共感マーケティング

第235回 個人発信の時代

〝共感〟をキーワードに独自のマーケティング理論を展開するブランディングコンサルタント・阪本啓一の「マーケティング力アップ講座」。


インターネットが個人と個人をダイレクトにつなぎ、「つながりっぱなし」の社会になって、大企業が牛耳っていた経済が個人や中小企業が中心になる…。

20年前、ニューヨークで起業したときに思い描いたビジョンです。

小の時代

スマホとSNSの登場で、この流れが加速しました。もちろんGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)は大企業ですが、しかし、経済の根っこの面白い潮流は、個人や小さな会社が起点になっています。

私はこれを「小の時代」と呼んでいます。SNS一つ取ってみても、「小」(個人や中小企業)は簡単に今すぐ始められ、友達を増やせます。しかし、大企業、特に著名企業に勤務している人は、やれコンプライアンスだの公私の別だのと、ぬらりくらり言い訳ばかりして、決して手を出そうとしません。

すると今の時代、一番大事な発信力を、個人の技として身に付ける機会を失うのです。定年退職後どうするのでしょう。組織の寿命は昔ほど長くはありません。人間の寿命の方がはるかに長いというのに、大会社の看板がなくなった後、どうやって稼ぐつもりなのか。

知人はネットで花屋をやっているのですが、この1年かけて、ユーチューブチャンネルをコツコツやってきました。テーマは「お花初心者向けのノウハウ」。結果、チャンネル登録者数1万人を超え、チャンネル登録と再生回数を増やす方法をまとめました。これは売れるノウハウです。

彼のチャンネルの視聴者が子供と65歳以上の高齢者だけというのも、データでつかめました。このデータは発信内容にも活かせます。彼は2020年のうちに登録者数を3万人にして、広告収入がこれだけ入って…と計画を立てています。確実な未来です。

ノー発信、ノービジネス

この話でも分かるように、今の時代、発信しなればビジネスは生まれません。私は2018年11月11日から、フェイスブックのプライベートグループ(「Team Rock being」、515人います)で毎日、ロック日記を書いています。

読者に「あそこに行けば阪本に会える」という脳内ポジションを確保するためです。大みそかも元旦も、お盆もなく、えんえん続け、本日(1月12日)で428日。428日毎日書いたら、何よりまず、自分に自信がつきます。

発信しなければ売れない

「いい商品を作ったから売れるだろう」というのは幻想です。発信しなければ知ってもらえません。

発信のための行動を三つ挙げておきます。

①「〇〇なら**さん」の「○○なら」を、ぼんやりでもいいから決める

②ネタを普段からメモする習慣をつける

③ヘタでも何でもいいから、とにかく毎日続ける

発信し始めたら、とにかく継続することです。継続を目標にしてもいいくらい。私は1995年にメルマガを発行し、2009年頃までずっと週刊で続けました。メルマガが、独立のためのドアとなる出会いを導いてくれました。現在はメールというメディアは死んでしまったので、SNSを発信媒体にしています。

発信しましょう! 個人発信の時代です。

今週の教訓
とにかく発信!

阪本啓一
ブランディングコンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。
2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。
06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役社長。
地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。
「ブランド・ジーン〜繁盛をもたらす遺伝子」(日経BP社)などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp



読めばわかるこの一冊

齋藤孝の仏教入門
齋藤孝・著

「『慈悲』とは他人に利をもたらし、苦を取り除くこと」(本文より引用)

 

宗教としての仏教というより、ストレスとの付き合い方、嫉妬の消し方、落ち込みのくぐり抜け方といった、「心の技」としての仏教。

日本人の生活習慣の中には驚くほど、仏教のものの見方・考え方が入っています。私は毎朝、仏壇に般若心経を唱えるのが習慣ですが、これはニューヨーク在住時代に始めたもので、早20年になります。

唯一絶対の神ではなく、あくまで1人の人間だったブッダ。「この世は苦である」から始まる彼の思想は、ニューヨークで奮闘する皆さんの肩の荷を降ろしてくれるはずです。

「悟り」よりも「何をすべきか」、「好ましい言葉」だけを使う、いつも心に「塞翁(さいおう)」を…。具体的な技が満載されています。

トイレに常備し、毎朝1ページ読むのもいいかも。

 

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1245

春到来! 週末のプチお出かけ 〜ハドソン川流域・キャッツキル山麓編〜

桜の花も満開を迎え春の行楽シーズンがやって来た。ニューヨーク市内から日帰りできるハドソン川流域・キャッツキル山麓の人気のスポットを紹介しよう。

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。

Vol. 1243

お引越し

新年度スタートの今頃から初夏にかけては帰国や転勤、子供の独立などさまざまな引越しが街中で繰り広げられる。一方で、米国での引越しには、遅延、破損などトラブルがつきもの、とも言われる。話題の米系業者への独占取材をはじめ、安心して引越しするための「すぐに役立つ」アドバイスや心得をまとめた。