組みを支持しなければなりません。

犯罪の追跡、データの分析、そして優れた警察の活動が重要です。私たちはこの困難な状況を克服し、ニューヨーク市の近隣地域を安全にします。


5. Education

私たちは、教育システムを全面的に見直す局面にいます。私たちは、生徒や保護者に必要なものを、教室の中でも外でも提供しなければなりません。

そのために、私たちは以下のことを行います。

•子供全体を対象としたアプローチ
•夏休みの学習方法を拡大する
•高校での職業訓練を増やす
•世界で最も優れた遠隔学習環境を構築する


6. Housing

私たちの未来は、これからの新しい住宅計画にかかっています。住民の居住地や仕事場の選択肢を増やすことで、良い方向へと向かっていく柔軟性が高まるでしょう。

基本的な住宅のニーズを満たすだけでなく、老朽化した建物から入居者を救うための包括的なアプローチにも早急に取り組んでいきます。


エリック・アダムス新市長ってどんな人?

元ニューヨーク市警、ブルックリン区長、デイビッド・ディンキンス氏に次ぐ黒人市長として注目されているが、今までの経歴をひもといてみよう。

● ブルックリンのブラウンズ
ビルにて誕生

1960年9月1日、ブルックリンにて誕生。6人兄弟で、ハウスクリーナーのシングルマザーに育てられ、貧しい幼少期を送った。

Photo by Eric Adams’ official

● ニューヨーク市警に入局

15歳の時に不法侵入で逮捕され、勾留中に警官から殴打される。少年院に送られ、心的外傷後ストレス障害に苦しんだことなどが、のちに警察機関で働くきっかけとなった。

その後ニューヨーク市警に入局し、警察を内部から変えることを決意。アフリカ系アメリカ人とNYPD間の正当な行いを提唱するグループ「100 Blacks in Law Enforcement Who Care」を創設。1980年代から90年代にかけて犯罪が多発していた時代に、防弾チョッキを着て街を取り締まるなど、積極的に行動を起こした。

Photo by Eric Adams’ official

● 警察官から上院議員へ

ニューヨーク市警を退職後、州議会上院に移り、ブルックリン区を中心に活動。上院の国土安全保障委員会では、有色人種として初めて委員長を務める。

Photo by Eric Adams’ official

● ブルックリン区長に選出

2013年に黒人初のブルックリン区長となる。米国最大級の区の代表として、地域経済の成長、学校への投資、格差の是正、治安の改善、スマートな政策とより良い政府の実現のために、精力的に活動。パンデミックの際はエッセンシャルワーカーや社会的弱者に食事などの供給を行った。

Photo by @Eric Adams (Facebook)

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