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映画の都といえばハリウッドを思い出すが、映画鑑賞の都となるとそれはニューヨークをおいて他にはない。今号では、さまざまなスタイルの映画鑑賞シーンを提供してくれるニューヨークだからこそできる、映画の楽しみ方や映画館を紹介する。(文・写真/小村典子)
アートにどん欲なニューヨーカーのDNA
演劇、ファッション、美術、建築など、ニューヨークはもともと文化芸術や娯楽に関してどん欲な街。そんなアートに敏感な人たちが自然と集まってくるこの街のDNAが、映画鑑賞シーンのバックボーンだ。
映画の黄金時代にはハリウッドに次ぐ規模の映画撮影スタジオがクイーンズ区アストリアにあり、数々の映画が制作された。全盛期よりは縮小しているものの、今でも同スタジオで撮影が行われ、隣接の「映像博物館」では映画にまつわる展示とともに映画が上映されている。
1980年代後半からハリウッドのスタジオ映画が失速し、インディペンデント映画が台頭してきたときも、ニューヨークの映画作家たちが原動力だった。今ではメジャー監督となったスパイク・リーやジム・ジャームッシュも、出身はインディーズで、どちらも長編デビュー作はニューヨーク大学在学中に制作したものだ。
ミレニアルも楽しめる新感覚映画館が登場
さて、映画館離れの叫ばれる昨今、映画DNAの濃いニューヨークでは、どんな楽しみ方があるのだろうか。まずアートシアターがたくさんあるのが大きな魅力。「フィルムフォーラム」や「アンジェリカ・フィルム・センター」「アンソロジー・フィルム・アーカイブズ」などでは、ブロックバスター映画は上映しないが、ジャンルや国籍を問わず、良質の映画を上映。それぞれオリジナルのシリーズや企画で、個性を出している。ほぼ全てのアートシアターでデジタル化とリノベーションがされているので、「アートシアター=古い」という感覚はない。
また、映画そのものを楽しむだけでなく、映画館での体験自体に重きをおくところが登場している。ブルックリンにある「ナイトホーク・シネマ」「アラモ・ドラフトハウス」は、各席にテーブルがついており、映画を観ながら飲食できる。また、往年のハリウッドの映画館を再現した「メトログラフ」は、併設のレストラン&バーやラウンジも含め、全体が徹底的に統一されたレトロモダンなインテリアで、どこを切り取ってもシネマティックだ。こうした新感覚レトロの映画館はミレニアル世代の観客に受けている。
セレブに会える映画祭や企画ものをチェック
ニューヨークの映画館では、俳優や監督、プロデューサーなどセレブの舞台あいさつが毎週のように行われている。特に映画祭が開催される期間は、ほぼ毎日セレブが登場するので、セレブ狙いで映画館に出かけるのもこの街にいるからこそできる醍醐味(だいごみ)。
また前述のアートシアターはテーマを絞ったシリーズを頻繁に企画しており、制作に関わった人たちをゲストに迎えてQ&Aセッションを行ってくれる。単なるセレブの舞台あいさつに止まらない、一歩踏み込んだ裏話などを聞くことができ、自分がそこで観た映画についてもっと知るチャンスにあふれている。
次ページからは具体的に、タイプ別のおすすめ映画館を紹介する。
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