心と体のメンテナンス

高血圧の予防と治療(後編)


生活習慣改善と服薬

圧管理は長期的に


Q.

血圧はどのように治療するのですか?

A.

高血圧は、糖尿病や脂質異常症と同じ生活習慣病の一つです。基本的に全ての生活習慣病の治療には、生活習慣改善と薬物療法の2種類のアプローチがあります。高血圧自体にはほとんど自覚症状がありませんが、血圧を適切に管理することで、動脈硬化の進行、脳出血、脳梗塞、冠動脈疾患、腎臓病、長期的には心不全など、重大な合併症のリスクを下げることができます。

治療を始めるタイミングや、血圧をどこまで下げるかの目標値については、一般的なガイドラインはありますが、必ずしもその通りとは限りません。患者の年齢、血圧がどの程度高いのか、合併症リスク、高血圧以外の病気(脳心血管病、脂質異常症、糖尿病、腎臓病など)の有無と既往歴などを考慮した上で、医師が患者ごとに判断します。

なお、これからお話しする治療法は、原因を特定できない「本態性高血圧」についてです。高血圧の大部分は本態性高血圧ですが、稀に他の病気や、薬剤が原因で高血圧になっていることもあります。その場合は医師の指導の下、その病気の治療や薬剤の調整が必要となります。


Q.

生活習慣改善とは、具体的に何をするのですか?

A.

血圧が高いと指摘された全ての人は、まず生活習慣の改善に取り組む必要があります。高血圧予備軍の人はもちろん、正常血圧の人も、生活習慣改善によって高血圧の予防・改善を目指すことができます。

主な改善項目を次に挙げます。体の状態によっては適切でない項目もあるので、始める前に医師に相談してください。

▽減塩=高血圧治療において食塩制限は大変重要で、日本高血圧学会は1日6グラム未満を推奨しています。アメリカではさらに厳しく1日2グラム以下が望ましいとされ、3グラム以上で高血圧リスクが上昇するという研究結果も報告されています。

厚生労働省によると、日本人の食塩摂取量は1日約10グラムと多いそうです。このことをしっかり踏まえ、日ごろから醤油や塩分の使用を意識して減らすといいでしょう。

▽食生活=野菜、果物、肉、魚、全粒粉など、バランスの取れた食生活は血圧を下げる効果が報告されています。アメリカではDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension=高血圧を防ぐ食事)が提唱されているので、参考にしてください(表参照)。

▽運動=1回40分以上の運動を週3〜4回続けましょう。ジョギング、ウォーキングなどの有酸素運動、筋力トレーニングなど、内容は何でもいいので、できることから少しずつ始めましょう。

▽節酒=お酒の種類に関係なく、飲酒は1日1杯以下を目安とし、飲み過ぎに注意してください。飲酒後しばらくは血圧も下がりますが、2杯以上飲むと日中の血圧が上がることが報告されています。

今年4月、中国で50万人を対象に行われた大規模な研究で、飲酒はその量にかかわらず、高血圧と脳卒中のリスクを上げるというデータが発表されました。これまで少量の飲酒は、むしろ健康に良いという説もありましたが、中国の研究はそれを否定するものです。こういうデータがあることも理解した上で、節酒はもちろん、飲酒を続けるかどうかについても、改めて考えてみてもいいかもしれません。

▽減量=太り気味・肥満の場合、適正体重への減量によって高血圧が改善するという報告もあります。食生活改善と定期的な運動などで減量に取り組むことが大切です。

 

Q.

薬物療法について教えてください。

A.

生活習慣改善で血圧を管理できない、あるいは血圧がかなり高く合併症リスクが高い場合は、薬物療法を検討します。さまざまな種類の薬があるので、定期的に効果を確認しながら用量や種類を調整します。

薬の種類や患者の健康状態にもよりますが、服薬は一生、またはかなり長期間続ける必要があります。場合によっては薬の副作用が出ることがあるので、気になる症状があれば医師に相談してください。高血圧を含む生活習慣病は、長期的に根気よく生活習慣改善と薬物治療に取り組むことが大事です。

※次回は、斎藤孝先生にHIV/エイズについてお聞きします。

 

 

楊宇龍先生
Yulong Yang, MD

内科医師。東京大学医学部卒業後、同大学付属病院で初期研修を修了後に来米。
2015〜18年までニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学関連病院で内科研修。
18年夏から総合病院ホーリーネーム医療センターのフォートリー診療所で内科医として勤務、
アジア人の診療に力を入れる。
日本語、英語、中国語で診療可。

 

Holy Name Medical Partners
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