心と体のメンテナンス

テーマ ◆ 心身の不調と「筋膜」の関係(後編)

筋膜のよじれを解放
自己治癒力を向上へ

Q.筋膜」の異常はなぜ起きるのですか?

A.

膜とは、筋肉を包む薄い膜のことです。正常な状態では柔らかいのですが、筋肉を使い過ぎたり、逆に長時間使わなかったりすると、筋膜はよじれて硬くなります。周囲の水分も失われ、筋膜と筋肉がくっついてしまいます。このような筋膜の異常は、痛みや凝りにつながることが知られています(前編参照)。

立ったり座ったりの些細なしぐさから、長時間のデスクワーク、いつも同じ側の肩にかばんをかけるなどの生活習慣や日常の癖まで、さまざまなことが筋膜異常の原因になり得ます。

Q.精神的ストレスと筋膜異常の関係は?

A.

精神的に強いストレスがあると、血圧やホルモンバランスの乱れなどから血管が収縮します。全身の血流が滞り、組織の修復に必要な栄養と酸素が十分に行き届かなくなる結果、筋膜異常が慢性化しやすくなります。

こういった傾向は、強い不安や悩み、怒り、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを抱えている人にみられます。

Q.自律神経の乱れも影響しますか?

A.

自律神経とは、内臓や血管の働きを調整し、体内環境を整える神経です。交感神経と副交感神経の2種類があり、これらのバランスが取れていることが心身の健康維持に欠かせません。

交感神経は興奮や緊張したときに活性化し、副交感神経はリラックスしたときに強く働きます。起床時に「今日も頑張ろう」という気持ちになるのは、交感神経が刺激されているからです。対照的に、1日の終わりにリラックスし、自然に眠くなるのは副交感神経が優勢だからです。

寝る直前まで仕事のことを考えたり、スマートフォンやパソコン画面に見入ったりして、疲れているのになかなか眠れないという人がいます。これは、本来なら副交感神経が活性化され体を休めるべきときに、交感神経が優勢になっているからです。

交感神経が優勢なときは、体は緊張し、血管は収縮しています。つまり、血流がよくない状態です。筋膜も含め、組織の損傷の修復に時間がかかります。

さらにいえば、睡眠不足も筋膜に悪影響を与えます。組織の損傷は睡眠中に修復されますが、それには6〜8時間程度の十分な睡眠が必要です。睡眠時間が短いと修復が追いつかず、異常が慢性化しやすくなります。

Q. 筋膜異常を修復する方法は?

A.

患部をマッサージすることにより、よじれて硬くなった筋膜をほぐし、癒着した筋肉と筋膜を"はがす"方法が有効です。この手法を「筋膜リリース」といいます。

患部に潤いと血流が回復し、傷んだ組織の修復が促されます。筋膜と筋肉が再び滑らかに動くようになり、痛みや凝りが緩和され、関節の可動範囲も広がります。

筋膜異常の原因や症状の程度にもよりますが、軽症の場合、数回の筋膜リリースで体が楽になる人もいます。

腰痛で悩んでいた人の骨盤や腰回りの筋肉をほぐし、筋膜の異常も修正したところ、長年の肩凝りが解消するなど、離れた場所に効果が出ることもあります。これは、全身の筋肉が全て筋膜でつながっているためです。猫背が原因の肩や首回りの筋膜の異常が、足先の痛みを引き起こすこともあり得ます。

筋膜リリースによって、筋膜のよじれを修正する。マッサージには副交感神経を刺激し、ストレスを軽減する効果もある

 

Q. 筋膜異常を防ぐため、日ごろからできることはありますか?

A.

筋肉と筋膜に負担をかけないように、体を正しく使うこと。そして、それと同じくらい大事なのが、心身にストレスをためないことです。それには運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠、水分補給、瞑想、ヨガなどが有効です。

また、肺は自律神経をコントロールできる唯一の臓器です。呼吸、特に息をゆっくり吐くことによって副交感神経を活性化させ、リラックスを心掛けましょう。日々の行動を意識し、楽しく、寛容な気持ちで生活することも大事です。

筋膜が正常で血液が全身をくまなく循環すれば、自己治癒力も高まります。薬や手術で病気やけがを治すのではなく、自分の血で栄養と酸素を全身に運び、自分の力で健康になることを、ぜひこの機会に意識してみてください。

※次回からは、樋口聖先生に胃腸薬と風邪薬についてお聞きします。

 

秋山祥子さん
Shoko Akiyama, LMT

_________________

マッサージセラピスト(ニューヨーク州免許、LMTLicensed Massage Therapist)、
リフレクソロジスト(米国リフレクソロジーボード認定)、アロマセラピスト(米国アロマセラピー登録カウンシル認定)など。
スウェディッシュ・インスティテュート・ヘルスサイエンス学校卒業。
ディープティシューマッサージ、筋膜リリース、トリガーポイントセラピーなどを組み合わせた痛み緩和に注力。

Shoko Akiyama Massage Therapy Studio

138 W. 15th St.bet. 6th & 7th Aves.
TEL: 917-345-1340
www.shokomassage.com

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