外反母趾の治療と予防(前編)

成人女性に多い外反母趾
わない靴と遺伝が原因

 

Q.

外反母趾(がいはんぼし)」とはどんな病状ですか?

A.

足の親指の先が人さし指の方に大きく曲がり、親指の付け根の関節が外側に突き出る病気です(左の写真参照)。関節周りの靭帯(じんたい=骨と骨をつなぐ組織)と腱(けん=骨と筋肉をつなぐ組織)のバランスが崩れ、関節が不安定になることで変形が進行します。突出部分が靴に当たって、強い痛みや炎症をともないます。

外反母趾(Bunions)は足に起こる最も一般的な疾患の一つで、男性よりも女性に圧倒的に多くみられます。後で詳しく説明しますが、原因の一つは靴による足への圧迫です。最近はファッションとして幅の狭い靴が好まれる傾向があり、特に成人女性はハイヒールを履く機会も多いことから、親指の痛みを訴える人が増えています。

 

外反母趾患者のレントゲン写真。親指付け根の関節が外側に突出し、「くの字」に変形している


Q.

外反母趾の主な症状は?

A.

親指付け根の関節の変形が始まっても、最初は痛みを感じない人が多いのですが、変形が進行するにつれ、歩行時や長時間立っているときに痛みを感じるようになります。

親指そのものと、親指付け根の関節機能が低下することにより、親指の爪の両端が皮膚に食い込む「陥入爪(かんにゅうそう)」が起きることもあれば、人さし指、中指の付け根部分に体重がかかるため足裏にタコができることもあり、それらがさらなる痛みの原因になります。

さらに変形が進むと、親指と人さし指が上下に重なり合ったり、親指付け根の関節が脱臼したりして、歩行が難しくなるほど症状が悪化する可能性が高くなります。

 

Q.

外反母趾の原因は何ですか?

A.

外反母趾の原因は諸説あり、まだ明確ではありませんが、靴の影響と遺伝的影響の二つが大きいとされています。ある研究によると、外反母趾の発症率は靴を履かない人で約2%、靴を履く人で約33%と、靴の影響が相当大きいことが分かります。

足への影響が大きい靴は、先が細い靴、ヒールが高い靴など、親指を圧迫する靴です。狭い所に足が押し込められ、足全体に負担がかかる他、親指が人さし指の方に押しやられ、関節が変形する原因になります。ヒールの高い靴の場合、足指の付け根に体重が集中するため、関節がさらに変形しやすくなります。外反母趾になった親指関節の突出部が靴との摩擦で強く刺激され、痛みや神経症状が誘発されます。

 

Q.

外反母趾は遺伝するのですか?

A.

外反母趾は、ある程度遺伝的な要因を持って生まれた人に発症しやすいことが分かっています。遺伝的要因は母方の家系から受け継ぐことが多く、家族歴がある場合、60〜85%という高い確率で発症するという研究結果もあります。母親や祖母が外反母趾の人は、注意した方がいいでしょう。

誤解のないように説明すると、遺伝的要因とは、外反母趾になりやすい足の特徴です。親指の変形(外反母趾そのもの)が遺伝するわけではありません。例えば、親指が人さし指よりも長い、生まれつき扁平足(へんぺいそく)気味だった、靭帯の伸縮力が弱い—などの人は、外反母趾になりやすいと言われています。

扁平足とは、土踏まず(アーチ)が崩れ、足裏がほぼ平らになった状態です。靭帯の伸縮力の低下が原因の一つとされ、ほとんどの外反母趾の人に扁平足が見られます。

扁平足になると、立っているときに踵(かかと)周りの関節群と指をつなぐ5本の骨(中足骨)が扇状に過剰に開き、足が横に広がります。このとき、親指は人さし指の方に傾きますが、親指の付け根にある中足骨は、親指とは反対方向に捻(ねじ)れてしまうことで、外反母趾が起こると考えられます。

このように、外反母趾はある程度遺伝的要因を持って生まれた人で発症率が高く、その場合は、靴に気を付けていても起こる可能性があります。特に子供の外反母趾は、遺伝的要因の関与が強く疑われます。

他にも、全身の関節や靭帯が緩くなる病気、筋力が低下する病気、アキレス腱の変形、関節炎、リウマチなどのさまざまな疾患や、足に負担をかける肥満が原因になる可能性があります。外反母趾は一般的な病気ではありますが、正確な原因や予防法については断言できないのが現状です。

※次回は、外反母趾の治療についてです。

 

朴仁戴先生
Innjea S. Park, DPM, AACFAS
足病医学博士(DPM=Doctor of Podiatric Medicine)。
ニューヨーク足病医学専門大学でDPM取得。
ワイコフハイツ医療センターで外科レジデンシー修了。
外反母趾、扁平足、足首関節炎、骨折、足底筋膜炎、水虫、いぼなど、足の病気や悩み、けがの治療と手術が専門。
米国足病医学会(ABPM)会員、米国足・足関節外科学会アソシエート(AACFAS)。日本語堪能。

 

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