④抽選以外の取得方法

今月のテーマ:永住権

抽選以外で永住権を取得する方法や、条件付き永住権、永住権保持者が国外に長期在住する際の注意点について聞いた。永住権は、「在住の意思なし」と判断されると、剥奪される可能性があることを知っておこう。

 

Q.「抽選永住権プログラム」以外で永住権を取得する方法は?


A.

いくつか方法がありますが、日本人の場合は次の三つが主流です。

①家族のスポンサー申請=米国籍か永住権を持つ家族(親か配偶者)に「スポンサー」になってもらい、申請する方法。例えば米国籍を持つ人と結婚する場合、申請から「条件付き永住権」(後に説明)取得までの期間は9カ月から1年と、比較的迅速です。スポンサーが米国籍の方が、配偶者の永住権取得スピードは速くなります。申請時に永住権だったスポンサーが、配偶者の永住権発行を待つ間に国籍を取得した場合、申請内容をそのように更新すると手続きがスピードアップされます。

また米国生まれの子供が21歳になればスポンサーとして、親の永住権を取得できます。兄弟姉妹がスポンサーになることもできますが、長期戦になります。

②雇用主のスポンサー申請=職種や学歴などによってケースバイケースですが、雇用主が新聞に人材募集広告を出すなどの面倒なプロセスが必要になり、取得までの期間も数年と長いものになります。

③自己スポンサー申請=「EB1」と言われる移民ビザで、一つの分野で突出した実績・技術がある場合、自分で自分をスポンサーして永住権を申請できます。移民帰化局が申請内容を認めれば、2、3カ月で永住権を取得可能。

アーティストやノーベル賞クラスの研究者の他、スポーツ選手(プロスポーツや五輪メダリストなど)、ファッションデザイナーなどが該当します。投資家向けの「EB5」もありますが、これは手続きが複雑で、相当な時間が掛かります。

 

Q. ①に出てきた「条件付き永住権」とは?


A.

英語で言うと「Con- ditional Permanent Residence」。永住権申請時に、結婚期間が2年未満の場合に発行される永住権で、偽装結婚による永住権取得を防ぐための措置です。

「条件付き永住権」の期限が切れる90日前に条件解除申請を行い、正規の永住権を発行してもらいます。解除手続きを行わず期限が切れてしまうと、最初から申請手続きをやり直さなければなりません。病気入院などの正当な理由がある場合は、延長手続きが可能です。
永住権申請時点で結婚2年以上の場合は、その時点で正規の永住権が発行されます。

 

Q.「条件付き永住権」のうちに離婚した場合はどうなりますか?


A.

「条件付き永住権」は、有効期限が過ぎれば自動失効します。離婚後も正規の永住権を発行してもらうためには、その結婚が虚偽のものではなく、離婚も避け難いものだったことを証明する必要があります。
また、家庭内暴力(DV)など犯罪が理由で離婚に至った場合も同じです。

 

Q. 犯罪以外に永住権が剥奪されることはありますか?


A.

米国内に住む意思がないと判断された時点で、永住権は剥奪されます。米国外在住期間が長くなる場合は、前もって「再入国許可証(Reentry Permit)」を取得し、その上で半年ごとに米国に戻って、一定期間住むことが望ましいです。

それでも、何年もその状況が続き、米国内滞在期間が短いようなら、永住権を剥奪される可能性はあります。ケースバイケースですね。

 

Q. 米国籍を所得するための必要条件は?


A.

まず、永住権を取得してから5年以上(米国籍の人と結婚した人は3年以上)アメリカに住んでいること。そして、市民権申請の際の在住州に過去3カ月以上住んでいることが条件です。
その上で、模範的な人物であることを証明できること。犯罪歴に関する質問もあります。

全てを正直に申請することが求められます。例えば、飲酒運転などの記録があれば、申請の際に隠さずに事実を記入しましょう。誠実な姿勢こそ、模範的な人物である証です。

 

〈おことわり〉

当弁護士事務所は、記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は、国務省のウェブサイト(dvlottery.state.gov)で各自確認してください。またこの記事は、2017年に掲載したものを再編集しています。

 

エディット・ステルツナー弁護士

ハンガリーの首都ブダペストのELTE大学、ニューヨーク市のフォーダム大学法科大卒業。
在ニューヨーク米国ハンガリー商工会議所国際委員会委員。
米国への労働・移住ビザの他、米国での起業関連の法律を専門とする。


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