巻頭特集

アメリカにおける黒人差別の知識を深める

全米をはじめ、世界中で「Black Lives Matter(黒人の命は大切=BLM)」の運動が起こっている。人種差別が根強く残るアメリカにおいて、今後このような事件を起こさないために、一連の問題を紐解いて、理解を深めてみる。(文/菅礼子)


6月半ば頃までニューヨーク各地をはじめ、全米50の州全てで行われている講義デモも、沈静化の一途を辿っている。しかしアメリカで起こる人種差別問題がメインストリームとして扱われるようになったという点では、今回のムーブメントで、大きな時代の変化のスタート地点に立ったと言っても過言ではない。

アジア人もアメリカでは人種的マイノリティーとみなされる。在米日本人読者に支えられている弊紙としても、今回の人種差別問題に対峙し、理解を深めていく必要があるだろう。

400年に及ぶ差別の壁

アメリカでの奴隷に関する歴史は、イギリス植民地でもあった1619年にさかのぼる。バージニア植民地に初めてアフリカからの奴隷が、船に乗ってアメリカ大陸に上陸。1865年にアメリカ合衆国憲法修正第13条により奴隷制度が廃止されるまで、実に約250年間、奴隷制度が続いたことになる。

その後、人種分離(Racial Segregation)時代に突入。白人用のトイレや水飲み場を黒人が使用することは許されず、有名なモンゴメリー・バス・ボイコット事件では、白人に席を譲らなかった黒人のローザ・パークス氏が逮捕され、公民権運動のきっかけになった。

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師などを中心に進められてきた公民権運動により、1964年に人種差別を禁じる公民権法が成立したが、現在に至るまで、黒人に対する差別は根深く残っている。

 

BLM運動の発展

BLMの始まりは2012年、フロリダ州サンフォードで当時17歳だった黒人のトレイヴォン・マーティン氏が、自警団員の男性に射殺されたこと。

また14年に同じく警官に押さえつけられて死亡した黒人男性エリック・ガーナー氏は、警官に取り押さえられている時、「I can’t breathe(息ができない)」という言葉を放ち、注目を集めた。これはジョージ・フロイド氏も発した言葉だ。

他にも今年2月、強盗犯と間違われたアーモー・アーバリー氏が白人親子に射殺された他、3月にはブリオンナ・テーラー氏が家に押し入ってきた警官に射殺された。この警官は家宅捜索用の間違った家の住所を持っていたことが判明している。現代においても、無実の黒人たちが殺害されるという、人種差別のステレオタイプが原因であろう事件が後を立たない。

コロナ禍のアジア人差別

島国日本は単一民族に近い形で国家が形成されていて、アメリカで起こっているような人種差別が表面化しにくい。アメリカにおいてもアジア系はマイノリティーだが、黒人対白人という図式が表面化しやすい。

しかし、今年に入ってから猛威をふるっている新型コロナウイルスによって、アジア人も人種差別の対象になったことは記憶に新しい。中国・武漢から広がったウイルスは、アジア人というだけで保菌者と思われ、街中でアジア人が襲撃されたという事件も多い。人種差別が人ごとではないと思わされ、不快感を隠しきれない人も多いだろう。

とりわけ人種のるつぼであるニューヨークやその近郊に住む者として、人種差別への理解を深め、どういった形で社会貢献することができるのかを考えたい。

 

全米でBLM抗議運動が活発化。暴動にばかり目が向けられていたが、平和的な行進も多くあった Photo by Life Matters/ Pixabay

 


2020年BLMは
こうして起こった

3月〜

新型コロナウイルスが猛威をふるったニューヨーク州の死者数は約2万5000人(7月1日現在)にのぼっているが、貧困層で暮らす黒人も多く亡くなった。人種差別、社会的格差が浮き彫りとなる。

5月25日

セントラルパークでバードウォッチングをしていた黒人男性クリスチャン・クーパー氏が、犬をリードにつなぐようにと、白人女性エーミー・クーパー氏を注意したところ、クーパー氏が「黒人男性が私の命を脅威にさらしている」と警察に通報。人種差別との批判が殺到した。彼女はその後、勤務先を解雇され、7月7日に検察が起訴することを発表。

5月25日

ミネソタ州ミネアポリスでジョージ・フロイド氏が、警察官に尋問を受けた際、頸(けい)部を膝で8分46秒間押さえ付けられ窒息死した。

 

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