②近年の犯罪傾向

今月のテーマ:防犯

前回に引き続き、ニューヨークでの近年の犯罪の傾向、犯罪の手口の変化から見える動向について専門家の分析を聞いた。ヘイトクライムの数や危険な地域、またテクノロジーを狙った犯罪の数はどう推移しているだろうか?

 

Q. 回、ニューヨークの近年の犯罪の傾向として、ヘイトクライムが増加していること、また引ったくり、強盗の手口が変化していると聞きました。他にも専門家から見て気になる事例はありますか?


A.

特に建設が進行中で、空き地が多く人通りが少ないエリアで、富裕層を狙った犯罪が増えているとお話ししました。新興開発エリアではありませんが、これまで治安が良く犯罪が少ないと思われていた、例えばパークスロープなどのエリアで、やはり富裕層を狙った犯罪の事例を最近よく耳にします。

弊社は、防犯のために監視カメラを設置したい、という依頼を受けますが、その理由で非常に多いのが、オンラインショッピングで買って届けられた荷物が盗まれる、というものです。

治安が良いエリアのタウンハウスの住民の場合、配達人に荷物を玄関近くの物陰や、外からは見えにくい場所に置くように指示することが多いようです。アパート住まいならば、ドアマンや管理人が本人に代わって荷物を受け取り、保管するのが普通でしょうから、そう聞くと、いささか不用心に聞こえるかもしれませんね。

しかし実際には門を通って敷地内に入り、よくよく探さないと見つからないはずの荷物が盗まれているので、犯罪者が目的を持って侵入し、窃盗をはたらいていると考えられます。こうした、これまでとは違う犯罪のパターンを、われわれ専門家は、今後の犯罪傾向を示唆するものとして分析対象としています。

 

Q. ニューヨーク市内で犯罪が多いエリアはあるのでしょうか?


A.

1975年〜85年ごろは、麻薬のまん延とギャングの抗争で、ハーレムをはじめ市内には「凶悪地帯」とされるエリアが多数ありました。しかし前回もお話したように、2000年代以降、米国経済が伸長した影響で、ナイフや拳銃を使った路上強盗や現金目当ての暴行、いわゆるブルーカラー犯罪は目立って減少しました。

ただし、犯罪がなくなったわけではありません。現代において犯罪が発生しやすいとされるのは移民が多く住むエリアです。移民が犯罪を犯すのではなく、被害者になりやすいという意味です。6、7年前にクイーンズのエルムハーストでアジア系女性ばかりを狙った路上強盗や性的暴行が続発しました。英語が堪能でないことから、警察へ報告、相談をせず、被害届を出さずに泣き寝入りする場合が多いのです。犯罪者にとっては実に都合の良い環境なので、2回目、3回目の犯行に及びます。

またアジア系女性が外出時、現金を持って歩くという習慣も、犯罪誘発の原因になっていたとされています。そうしたさまざまな要因から、社会の中で犯罪被害者になりやすい層というのは存在します。

 

Q. 以前は、スマホを狙った犯罪が多発していると報じられましたが、最近も多い事例ですか?


A.

スマホを狙った引ったくりは過去数年で激減しました。確かに6、7年前は、スマホ、中でもiPhoneを狙ったスニッチング(路上盗難)が急増しました。当時は、人気のために生産が追い付かず、希少価値があったこと、中古のiPhoneは開発途上国では高額で売れる事情がありました。

またデバイス本体だけでなく、銀行情報などの個人情報も高く売られていました。そのため、路上や電車内で盗まれたり、数人のグループに囲まれ、脅し取られたりといった事例も多発しました。中には殺人に至ったケースもあります。

顔認証により、セキュリティーが強固になったと思われていましたが、暴行を加え気絶した被害者の顔に、犯人が奪った携帯をかざしてアンロックし、闇市場に売るという手口が発生してます。皮肉にも、番号認証より顔認証の方がリスクが高いという一面が顕著になってしまいました。

現代はテクノロジーの進歩が、防犯において大きな役割を果たしていますが、テクノロジーは万全というわけではく、犯罪者は弱点も突いてくることも、忘れてはならないことです。

 

〈おことわり〉

当社は記事内容に関して一切責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。またこの記事は、2018年に弊紙に掲載した内容に、加筆修正を行ったものです。

 

橋本晃宏さん

Safeco Risk Control, Inc.代表。
1995年からセキュリティー関連のビジネスを始め、2004年に同社設立。
セキュリティーシステム・スペシャリスト、リスクアナリストとして個人・企業向けに防犯管理サービスを提供している。
元カリフォルニア州立短大講師。

 

Safeco Risk Control, Inc.
safecosurveillance.com

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