外で気を付ける夏の皮膚病対策(後編)

 

ダニがうつすライム病 大きな赤い発疹が特徴

Q.

ライム病とはどういう病気ですか?

A.

野山に生息するマダニ(ダニの一種)にかまれることによって起こる感染症です。ライム病はニューイングランド地方で大変多く、マダニが活発に活動する晩春から秋にかけて発生します。

Q.

ライム病の主な症状は?

A.

ライム病の病原体は、ボレリアという細菌です。この細菌を持つマダニにかまれると、普通は数日~1カ月以内にかまれた場所に赤い発疹、つまり紅斑が現れ、直径30~50センチ大にゆっくりと大きくなることもあります。

この特徴的な紅斑は、かまれた人の約8割で見られます。中心部だけ色が抜けることもあれば、ダーツの的のように、同心円状の赤い輪ができることもあります。人によっては、けん怠感・頭痛・発熱などのインフルエンザに似た症状を伴います。

細菌が血液に入って全身に広がると、かまれた場所以外にも紅斑が複数現れたり、髄膜炎・顔面神経麻痺などの神経症状、不整脈・心筋炎などの循環器症状、筋肉痛などを起こしたりします。感染初期の紅斑が現れず、全身症状が出て初めて受診し、ライム病の診断を受ける人も少なくありません。

この段階で治療しなければ、何カ月~何年もたってから、関節炎・関節の腫れなどの慢性的な関節炎症状、記憶や思考力の障害、重度の皮膚症状などが出ることも、ごくまれですが報告されています。ただ、これらが本当にライム病の症状であるかは、判然としないことが多いようです。

治療には抗生物質が有効です。早期に治療を始めれば、それだけ合併症を防げる可能性が高くなるので、症状に気付いたら早めに受診することをお勧めします。

 

Q.

ライム病予防のためにできることは?

A.

ダニにかまれないようにすることです。簡単にできる予防策をいくつか紹介します。
▽野山に出掛けるときは長袖や長ズボンを着用し、肌を出さない。ズボンの裾を靴下や靴の中に入れる
▽服に付いたダニをすぐに見つけられるように、明るい色の服を着る
▽「ディート(DEET)」を含む防虫剤を皮膚に塗る(2カ月未満の乳児には使わないこと)。「ペルメトリン(permethrin)」成分の携帯型虫よけ剤を、腰や道具類に付ける
▽帰宅後2時間以内にシャワーを浴びる。洋服のダニを殺すため、4分程度乾燥機にかける
▽ダニが付いていないかどうか、全身をチェックする

山間部に住んでいる人は、ダニを運ぶ野ネズミやシカが庭に入らないようにフェンスを作ることで、感染の確率を下げることができます。また、他人の服に付いていたダニが乗り移り、それにかまれた人が感染することもあります。ダニがいそうな場所に行った人は、他人に移さないように注意してください。

 

Q.

ダニにかまれてしまったら?

A.

人間への感染は、皮膚をかんだダニが、そのまま2~3日皮膚に付着し続けることで起こります。短期間くっついていただけではめったに感染しないので、慌てず落ち着いて対処することが大切です。

皮膚に付いたダニを見つけたら、素手でつまんだりせず、先のとがった毛抜きか、ピンセットで取り除きます。ダニをつぶしたり、口の部分が皮膚に残ったりしないように、ダニの口(頭)の部分をつまんで、真っすぐ上に引き抜きます。刺された場所を消毒し、石けんで洗いましょう。

ダニに刺されても、痛くも痒(かゆ)くもありません。そのため、いつ刺されたか分からないときは、ダニの大きさが目安になります。吸血前の幼虫はゴマ粒大ですが、血を十分に吸った後は数ミリ程度に膨れます。

ダニが大きいか、36時間以上付着していたと思われるときは、医師に相談してください。場合によっては、抗生物質で発症を予防できることがあります。

ダニにかまれても、全ての人がライム病を発症するわけではありません。ですが、放置すると長期的にいろいろな症状が起こる可能性があるので、野山に出掛けた日は、皮膚はもとより、服にもダニが付着していないかどうか、その日のうちに全身をチェックしておくと安心です。

 

米疾病対策センター(CDC)はライム病について小冊子を作成し、予防を広く呼び掛けている。皮膚をかんで付着したダニの正しい「抜き方」もイラストで紹介されている(出典: CDC、www.cdc.gov/ticks)

 

※次回は、歯科医のジャスティン・I・チャン先生に、「親知らず」についてお聞きします。

 

1018-Kokoro_Kuwama桑間雄一郎先生
Yuichiro Kuwama, MD

内科専門医師(Board Certified)。東京海上記念診療所院長、マウントサイナイ・アイカーン医科大学内科准教授。東京大学医学部卒業後、腫瘍血管外科勤務を経て来米、ベス・イスラエル病院で内科研修を修了。東大医学部非常勤講師、日本医師会総合政策研究機構・主任研究員などを歴任。著書に「裸のお医者さまたち」(ビジネス社)、「極論で語る総合診療」(丸善出版)など多数。

東京海上記念診療所

Mount Sinai Beth Israel  Japanese Medical Practice
55 E. 34th St., 2nd Fl. (bet. Park & Madison Aves.)
TEL: 212-889-2119

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