古くて新しい、とっておきのブルックリンへ

元一風堂の調理長が新店オープン (古くて新しい、とっておきのブルックリンへ 054)

ブルックリンのガイドブックの著者、安部かすみが、本で書ききれなかったことや、お気に入りスポットを紹介します。「大切な友人に紹介するとしたら?」という目線で選んだとっておき。今週はキャロルガーデンズにある「唐獅子牡丹」です。


元一風堂の調理長が新店オープン

2019年の年末、何度か取材でお世話になっている一風堂のラーメンマスター、鐘ヶ江文浩さんに偶然会いました。「夏に退職し、今度自分の店を持つんです」と、うれしいニュース。それが「唐獅子牡丹」です。

長期熟成の骨を使用

鐘ヶ江さんはラーメン作りのアーティストのような存在です。リンゴ、レモン、熟成骨……。彼の手にかかると、どんな食材もラーメンに様変わり。

1999年に博多の一風堂に入社し、ニューヨーク店オープン前年(2007年)に来米。以来、一風堂は当地で空前のラーメンブームを起こし、常に本格的かつ斬新なメニューで人々を驚かせてきました。在職中に開発したラーメンは600種以上、麺は3000種にも上るそう。

「入社20年の節目に大きな看板から離れ、自分の店で『自分のラーメン』を作りたくなりました」。2月27日にオープンしたこの店の奥の厨房では、各種ラーメンと居酒屋フードが作られています。

Chef Special Iron-Men」は香り高い豚骨臭がスッと鼻孔を抜けます。豚骨ベースとは思えないクリアなスープで、熟成ステーキからヒントを得たという16カ月熟成の豚のゲン骨、オックステイル、チキンなどが使われています。

「熟成骨はうま味成分がたっぷり含まれ、ブロスに深みを出してくれるため、うちのラーメンは100%無化調です」

 

「Chef Special Iron-Men」(16ドル)。1日限定200食(スープがなくなり次第、その日の営業は終了)

 

テーブルとカウンターで全18席

 

世界に一つのラーメン

他にも、レモンを使った「Ti Amo」(14ドル)など、現存するどんなジャンルにも属さない一風変わったラーメンも。今後カプチーノマシーンを使ったラーメンも発売予定とか。

「斬新なアイデアを盗用される可能性について思うことは?」と尋ねると、面白い答えが返ってきました。

「逆にそうであってほしい。ステーキがアメリカから広がっていったように、新しいラーメンもここから世界に広がっていけば最高です。ラーメンが今後生き残っていくために」

このニューヨークスタイルの新ラーメンがいつか、日本に逆輸入される日が来るかもしれません!

髄は通常白色だが、熟成してピンク色に。うま味成分がたっぷりの豚のゲン骨

 

鐘ヶ江文浩(ふみひろ)シェフ

 

 

All photos by Kasumi Abe

 

 

 

 

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